意見・プレスリリース opinion & press release
国内対策関係

2012年12月26日

安倍新政権の発足にあたって
〜気候変動問題の緊急性の再認識と、政策措置の強化を〜

特定非営利活動法人気候ネットワーク


気候ネットワークは、1998年の設立から約15年間、日本、世界の気候変動問題の解決に向けて、全国の市民団体と連携しながら活動を続けてきた。しかし、この間にも、世界の温室効果ガス排出は増加し続けている。国際的には、気温上昇を産業革命前のレベルから2℃を超えないようにする合意の実現が目指されるが、このままでは4℃を超える恐れがあることへの警告や、各国が提示する目標では削減が全く足りないことなどが示されている。気候変動問題は、いよいよ緊急性が増し、世界が大きく力を注いで取り組まなければその解決も難しくなってきている。こうした状況認識に基づき、安倍連立政権には、以下について取り組むことを求める。

(1)国際的な法的枠組みへの積極的な参加

2013年から2020年まで京都議定書第2約束期間が始まる。日本の不参加方針は各国から大きな批判を受け、国際的なプレゼンスが大きく低下している。

国際的に協力した取り組みを進める責任のある先進国として、日本は、2015年に合意し2020年からスタートする新枠組みの交渉に尽力すべきである。そのために、京都議定書第2約束期間に参加し、気候変動の緩和のために極めて重要となる2020年までの着実な取り組みを進めることが不可欠である。そのことが、日本の真剣さと意欲を世界に示し、建設的な協力を後押しすることになる。


(2)国内の気候変動対策のビジョンと計画の策定

日本は1997年の京都議定書の採択後、国内で、法律や計画、政策措置の検討を重ね、その目標の遵守を国内外に約束してきた。しかし、2013年を目前に控えた今、今後の国際的な義務を持たないだけでなく、国内でも、気候変動対策のための法律も目標も計画も整備されない空白状態となっている。3.11大震災と福島第一原発事故を受けて、市民や企業、自治体などに省エネや再生可能エネルギーを拡大する動きが急速に拡大しているが、制度の空白状態がこうした取り組みの継続に悪影響を与え、さまざまな行動や意欲を無用に削いでしまいかねない状態となっている。昨日署名された自民党・公明党連立合意においては、気候変動問題についての言及がなく、方針が共有されないことは問題である。早急に以下を整備するべきである。


1) 地球温暖化対策基本法の制定
 京都議定書第1約束期間の取り組みに続き、2013年以降の気候変動の対策・政策を実施する法的基盤として、日本が覚悟をもって温室効果ガスの大幅削減に向けて努力するビジョンを法律として明確に示すこと。そのことが、各ステークホルダーにこれからの方向性について明確なシグナルを発信し、誰もが迷いなく対策を進める基礎となる。また、同基本法において中期目標(2020年・2030年の削減目標)を定め、気候変動対策計画の策定を位置付けること。


2) 野心的な中期目標の決定
 気候変動枠組条約交渉においては、現状では行動が足りないとの認識のもとに、各国の提示する目標をさらに引き上げる議論が進んでいる。これは、日本に対しても求められていることである。しかし国内では、2011年の福島第一原発事故以来、国内の温室効果ガス削減目標は逆に引き下げられようとしている。削減目標は、実現可能性を踏まえるのと同時に、危険な気候変動を回避するために必要な削減量に整合的であることを確保することが必要である。実際に、省エネルギーと再生可能エネルギーの拡大、火力源の天然ガスへの転換等によって、2020年25%削減(1990年比)は実現可能 である。国連に登録されている同目標は、先進国として必要な削減レベルであり、維持するべきである。


3) 気候変動対策計画の策定
 2013年以降の気候変動対策計画は、法律に明確に位置づけられたものとすること、そして、すでに政府が閣議決定している2050年80%削減目標の達成に向けた削減経路を描き、対策の先延ばしによる将来世代への負担を増やさないようにし、その実現を可能にする具体的な政策措置を含むものであることが求められる。また、計画は、期限を区切った削減目標を定めるとともに、新たな科学的知見も踏まえ、適宜目標・政策の見直し・強化ができるような仕組みを織り込むべきである。


(3)エネルギーと気候変動の一体的な政策対応:脱原発との両立

これまでの日本の気候変動対策・政策は、原発推進を柱としてきたため、福島第一原発事故を受けて、火力発電の増加・CO2の増加は避けられないとの見方も強い。しかし、原発依存の政策は、大規模集中型のエネルギー多消費構造を継続し、CO2 排出量が多い石炭への依存を拡大させ、他方で、省エネ推進や再生可能エネルギーの導入にブレーキをかけ、本来、気候変動対策に必要な政策措置の導入を妨げてきた側面が大きい。

