意見・プレスリリース opinion & press release
国内対策関係

2004年8月6日

「2030年のエネルギー需給展望(中間とりまとめ原案)」への意見


気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

  • 1.氏名 気候ネットワーク(※本意見は団体としての意見です)
  • 2.連絡先
    ・住所 〒604-8142 京都市中京区高倉通四条上ル高倉ビル305号
    ・電話番号075-254-1011/ファクシミリ番号075-254-1012
    ・電子メールアドレス tokyo@kikonet.org
  • 3.職業(会社名/団体名、部署、役職等)
     環境NGO(※本意見は団体としての意見です)

4.意見

(1)エネルギー効率が「最も高い」ことはデータをもって示すべき

・該当箇所:P.4
・意見内容:「他方、需要面では、各分野で省エネルギーが大きく進み、先進工業国の中で最も高いエネルギー効率を達成した」との記述のついては、どのようなデータ・指標をもとにしているのかを、誰もが検証できる形で公開・明示すべきである。根拠となるデータを何ら示さず、文章だけで断言するのは問題である。

(2)温暖化問題の緊急性・重大性を明記すべき

・該当箇所:P.29
・意見内容:地球温暖化は既に進行しており早急な温室効果ガスの排出削減が急務であるという、地球温暖化問題(CO2対策)の緊急性・重大性に関する記述がないのは問題であり、明記すべき。

(3)大幅削減の必要性を明記しそのシナリオを作るべき

・該当個所:P30、P.61〜62
・意見内容:気候系・生態系に悪影響を及ぼさないレベルで安定化させるには、温室効果ガス(CO2)濃度や気温を可能な限り低く抑える目標が必要であり、CO2排出の大幅な削減は必須である。また、南北格差を考えれば(現在までに大量の温室効果ガスを排出してきた先進国には率先して削減する責任がある)、先進国の削減は更に大幅なものになる。これらの点を明記すべきである。さらに、日本は尊敬される環境先進国としてその先頭を切る決意を示すべきである。この点を踏まえれば、現状の大量エネルギー社会の延長で対症療法を考えるのではなく、環境制約を意識した抜本的な改革、すなわち省エネを徹底して自然エネルギーを中心にするような将来を描くべきであり、それに向けたシナリオを作る必要がある。

(4)中長期目標策定の方向を明記すべき

・該当箇所:P.30、P.61〜62、P.69〜70
・意見内容:欧州の野心的な長期目標の紹介は良いとしても、現在日本に中長期のCO2削減目標がないことは問題である。また、環境制約は国際条約で規制されなければ存在しないのではなく、自然の要請であり科学の要請であり、将来世代への責務である。大幅な対策強化の必要性とともに、日本として中長期の削減目標を示す必要がある。日本も温室効果ガスの大部分を占めるエネルギー起源CO2の中長期の目標値を持つべきであり、ここでは少なくともその検討を行う旨の「頭出し」を記すべきである。

(5)「中国は削減義務が課されていない」との記述は誤解を招く

・該当箇所:P.30
・意見内容:ここは2030年見通しに関する箇所であるので、「中国は削減義務が課されていない」という記述は誤解を招きやすい不適切な表現と考える。議定書の第1約束期間では数値目標を負っていないが中国も京都議定書を批准しており、現時点での地球温暖化問題を巡る国際状況と2030年を見通す話とを整理して記述すべきである。

(6)IPCCの予測幅はシナリオの違いである

・該当箇所:P.30の最終項及び注
・意見内容:IPCC第3次評価報告書の2100年の予測において気温や海面上昇の数値に幅があることをもって科学的不確実性があるとしているように読める。しかし、IPCCの気温や海面上昇の2100年予測の幅は、どのような経済・社会像とするかというシナリオの違いに依拠するものであり、誤解を招かない記述に改めるべきである。

