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【意見】「産業構造審議会 地球環境小委員会中間取りまとめ」に対する意見(2004/09/10)


2004年9月10日

「産業構造審議会 地球環境小委員会中間取りまとめ」
に対する意見

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

 1.氏名 気候ネットワーク 代表 浅岡美恵(団体として)
 2.連絡先
  ・住所 〒604-8124 京都市中京区高倉通四条上ル高倉ビル305
  ・電話番号 075-254-1011
  ・FAX番号 075-254-1012
  ・電子メールアドレス kyoto@kikonet.org
 3.職業(会社名、団体名、役職等)
 4.意見

全体について

  • 京都議定書の目標達成は、地球温暖化防止のためには重要な一歩である。今年の大綱の見直しを機に、効果的な政策措置を導入し、持続可能な社会へ産業構造の転換を図り、目標を確実に達成できるようにすべきである。
  • 対策は、需要側での省エネを前提に、自然エネルギーの割合を大幅に高め、また当面石炭・石油から天然ガスへのシフトを行うべきである。
  • 現在は政策措置が全体にわたって弱い。自主的取組や期待・希望だけでは具体的な削減は進まないため、対策は政策によってその実現を担保できるようにすべきである。

個別箇所への意見

(3)総合資源エネルギー調査会における2030年のエネルギー需給見通し 
〔CO2排出量〕(P8) 
意見:2030年までに1990年比10%程度の削減では「経済と環境の両立」とは言えない。 

(4)大綱における各種対策、温室効果ガス排出量の評価手法 
1)「各種対策の評価手法」について(P21) 
意見:各種対策の評価を原単位の改善のみで行うことは不十分である。対策の進捗評価には、活動量とあわせた温室効果ガスの排出総量が基準年と比較して削減されているかどうかを評価すべきである。 
理由:地球温暖化対策は、温室効果ガスの排出総量を削減する必要がある。原単位が一部改善していても排出総量が増加していては温暖化防止への貢献が十分とはいえない。 

意見:「原単位」は市民や専門家が検証できる指標でなければならない。 
理由:業界や一部政府関係者のみしか知りえない情報による指標では、検証性を欠き、全く信頼性に欠ける。 

2)温室効果ガスの排出量の評価手法(P22) 
意見:評価の前提は全て公開すべきである。 

(5)「各種対策の評価」について(P23) 
1)需要部門における対策の評価 
(全部門について) 
意見:大綱の評価では、大綱に沿って対策が進んでいるのか、今後も効果が確実に見込まれるのかなどを評価し、不十分ならそれを担保する政策強化をすべきである。総合資源エネルギー調査会需給部会の評価でも、予定された対策量が実現できないとの見通しがあるにもかかわらず、各部門を原単位改善評価のみですませているのは論外である。 

意見:「対策を講じない場合」との比較で原単位改善という場合、「対策を講じない場合」の内容を明らかにするべきである。内容が明らかにされない恣意的な原単位によって改善評価を行ったといっても評価に値しない。基準年と比較してどうかもあわせて記載しなければ評価できない。 
理由:「対策を講じない場合」との比較は、その値をむやみに高くしていないかどうかの説明がなければ信用されない。基準年比の値は最低でも必要である。 

意見:大綱の個々の対策量が達成されるのかどうかを評価すべきである。達成されるという場合には、その理由も示すべきである。政策の担保がないものは、対策の達成の保証がないと考えるのが自然である。 

①-1「産業部門」について(P23) 
意見:IIP当たりのエネルギー消費量は現状では90年比で大幅に悪化しており、それが急に10%近く改善するなどと見込まれており、常識的に見て極めて不自然である。IIPを活動量とした場合の90年原単位と比較してどれだけ向上あるいは悪化するのか、悪化だとしたらこのような表現をあえて選んだ理由は何かを明らかにすべきである。 

意見:「自主行動計画は総じて順調に進捗しており、目標達成は可能な範囲」と記述されているが、表を詳しく検討すると、排出量の大きな部分を占める電事連と鉄鋼連盟の見通しが不透明である。この2つと電子電気4団体も未達成なら、全体として達成できないことが当然予想される。審議会としてどのような根拠でこのような結論に達したのかを詳しく説明すべきである。 

意見:表3-1の活動量の中には、石油連盟の「換算通油量」、日本化学工業協会の「総合指数」、日本建設機械工業会の「総合指数」など、定義によって原単位が変わる検証不可能なものが含まれているが、どのように検証・評価し、このような結論に達したのかを明らかにすべきである。 