脱原発を目指すことは、再生可能エネルギーを中心とした小規模分散型へと、エネルギーシステムをシフトさせ、かつ、省エネを加速させるものであり、気候変動対策と一致している。

気候変動対策を進めるためにも脱原発は重要である。前・民主党政権での原発依存低減の流れは国民の意思を反映したものである。昨日の自公連立合意では、再稼働は原子力規制委員会の判断に基づくこと、及び原発依存度を下げることとされている。これを具体化させ、原発ゼロへの工程表を1年以内に策定し、それを踏まえてエネルギー基本計画を改正するべきである。


(4)重要な個別政策

1) 究極の省エネ社会の構築へ
・省エネ目標の策定
 日本には、省エネを引き上げるための明確な目標はない。国全体としての目標を掲げるべきである。(例)2020年、2030年の最終エネルギー消費など。

・経団連自主行動計画(低炭素社会実行計画)の政策への位置づけの見直し
 これまで、経済界の私的な計画である経団連自主行動計画は、政府の政策の中心に位置付けられてきた。同計画は政府の目標とも整合せず、目標未達成の場合の措置がなく、排出削減が担保されない。発電部門を含めて実勢をみると、経団連の発表とは裏腹に大幅に排出が増えている。しかも、業界毎に目標水準も指標もさまざまであり、個別企業の取り組みは評価されず、頑張った企業が評価されない仕組みである。今後も、このような仕組みがこのまま政府の政策に位置付けられれば、国内の省エネ・排出削減は計画的に実現していけない。今後は、着実な削減を担保できる政策を導入し、対策を講じるべきである。

・キャップ・アンド・トレード型排出量取引制度の具体的検討・導入
 事業所が排出するCO2などの排出量にキャップを設定する同制度は、省エネに最も有効な制度である。福田元首相が、試行的な国内排出量取引制度を導入し、民主党でも導入が検討されたが、先送りされて導入に至っていない。一方、東京都は独自のキャップ・アンド・トレード制度を実施しており、それにより震災後の節電においても、大きな成果を得た。

一部では産業活動を締め付ける規制のように言われるが、同制度はエネルギー・CO2排出の少ない方法で製品等を生産する技術開発や設計、再生可能エネルギーの利用を促進する制度である。化石燃料輸入の負担を減らすことにもつながる。同制度は、すでに動き始めたグリーン産業・低炭素産業の国際競争力を高めるものであり、新たな産業・雇用を創出する経済活性化策でもある。

2) 再生可能エネルギーを普及させる電力自由化・発送電分離
 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)による設備認定が毎月増加し、導入効果が目に見えるようになっている。一方、電力会社の買取上限設定や、蓄電池設置要件など、普及にブレーキをかける問題も浮上している。再生可能エネルギーを着実に普及させるために、前・民主党政権が手がけ始めた電力システム改革を引き継いで進め、個人・家庭も電力会社が選べる電力小売り自由化を実現すること、さらに、発送電分離を行い、再生可能エネルギー事業者が公正に送電線へアクセスし、競争に参加できる環境を作ることが重要である。

3) 石炭利用の抑制
 原発停止を受けて、東京電力が今年早々にも石炭火力を念頭にした入札募集を行うように、石炭利用を増やす動きが現実化している。しかし、人口減少が進む中、2020年頃から動き出す石炭火力発電所の新設は必要とは考えられない。また、電力供給体制に2050年まで大量のCO2を放出し続けることを組み込むことになり、極めて問題である。当面必要な火力発電については、政策的に、天然ガス利用に重点を置き、石炭利用を抑制するべきである。また、天然ガス発電は、最新鋭のコンバインドサイクルの利用へシフトし、効率向上を図ることで、化石燃料増を抑えながら天然ガスへシフトすることは可能である。

(5)情報公開・市民参画の徹底

気候変動対策を着実に、かつ公平に実施するためには、各主体・各排出源から排出される温室効果ガスの排出実態と、それぞれの目標達成状況をきめ細かに把握することが必須である。しかし現状では十分な情報公開が行われているとは言い難い。最低限、次のことを公開するべきである。また政策形成のプロセスには、多様なステークホルダー、NPO・市民の参画を確保するべきである。

  • 毎年の大規模事業所の温室効果ガス毎の排出量及びエネルギー消費量と燃料・電気の使用量
  • 政策プロセス自体(会議の傍聴、資料、議事録、動画など)
  • 政策決定過程における試算データや根拠


(6)地域主導の対策の支援

福島第一原発事故を受け、地域で再生可能エネルギーによる発電を始めるなど、自発的な対策や行動が生まれ始めている。そうした市民によるイニシアティブを後押しするよう政策的・財政的に支援を行うべきである。


声明全文

「安倍新政権の発足にあたって〜気候変動問題の緊急性の再認識と、政策措置の強化を〜」
(2012年12月26日、PDF:384KB)

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