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【プレスリリース】「地球温暖化対策推進大綱」に関連する行政文書開示の結果について 対策の不十分さが露呈 重要な情報の開示はわずか(2004/05/11)


2004年5月11日

「地球温暖化対策推進大綱」に関連する行政文書開示
の結果について
対策の不十分さが露呈 重要な情報の開示はわずか

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

「地球温暖化対策推進大綱(2002年3月19日地球温暖化対策推進本部決定。以下、「大綱」という。)は日本の京都議定書目標達成の基本となる計画である。今年はその評価・見直しの年である。

大綱には現行対策(98年策定の旧大綱の対策)及びそれに追加する対策の削減見込み量の数値が記されているが、その算出の根拠は公表されていない。そもそも、これらの情報は、大綱を策定する過程で明らかにされるべき性質のものであり、今年の評価・見直しにおいて、それらの開示が必要不可欠であることはいうまでもない。

大綱の評価・見直し過程の透明性を高め、省庁間はもとより市民や産業界間でも情報を共有することは、実効ある温暖化対策を実現し、実施していくための前提である。そこで、気候ネットワークでは、大綱の諸対策の評価を客観的に検証・評価し、効果的に見直しを進めることができるよう、情報公開法に基づき、関係各省庁に対して、大綱における削減見込み量の算定根拠・方法についての情報公開請求を行った。その概要は下記の通りである。

【開示請求の概要】
請求先省庁:環境省・経済産業省・国土交通省・林野庁・警察庁・総務省
開示請求文書等:「『地球温暖化対策推進大綱』の表1~11の「現行対策とその削減量」と「追加対策とその削減量」の中の数値(「導入目標量」と「排出削減見込み量」)の算定根拠と算定方法を示す一切の行政文書」

開示された情報から次のことを指摘できる。

1.重要な情報の開示はわずか。説明責任を果たしていない政府

  • 開示された情報では、大綱に記載された現行対策及び追加対策の削減見込み量の算定根拠・方法を知ることはほとんどできなかった。極端なものでは、大綱の記述をなぞっただけの開示もあった。
  • ストック推移のデータが必要なもの(住宅・建築物、家電機器、自動車単体、代替フロン)では、ストック情報やその推移に関するデータはほとんど開示されなかった。
  • 削減見込み量の算定の前提となる諸条件が情報公開請求でも開示されなかったことは、市民・事業者に必要な情報が全く提供されていないことを示している。大綱の目標達成に向けた国民的努力を促すための前提を欠いているといわざるをえない。
  • さらに、重要な情報が政府省庁間でも共有されていないことが懸念される。各省庁の独自の判断で設定された諸条件による算定結果だけを「ホッチキスでとめただけ」であってはならない。

2.省庁・担当部局によって開示程度にばらつき

  • 警察庁、環境省地球環境局、林野庁、総務省、国土交通省のうち旧運輸省所管分は新しい情報が含まれているが、排出削減見込み量の根拠や導入率の根拠などが不明などの問題もある。
  • 国土交通省の旧建設省所管分と環境省廃棄物リサイクル部所管分は開示程度が低く、開示情報では内容は検証不可能である。
  • 経済産業省は開示までに約3ケ月の時間を要したが、内容は審議会の公開資料が中心で、開示情報では排出削減見込み量の検証は不可能である。革新的技術開発分では、数字の大半が企業秘密として非開示とされた。

3.政府の「大綱策定時の算定のずさんさ」が露呈

  • 今回、開示された情報によれば、大綱の策定時に、合理的根拠をもって削減見込み量の算定が行われなかったといわざるをえない。対策の不十分さを露呈するものであって、そのような大綱の策定は、京都議定書の目標達成のための政府の取り組みとして、極めて杜撰であったというほかない。
  • とくに、各対策の導入・普及の根拠が示されないまま、高く見積もられているものが多い。政策の裏づけを欠く大綱の根本的問題点が浮き彫りになったものといえる。