意見:総合資源エネルギー調査会は、2010年の生産量についてセメントでは業界団体の予測を大きく下回ると予測し、それに基づいてエネルギー消費量やCO2排出量を予測、レファレンスケースでも総量7%削減としている。生産量予測が業界と食い違うなら、特に総量目標の業界に関してはそのことを明らかにすべきである。 

意見:自主計画の目標は90年比0%であるのに対し、大綱の産業部門の目標は7%削減である。この関係についてどう判断しているのか明らかにすべきである。 

意見:省エネ法には、大規模事業者に毎年1%効率改善を求めている努力目標があり、義務ではないものの、その達成が全事業所で求められるはずである。これについてどう判断したのかを明らかにすべきである。 

①-2 代替フロン等3ガス(P26) 
意見:「極めて顕著な成果」と評価されているが、CO2排出と異なり、3ガスについては現状をベースラインに置くべきではなく、代替品があるものは代替すべきものである。その検証もなく、また漏洩対策に関する利用可能な最良技術の導入の検討もなく、基準年より原単位が改善することのみをもって評価するのは適当ではない。 

②「民生部門(家庭部門・業務部門)」について(P28) 
意見:「着実にトップランナー基準を達成」としているが、テレビのように規制対象外の機種が多いものがあるにもかかわらず、一面的な評価に終わっているのは問題である。 

意見:待機電力は世帯当たりで基準年および現在より増加が見込まれるのか、もしくは減少が見込まれるのかを明らかにすべきである。 

意見:住宅断熱効率の改善は、大綱の家庭部門対策の大きな部分を占めているにもかかわらず、実効的な政策措置がなく省エネ性能の向上が保証されているとはいえない。その実効性を高めるために、住宅の効率基準の規制化(義務化)を打ち出すべきである。 

③「運輸部門」について(P36) 
意見:トップランナーによる燃費改善については、国土交通省の審議会を含めた方面から、モード燃費と実燃費との乖離が著しいと指摘されている。その評価を行うべきである。 

④「革新的温暖化対策技術」について(P38) 
意見:まだ市場に出ていない技術については、普及すると見るならその理由、とりわけコストの見通しとその根拠を明らかにし、普及が見込めない技術はゼロと見込むのが妥当である。 
理由:技術だけが2010年に完成してもコストが極端に高くては広く普及するはずがない。各技術についての普及の根拠が必要不可欠である。 

⑤国民各界各層による温暖化防止活動(P41) 
意見:第2ステップ以降では、これらの対策による削減量を積み上げることは止めるべきである。国民のライフスタイルの転換を促すためには、個人の省エネ行動の呼びかけのみではなく、商品選択情報など具体的な行動を取れる適切な情報提供に加え、その行動へ誘導するインセンティブの付与が必要である。 
理由:ここに掲げられる削減行動は、普及啓発のみに依存した実現の裏付けのない行動の羅列に過ぎず、これらを対策に並べて削減量を見込むことに無理がある。 

(7)温室効果ガス排出量の見通し 
○1~4(P46) 
意見:ここでは政策措置による担保をほとんど考慮せずに、対策が自然に進むかのような楽観的な見通しを描いている。政策措置を検討しているはずの産構審では、政策措置による担保を前提にして全面的な再評価をすべきである。 

○5(P46) 
意見:革新的温暖化対策技術において、「技術開発が計画通り成功し製品化・市場導入されることを前提」にすることは甘い見通しであり、確実に市場導入されるもののみを固く見積もるべきである。 

表3-15 温室効果ガス全体の排出量の見通し(P48) 
意見:代替フロン等3ガスを、高位の排出見通し(74百万t-CO2)としているのは不適切である。ここでの高位推計は、半導体・液晶において業界の総量目標を上回っていたり、断熱材において現実に起こっている脱フロン化の動きを無視したり、マグネシウム鋳造において業界の脱SF6対策と異なる見通しを出していたりと、推計が過大であるものが多い。実際には現行対策において低位推計(基準年総排出量比+1%程度)よりもさらに低い排出レベルに抑えられると考えられ、実態に即した見通しに改めるべきである。 