(7)環境制約において放射性物質・大気汚染物質にも触れるべき

・該当箇所:P.29〜30
・意見内容:環境制約は地球温暖化問題(CO2対策)だけではない。エネルギー問題においては、原子力発電に伴う放射性物質(現在・将来)の環境負荷が極めて重大である。放射性物質の環境負荷・環境リスクについてもきちんと記述すべきである。さらにエネルギー関係では、石炭使用に伴う大気汚染物質の環境負荷も無視してはいけない。あらゆる環境負荷を低減することを考える必要があり、温暖化も放射能も大気汚染もない未来を目指すべきである。ここでは少なくとも、放射性物質・大気汚染物質の問題に触れるべきである。

(8)既存技術の確実な普及を重視すべき

・該当個所:P.31〜36、P.165、P.187
・意見内容:IPCCは、革新的技術でなく「既知の技術オプションにより、100年後には大気中のCO2濃度を450あるいは550ppm以下に安定化できることが示されている」としている。できるかできないか、できてもコストがどうなるかもわからぬ未知の技術に賭けるのではなく、既存技術の確実な普及が重要であり、それには確実な政策・措置の強化が不可欠である。この旨を確認する記述とすべきである。

(9)炭素隔離・固定化技術の問題点を明記すべき

・該当箇所:P.35
・意見内容:炭素隔離・固定化技術には、生態系への影響などの環境負荷、エネルギー収支、コストなど様々な問題がある。特に油井への注入・海中投棄・地下固定等を行った場合の生態系への影響は、万一大気・海洋などにCO2が急激に漏れ出した場合を含め、多くの未知の課題が存在している。これらの問題点を明記すべきである。また、化石燃料は大量生産・大量消費・大量廃棄を支えるエネルギー源であり、炭素隔離・固定化できるから使い続けて良いというものではない。化石燃料の消費それ自体を大幅に削減して行くべきであり、炭素隔離・固定化が可能になれば地球温暖化問題の究極的な解決になり、化石燃料を使い続けられるかのような記述は改めるべきである。

(10)なぜ2030年までに原発の廃炉が1基なのか、極めて不自然である

・該当箇所:P.91及び112
・意見内容:2030年までに廃炉になる原発が敦賀1号(1970年運転開始)の1基のみという想定は、同じ1970年運転開始の美浜1号は2030年まで運転するということになり、整合的でなく不自然である。少なくとも、原発の運転期間についての考え方・指標を示した上で、整合性のある想定とすべきである。なお私たちは、(7)で述べた放射性物質の環境負荷からして、各原発は可能な限り速やかに廃炉し、脱原発をはかるべきと考える。

(11)対策を担保する政策・措置を示すべき

・該当個所:P.98〜104、P.188〜196
・意見内容:対策を挙げてもそれを実現する政策・措置を伴わなければ実現の保証がない。対策の進展のためには政策・措置が必要であり、なければ絵に描いた餅である。対策の推進を担保する政策・措置について、細部の制度設計はともかく考え方を示すべきである。

(12)2010年見通しの3ケースの関係と位置付けをより明確にすべき

・該当箇所:P.129
・意見内容:P.129に説明はあるが、2010年エネルギー需給見通しの、レファレンスケース・現行対策推進ケース・追加対策ケースの3ケースの関係、特に現行対策推進ケース・追加対策ケースの違いを明確にすべきである。また特に追加対策ケースの位置付けを明示すべきである。原案の記述によれば、追加対策ケースは「現行対策推進ケースを加速化・前倒しさせエネルギー起源CO2排出量の1990年度比±0%を達成するケース」と思われるが、政策目標なのか、単に「加速化・前倒し」すれば1990年度比±0%になるというケースなのか、明らかにすべきである。

(13)2010年見通しの各ケースは2030年へ連続させるべき

・該当箇所:P.129の注、及び巻末「参考資料2」の諸表
・意見内容:原案における2010年エネルギー需給見通しの各ケースと2030年エネルギー需給見通しの各ケースとはレファレンスケース以外は連続性がなく、2010年の各ケースがその後どうなって行き2030年にどうなるのか分からない。また2030年見通しの各ケースには2010年の数字が示されていない。少なくとも、2010年見通しの現行対策推進ケース・追加対策ケースはその後の2030年までの状況を、2030年見通しの各ケースは2010年の数字を、それぞれ示すべきである。