4.情報公開を前提に、政府の大綱策定のあり方そのものの改善を

  • 大綱の検討・決定が、各省庁の地球温暖化対策名目での予算の確保のために利用され、対策の内容や進捗については秘密にされることは許されない。温暖化対策の実効性を確保するためには、市民・企業など国民全体での議論を、透明性の高いプロセスで客観的合理的基準・指標の下に進めるべきである。
  • 今回の請求で開示されなかった削減見込み量の算定の根拠・方法等について、気候ネットワークでは、再度開示請求を行う予定である。
  • 今年の地球温暖化対策推進大綱の評価・見直し作業が適切に行われるためには、政府は、従来の隠蔽体質を根本から改め、情報開示と国民への説明責任を果たすべきである。

 

発表資料

以下は、開示情報によって明らかになったことの例を紹介する。

1.排出削減見込み量の算出に無理があるものの例

・テレワーク等情報通信を活用した交通代替の推進(340万トン)

計算があまりにずさん。「テレワーク率が情報通信環境の整備によって欧州レベルに上昇」が、どのような情報通信環境が整備され、それによってどのような業務でどれだけテレワークが可能になるのか、定量的な根拠が不明。情報通信環境を整備するための政策的裏付けも不明。また、公共交通機関の通勤者が減っても、それに比例して運行本数を減らす等の対応がとられない限り、削減量を比例的に見込むことはできないはずである。仮にそうしているのであれば、公共交通機関の利便性が低下し、「公共交通の利用促進」との整合性も失われる。あまりにお粗末な計算であり、本対策を削減見込み量に計上すること自体に問題がある。

・革新的技術開発(744万トン)

技術の種別などが明らかになったが、開示資料だけからでは「革新的」な技術か既存の技術かの区別はつかないが、2010年に容易に実用化されるものだとすると産業の対策とのダブルカウントになる可能性がある。一方、「革新的」でまだ完成前、あるいは完成はしたもののコストが高すぎる段階だとすると普及の可能性はない。

・鉄道貨物の利便性向上(70万トン※)

対策の根拠が社会実験分とJR西日本山陽線鉄道貨物輸送力増強から成ることは示されたが、貨物種別、距離帯別などの条件によって、局部的な社会実験を一律にスライドするだけで削減量を見込めるのか不明である。山陽線についても、輸送力を増強したからといって、実際にトラックから鉄道貨物へと輸送がシフトするのか、根拠が不明である。これで達成が出来るかは大いに疑問である。

※内航海運・鉄道貨物輸送推進150万トンの内数に鉄道の利便性向上30万トンを加えたものとして国交省が示している数字

・公共交通機関の利用促進 (520万トン)

鉄道・新交通の新線整備に対して、乗用車の台kmが一律にシフトするとしていることなど、不自然な試算があり、車からシフトさせるための強力な施策をせずに、施設整備をしたりバスを走らせたからといってそれだけで自動車から公共交通機関にシフトするかは不明である。

・自動車交通需要の調整(70万トン)

概要説明のみで導入率などの試算がないが、自転車道・自転車駐車場の整備で自動的に自動車から自転車への大規模なシフトが生じると想定している模様。車の抑制になるような強い政策措置なしに対策が進むと見るのは無理がある。

・物流の効率化のうちトラック輸送の効率化(290万トン)

対策量は、現在の中型トラックを大型につみかえ、積載率の高さを維持したままで台数を減らすことを想定している。こうした対策が自然に進む場合としては同じ時間帯に同じ方向に同じ会社のトラックが多数走っているようなケースが想定されるが、こうした理想的なケースがあるとはおよそ考えられず、強い政策措置が必要とされると考えられる。

・国民の行動の各対策

多くの対策が、政策措置もないにもかかわらず導入量30%(家庭の取り組みなら全世帯の30%が実施)と仮定していることが明らかになった。政策措置なしには実現しない可能性が高く、進捗を厳格に管理すべき大綱の対策として適当ではないことは明らかである。

※経産省・国交省等の情報開示度の低いものはここには含めていない。

 

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