4.今後の国内温室効果ガスの排出抑制・削減のための対策の方向性 
(1)基本的考え方(P49) 
2)(P49) 
意見:中長期的視点、イノベーションの促進という考え方を確認する前に、地球温暖化問題の性格上、「予防原則」に基づいて早期に対策を取っていくことの重要性をまず記すべきである。
理由:イノベーションの促進は、市場競争における環境制約の制度の中から生まれるものである。中期的に取り組めばよいから今拙速に取組を急ぐべきではないとの考え・議論を採用してはならない。 

4)(P50) 
意見:「環境と経済の両立」は、現状の産業構造をそのまま維持することや、現存する全産業がマイナス影響を受けないことなどを前提にしたものととってはならない。経済発展を地球環境保全の範囲におさえるために、産業構造の転換により、その質を転換していくことが必要である。 
理由:現状の環境破壊型経済社会が今後も続けられるという考え方は根本的に誤っている。 

5)②(P50~51) 
意見:「CO2の排出がより少ないエネルギー」に原子力発電を含めるべきではない。原発については安全性の確保が成立していないことを前提に議論し、政策を提起すべきである。 
理由:原子力発電は持続可能とはいえない。原発の安全性確保という前提が成立していないことがここ数年頻発している事故等で明らかになっている。温暖化対策はCO2が減れば何があってもいいというものではなく、対策として選択する際に他の著しい環境負荷がないこと、人命・安全を損なわないこと、などが大前提である。 

意見:需要面での対策における「経済活動量を制限したり、国民生活水準を抑制するような対策は選択すべきではない」との記述は削除するべきである。需要面での対策には、原単位改善を進めていくのみならず、無駄なエネルギー利用を減らしていくため、経済の質を高めつつ経済活動量を削減するための手段や、国民の豊かさの質を高めつつエネルギー消費量を削減するための手段を政策的に図っていくべきである。 
理由:エネルギー多消費の産業構造を支える経済活動量を今後も維持し、ムダが多い国民生活のエネルギー消費をも抑制しないとの意味にも取れ、これから必要な経済社会の転換を進める政策措置の導入を制約するものとなりかねないため。 

意見:「原単位の改善を最大限進めていく」ことは、都合の良い原単位指標を利用してその平均値を国際比較して原単位が最高水準だとするようなものではなく、客観的な指標(生産量あたりエネルギー消費など)で世界の最高水準の技術と比較し、全事業所がそれを達成するものと解釈すべきである。 

③(P51) 
意見:どのような対策が、国内産業の海外移転などの点で持続可能性がないのか、理由をつけて判断するべきである。根拠の不十分な一般論を取り上げて、必要な対策の採用を阻むような本記述は全て削除するか、「国際競争力に配慮する」程度の記述に改めるべきである。 
理由:多くの短期的に効果の上がる温暖化対策は、企業にとってもエネルギーコストの削減という経済的利益を生み出すものであり、世界中の国が必要とする省エネ技術を一層高めることにより日本の国際競争力を向上させるものである。 

④(P51) 
意見:目標達成ギリギリの計画しか立てず、生産が微増するなどの変動によって京都メカニズムを増やそうとするべきではない。達成の不確実性は、事前に多めの対策量を定めて国内の排出削減対策を前倒しで導入し、余裕を持って達成できるよう計画の見直しを行い、実施していくことで対処すべきである。 

6)(P52) 
意見:原単位指標は重要だが、その改善だけで各主体の排出削減努力を評価するのは不十分である。排出削減は、総量として減っているかどうかを評価し、それが実現していない場合は、追加的な政策手法を検討・導入するべきである。また、原単位指標は、市民や専門家が検証できる指標でなければならない。 

(2)削減ポテンシャル 
1)産業部門における削減ポテンシャル 
<エネルギー起源CO2>(P53) 
意見:自主行動計画では、CO2排出量は90年比でほぼ横ばいであるもののエネルギー消費量は増加しており、またエネルギー利用効率は全体として悪化している。「エネルギー利用効率の向上が図られている」とは、根拠が不明確な「対策を講じなかった場合」との比であり、これまでの実績評価としては不適切である。また、2010年までに経団連の見通し通りに生産量が増加すれば、排出は増加しかねず、追加的な政策措置導入なしに「90年比7%程度の削減が見込まれる」とするのは、根拠がない。削減ポテンシャルは、客観的な指標(生産量あたりエネルギー消費など)で世界の最高水準の技術と比較し、各事業所がそれを達成するものと解釈すべきである。 

