2001年7月23日ボン

~COP6再開会合閣僚級会議(1週目)を終えて包括的合意文書を採択~
京都議定書の実施ルール交渉をブロックし、環境十全性に傷を負わせた日本

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

21日に提出されたプロンク議長の最終合意案は、日加豪露の吸収源の理不尽な要求を受け入れてまでも京都議定書の発効を実現すべきとの決意をにじませたパッケージ案であった。EU、途上国、東欧諸国、アンブレラグループの一部が最終合意案の受け入れを明らかにしてもなお、日本は独善的主張を繰り返し、最後の最後まで合意案の受け入れを拒み続けて、遵守ルールを弱体化させた。こうした交渉態度によって、日本は世界に見境なく身勝手で欲深い国と印象づけることになった。

しかし、こうした日本の抵抗にもかかわらず、世界の地球温暖化への取組意欲の前に、日本は遵守を含めた最終的包括合意を拒むことはできなかった。さらに、ハーグ会議の決裂やブッシュ政権の離脱表明を乗り越えて、日本以外の大多数の国々による議定書を発効させようとする熱意と粘り強い努力によって、辛うじてCOP6再開会合で政治的合意に至ったことは特筆されてよい。京都議定書を死に至らしめようとする企てから救い出したことは、日本などわずかな抵抗国を除く、良識ある国際社会の勝利であるといえる。これは今後100年にもわたる温室効果ガスの排出削減に取り組まねばならない気候変動問題への人類社会の未来に、ささやかだが希望を与えるものである。

他方、日本政府は、京都会議の議長国であるにもかかわらず、COP6再開会合の第1週目の閣僚級会合、G8サミットのいずれにおいても、議定書発効に不可欠の日本の批准表明をしなかったことは、世界を大きく失望させた。

さらに交渉において日本は、批准のカードを振りかざして交渉の進展に水を差してきた。とりわけ、原子力問題、遵守規定、吸収源などで、従来からの主張を繰り返して骨抜きをはかり、他国にのみ執拗に妥協を求めた。その結果、プロンク議長の最終合意案で不当に過大な吸収量を認めさせた。これは科学的根拠のない実質的な数値目標の大幅書き換えであり、京都議定書の科学的信頼性に傷を負わせた。さらに、環境条約での先例がないなどとして遵守のルールを大きく後退させた。これらのことは今後の交渉にも障害をもたらすだろう。

ここに至る過程で日本政府が失った国際的信頼ははかり知れず大きい。その回復のためにも、小泉首相は一刻も早く批准を表明し、議定書の発効を確実にしなければならない。そして、残る1週間の交渉では、これまでの交渉態度を改め、具体的な詳細ルール作りに建設的に参加すべきである。国内では京都議定書の目標達成のための国内対策を早急に強化すべきである。

 

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