(14)石炭火発はさらに抑制・削減すべき

・該当個所:P151、P158
・意見内容:石炭火発は日本のCO2排出量を増加させた主因であり、対策の重点である。電力会社の既存設備を前提としても、石炭ベースから天然ガスベースへと運用を変えれば大幅な排出削減が可能である。燃料転換を大幅に進めるケースとして、例えば2001年7月の「長期エネルギー需給見通し」で想定していたCO2排出原単位1990年比28%改善程度を実現するケースを設定し、政策的にも石炭火発の抑制・削減を強化すべきである。(※次項(15)も参照のこと)

(15)2010年のCO2目標達成が苦しくなっているのは政府の政策不在による(供給側)

・該当箇所:P.153〜154、及びP.186
・意見内容:2010年のエネルギー起源CO2排出量が大幅に増えてしまう見通しが繰り返し述べられているが、その原因が政府の政策不在にあることに触れられていない。例えば、電力供給側に関しては、石炭火発と原発を両方増やしてCO2の帳尻を合わせようとしてきたが、その結果、燃料コストが安い石炭火発を増やすことになり、2003年の石炭火発の設備容量は1990年の2.92倍にも達している。原発の1.45倍、LNG火発の1.57倍に比較すると、いかに増えたか分かる(「平成16年度電力供給計画の概要」より)。京都議定書が採択された1997年以降の7年間にも、政府は実効的な政策・措置をほとんど打ってこなかったために、2010年の目標達成が苦しくなっている旨を明記すべきである。

(16)2010年のCO2目標達成が苦しくなっているのは政府の政策不在による(需要側)

・該当箇所:P.153〜154、及びP.186
・意見内容:需要側の産業・運輸・民生各部門においても政策の影響は大きい。民生部門においては、新築の住宅・建築物の省エネ効率の改善が政府想定ほど進んでいないこと、機器の効率改善が政府の見込みより小さくなりそうであることなどの問題点が挙げられる。これらは、住宅・建築物の省エネ基準を義務化しなかったこと、機器の規制値の改定(強化)をせず、また対象外機器の増加を放置してきたことなど、政策の不十分さが原因である。これによって民生部門はストック効率の改善が遅れ、2010年のCO2目標達成が苦しくなった。また産業部門は90年以降、生産量の減少ほどはエネルギー消費やCO2が減っておらず効率が悪化しているが、これは不況下においても省エネ投資を促す政策・措置が乏しかったことが一因である。また自動車に依存せざるをえないCO2排出の多い都市構造への変化(悪化)も、政策不在あるいは逆行する政策による部分が大きい。(※(15)と(16)は連続する意見だが、400字を超えるので内容で分割している)

(17)産業は生産減、民生・運輸は活動量増となっており、各部門の活動量の差を踏まえるべき

・該当個所:P.157、P.159、P.164〜165、P188〜196
・意見内容:産業は生産が減って行くので、削減想定が生産減程度では省エネにおいて何の進歩もない状態を容認することになる。産業は省エネ・自然エネルギー・燃料転換の様々な排出削減の手段を有しているので、特に対策強化の重点とすべきである。一方民生・運輸は基本的に活動量増となっており、このような各部門の差を踏まえるべきである。また民生はストックの効率改善に依存するので、京都議定書第1約束期間までの短い期間では、政府が政策的に省エネ機器や省エネ型住宅・建築物への置き換わりを担保出来なければ、産業ほどは対策をとれないことになる。このような各部門の特質を確認しつつ、P.159の表の追加対策ケースの部門別の削減率についても、全体的に削減を進める方向で再検討すべきである。

(18)2010年追加対策ケースと地球温暖化対策推進大綱の関係を明確にすべき

・該当箇所:P.159の表、P.195〜196
・意見内容:上記(12)・(17)とも関係するが、2010年見通しの追加対策ケースの各部門の1990年比削減率と、現行の地球温暖化対策推進大綱に示されている部門別の削減目標との関係をはっきりさせるべきである。すなわち、原案の追加対策ケースは、現状からエネルギー起源CO2を1990年比±0%にもって行くために、現行の地球温暖化対策推進大綱に示されている部門別の削減目標の改定の方向を示すものなのかどうなのかを明示すべきである。