<エネルギー起源以外のCO2>(P53) 
意見:代替フロン等3ガスについては、もともと大綱の+2%目標が根拠ないまま不適切に甘く設定されているため、その目標達成の確実性を評価することには意味を持たず、削減ポテンシャルは現行の排出量から今後どれだけ削減ポテンシャルがあるのかどうかを評価していく必要がある。 

2)民生部門における削減ポテンシャル(P54) 
意見:業務部門については、需要側の事業者がエネルギー利用効率を向上することのメリットを認識するためには、単にそれを期待し待ち望むのではなく、具体的なインセンティブを与えることが必要であることを確認するべきである。 

3)運輸部門における削減ポテンシャル(P54) 
意見:旅客における公共交通機関利用促進については、現在効果があがっておらず、現行の政策のままでは、さらに自動車の輸送分担率が増加し排出増加を促すことになりかねないが、適切で強力な政策措置により、削減ポテンシャルを引き出すことができ、そうする必要がある。 

(3)国民各層各主体の挑戦 
2)電力業界の挑戦(P57) 
意見:排出原単位目標の達成の手段に、定期検査期間の短縮などによる原子力設備利用率の向上を含めるべきではない。また京都メカニズムの利用も、国内の燃料転換やエネルギー構成に何ら関係なく、必要な燃料転換を遅らせるだけであるので、これも対策に含めるべきではない。排出原単位目標は、90年以降著しく消費量・発電量を増やしている石炭利用を減らし、ベース電源を天然ガスにシフトし、国内での燃料転換を方向付ける政策措置を導入することによって実現するべきである。 
理由:美浜原発事故で、定期検査の問題が明らかになったばかりであり、この時期に敢えて盛り込むことは原子力への信頼を一層失うだけである。 

5)運輸部門における事業者の挑戦(P58) 
意見:業務用の自家用車の利用についても、事業者の取組を促す必要がある。具体的には業務用自動車(社用車・営業車)についても効率的な利用、利用削減、公共交通への転換等を図ることを求めるべきである。 

6)NPO、労働組合、マスメディアの挑戦(P59) 
意見:NPOの役割は、国民意識の向上・情報提供のみならず、効果的な温暖化対策に関する政策提言などにおいてもこれからの日本社会において重要な役割を担っている。政策決定プロセスにおいたNPO等の参加などを確保しつつ、そのような役割についても一層力を発揮することも期待されたい。 

7)地方自治体の挑戦(P59) 
意見:地方自治体の取組は現時点において十分とは言えない。具体的な目標と明確な対策方針を掲げ、実践を通じて地域の取組を率先するべきである。 

(4)政府の役割 
1)今後の対策の検討の視点 
○1(P60) 
意見: 2010年の国内温室効果ガスの排出が目標を上回る趨勢にあるのは、やむをえない事情のためなのではなく、政府が適切な対策・政策措置を取ってこなかったツケに他ならない。国民に対して現状を伝える場合には、どのような対策が問題で、政府の何が悪かったのかの反省も含めた情報を伝えるべきである。 

○2(P60) 
意見:効果的な政策手法として、「副作用」の小さい政策手法を選択すべきという意味が明確でない。「副作用」を削除し、「市場メカニズム」に「経済的手法」を加え、「市場メカニズムや経済的手法を活用した最も効果的で、行政コストの小さい政策手法を丹念に考案・選択していくべき」と改めるべきである。 
理由:今後は努力をする企業が報われ、逆に努力を怠る企業の負担が重くなるような措置が必要であり、努力を怠った企業に負担を課すことまで「副作用」と解釈されることのない明確な記述が必要である。 

○3(P60) 
意見:「これまで重点的に実施してきた対策は製造業・エネルギー転換産業の取組みに着目したもの」とは、事実と異なる。これらの取組は自主的取組に委ねられてきたのであり、政府として重点的に実施したとは言えない。また、産業界の排出量が横ばいであるのは、生産減であることが主因であり、原単位はむしろ悪化しているところが多く、実態は、一定の成果を上げたと言えるものではない。 

○4(P60) 
意見:民生・運輸の排出増加に対する取組強化には、需要側が出来る対策と、それらの主体へ建物や機器を提供する供給側(産業界)で出来る対策とがある。産業界(供給側)の取組により民生部門の排出は相当程度規定されてしまうため、機器や建物を提供する側の取組(具体的には、エネルギー多消費製品の製造へのディスインセンティブや広告抑制など)の強化の必要性も明記するべきである。 

○6(P61) 
意見:国民や事業者の意識が高いので、情報の提供と選択肢があれば主体的に省エネ行動をとることが期待されるとあるが、これを、政策がなくても自然に対策が進むなどと安易な意味で解するべきではない。これまで対策が進んでいないのは、政策が悪いために市場メカニズムが働かず、また情報も与えられなかったことが原因である。これを反省し、高い意識を活かす政策導入をすべきである。 

○9(P61) 
意見:政府の役割は、対策の検討だけでなく、対策の実施を裏付ける、規制や経済的手法、環境ラベル等の政策措置を導入・実現していくことである。大綱の各対策及び総合資源エネルギー調査会需給部会が追加としてあげた対策、産構審で追加する対策の実現を確実に担保する政策を提起すべきである。 

2)追加対策の具体的な方向性(P62) 
(全体について) 
意見:全体に対策の定性的羅列だけであり、政策が書かれていないため、ただの絵に描いた餅で実現可能性がないのではないか。 

【1】エネルギー需要・CO2排出量が増大している民生・運輸部門への重点的な対策強化 
①「民生・運輸部門の排出削減に向けた産業界の努力の促進」について(P62) 
意見:産業界の製品提供や素材・燃料の供給を通じた排出削減を確実に進めるためには、単なる「貢献の認知・支援」だけでは不十分である。これを徹底させるためには、省エネ基準の拡大強化などの具体的な効率規制強化による原単位改善の保証、省エネ建築・製品の普及を後押しするための浪費型製品へのディスインセンティブや炭素税などの政策措置を政府が責任をもって導入するべきである。 
理由:一方で消費者に対して浪費型製品の購買を広告宣伝等で煽りながら、他方で省エネ製品の普及を図ろうとするのは矛盾する。一貫した方針を貫くためにも政策誘導が必要不可欠である。 

②エネルギーやエネルギー消費機器を提供する事業者を通じた生活者への情報提供の促進(P62) 
意見:生活者に対する情報提供は、効率の悪い製品に対しても正確な情報を与えること、使用時のエネルギーコストも含むコスト情報を提供することなどが必要であり、店頭における相対評価における比較が可能であると消費者にはわかりやすく、制度化を図る必要がある。また、省エネ製品の選択を促すためにも炭素税による経済的手法の導入が不可欠である。 

③業務部門等におけるエネルギー管理の徹底(P62~63) 
意見:具体的にこれを実現するためには、省エネ法の指定管理工場の対象を一定規模以上の業務ビルが対象になるレベル(熱50kl、電気25万kWh程度)へ引き下げ、省エネ法の下でエネルギー管理を行う仕組みにすることが効果的である。 

⑤公的部門における率先的取組(P63) 
意見:公的部門の取組は現時点で全く徹底されておらず、とても「率先」と言えるレベルにない。排出削減目標(省エネ目標や自然エネルギー導入目標なども含む)を設定し、公共事業における資材の購入や機器の購入などにおいてはトップランナー機器・ノンフロン製品の購入を(代替品がない場合を除き)義務付けるグリーン購入義務などを具体的な対策・指標に基づき実践し、国民に対し率先行動を示すべきである。 

⑥交通対策(P63) 
意見:モーダルシフトや公共交通機関の利便性の向上等については、局部的対応で交通体系全体を通じた整合的な対策がなく、これまで実施した施策に対して定量的な評価がないという問題がある。これらの対策は市場に任せておいては進まないため、公的資金を投入し、バスや鉄道などの利便性を高めると同時に、路面電車等の新しい公共交通機関の整備も含めて進めていく必要がある。また同時に、自動車利用の抑制が求められていることから、自動車利用の利便性を低める政策措置もあわせて必要である。具体的には都市部ではロードプライシングや乗り入れ規制などの需要側マネジメントの導入、中規模都市では市街地の開発制限などによる環境負荷の小さい都市構造の構築などが必要である。これらについては自治体が主体的に進めていけるよう、自治体主導の交通計画を策定する枠組みをつくり、具体化すべきである。 

⑦住宅・建築物対策(P63) 
意見:新築住宅・建築物においては省エネ基準の義務化を図り、既築については、リフォームの際の省エネ基準や維持基準を導入し、ストックの省エネ向上を図るべきである。 