(19)建物・機器の効率を徹底して強化する政策を示すべき

・該当個所:P.165〜166、P.187〜189
・意見内容:民生、運輸部門とりわけ民生部門では、機器(含む自動車)や建物の効率が排出全体に大きな影響を与えるので、省エネ機器や省エネ型住宅・建築物のみが市場に出回るようにするくらいの意気込みで政策・措置をとらなければ大幅削減はできない。すなわち、効率改善も啓発も何となくやりますではなく、住宅・建築物の省エネ規制を義務化し、機器の省エネ規制を徹底強化し、かつ税制などで小型化を促す(特に自動車など、ただし冷蔵庫など一部は除く)という強い政策・措置導入を示すべきである。

(20)全力を挙げて京都議定書目標を達成し長期の削減の道筋もつけるべき

・該当箇所:P.187
・意見内容:「地球温暖化問題は2010年で終わる問題ではなく、また、日本だけで解決できる問題でもない。本来地球規模で長期的に取り組む課題であり、2010年に向けた地球温暖化関連対策についても、短期的局地的視野からのみ検討し、対応するのではなく、長期的地球的視点に立って考え、行動する必要がある」との記述は、趣旨不明である。全力を挙げて京都議定書目標を達成しつつ、長期の削減の道筋もつけるべきであることは言うまでもない。世界においても、尊敬される環境先進国として日本がその先頭を切るべきであり、この趣旨で記述を全面的に改める必要がある。

(21)大綱目標達成のための政策選択の指針は当然CO2削減の実効性である

・該当箇所:P.187
・意見内容:大綱目標達成のための政策選択の指針に関する記述はやや曖昧である。当然CO2削減の実効性を、政策選択の第一の基準とすべきである。特に「なお、温室効果ガスの排出抑制は国民や産業の活動全般に及びうることから、所要の対策を講ずる際には単に温室効果ガスの排出量の抑制・削減の観点からのみ評価するのではなく、その外部経済性・不経済性を十分に勘案し、なるべく外部不経済性が小さく費用対効果の高い措置あるいは外部経済性の大きい措置を検討するべきである」との記述は、その指標・基準によってはこれまでの政策を継続するだけになりかねない。なお、エネルギー起源CO2削減のための政策・措置は、産業にも消費者にも省エネによる費用削減のメリットも与えるものが大部分であり、経済にマイナスなものは基本的にないと私たちは考える。

(22)エネルギー需要・供給両面の対策を早急に打つべきである

・該当箇所:P.188
・意見内容:第1約束期間までに残された時間が余りないため、時間やコストがかかるエネルギー供給サイドの対策よりも、まずはエネルギー需要サイドの対策に重点を置くとしているのは、対策として不十分である。供給側についても、石炭使用の抑制、天然ガスへの転換策(特に発電用途)などは、不可欠でありかつ可能である。エネルギー需要・供給両面の対策を早急に打つという方針に改めるべきである。

(23)京都メカニズムをエネルギー起源CO2の枠内に持ち込むべきではない

・該当個所:P.192
・意見内容:京都メカニズムは大綱上に既に区分があるので、それ以外の区分に京都メカニズムをなし崩し的に持ち込んでその割合を高めるべきではない。ここでは、電力のCO2排出原単位に京都メカニズム上のクレジットを充当して改善されたと見なすとのことだが、実際の国内の電力のCO2排出原単位は改善されていないのだから、極めて問題である。

(24)ホットエアの問題指摘は評価するが、「基本は国内削減」を明示すべき

・該当箇所:P.194〜195
・意見内容:京都メカニズムは国内対策に対して補足的であるとの原則を確認し、いわゆるホットエア購入が環境的に問題であると指摘した点は評価する。しかしCDM/JIなら何でも良いということは決してなく、環境的に優れたプロジェクトに限定すべきである。そして何よりも先進国の責任として、京都議定書目標は、基本的に国内の温室効果ガス排出側の削減で達成するべきであり、「基本は国内削減」との旨を明示すべきである。


以上

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