【2】産業・エネルギー転換部門における残された削減ポテンシャルの顕在化(P63) 
意見:経団連自主計画は、目標の指標がバラバラ等の問題があり、また目標達成の担保性もない。また-7%削減の目標目安に比べて低い目標設定していることから大綱の目標達成も危うい。今後、努力した企業が報われ得をするような経済社会を実現するために、炭素税の導入を柱とした産業界の取組強化を政策によって図るべきである。具体的には、炭素税・協定・排出量取引制度との組み合わせで、企業が確実に削減を実現でき、また努力した企業が評価される透明性の高い仕組みとして第2ステップで導入すべきである。 

①主体間連携の促進(P63) 
意見:「各主体単独での取組により削減が進む対策についてはある程度講じられてきている」などと無責任に評価すべきではない。事業所ごとの排出量、原単位を開示し、どの事業所がトップランナー技術を導入していないのかが国民や他業種の事業者にわかるように情報開示制度を整備すべきである。 

②新エネルギー導入の促進(P64) 
意見:2010年の1910万kl目標自体、自然エネルギーの普及には極めて低く、またその政策措置である新エネルギー利用特別措置法は、インセンティブとしては弱いばかりか、逆に阻害要因となっている。追加対策として、新エネ利用特措法の自然エネルギー目標の大幅引き上げ、中長期の導入目標を掲げた上での経済的なインセンティブ(固定価格買い取り制度)等を導入すべきである。 

③代替フロン等3ガス排出削減対策の推進(P64) 
意見:対策には、脱フロン方針を基本とし、代替品を優先する政策措置を導入するべきである。特に他のガスや技術へ代替可能なスプレーや断熱材等の用途に対しては、確実に早期に脱フロンへ誘導していくために、具体的な用途の制限や誘導措置が有効である。また、現行のフロン回収破壊法は、廃棄時のみの対応しかないが、フロンの製造時、機器の製造時、機器の使用時の漏洩について漏洩規制基準設定などの対応強化を図る法改正を行うべきである。また、大気放出を減らすためにも回収に対する具体的なインセンティブ付与の検討も必要である。 

④原子力の推進(P64) 
意見:原子力依存を改め、天然ガスシフト・自然エネルギー普及をエネルギー供給対策の柱とするべきである。また、核燃料サイクルは、コスト・安全性・持続可能性等のあらゆる面から見て問題があり国民的合意のない技術であるため、温暖化対策として位置付けるべきではない。 
理由:これまで原子力への過度な依存が大綱の破綻を招いていることからも明らかな通り、今後も原子力に依存することに温暖化防止の解決はないといえる。また多大な環境負荷を残す原子力発電はいずれにせよ進めていくべきではなく、方針の抜本転換を図るべきである。 

【4】その他(P65) 
意見:CO2隔離固定化技術は地中・海中の生態系の影響、エネルギー収支、大気中への漏れなどによる環境影響等、問題が多く進めるべきではない。また水素関連技術においても、それが原子力において進められることは問題であり、運輸用の普及については課題も多い。これらの将来技術の促進は、国民的合意の下、適切だと判断されるものについてのみ進めるべきであり、それよりもまず、既存の確実な技術や対策を着実に進めることを優先して進めるべきである。 

3)経済的手法について(P66) 
意見:環境税・国内排出量取引については、「総合的かつ慎重に検討」と現大綱とほぼ同様の極めて消極的な位置付けだが、京都議定書の達成、また更なる温暖化防止社会の構築のためには、極めて公平で重要な仕組みである。特に炭素税は、あらゆる分野・主体において前述の個々の追加対策を進めるための政策措置として効果を発揮する有効なものであり、温暖化対策の中心に位置付けられるべきものである。排出が増加している民生・運輸部門は主体が複数にまたがっており規制措置等が難しい部門であり、炭素税が省エネ製品の購入などを後押しする手法となる。また、産業部門にも、更なる省エネ技術の開発へのインセンティブとして有効である。省エネ製品や技術は、世界が求める技術であり、それを促進する炭素税の導入は、日本企業の国際競争力を高めるものともなる。 
 排出量取引制度も、産業部門における削減を確実に実現する手法として有効であり、それぞれの企業・事業所が取引を通じて費用効果的に温暖化対策を取ることのできる市場原理に基づく政策手法である。これは炭素税との組み合わせも可能であり、主要先進国の中心的な政策手法になりつつある。 
 これらの手法については、大綱の第2ステップで導入する政策措置として検討を急ぎ、早期導入を実現するべきである。本中間取りまとめにおいても別扱いせず、P62からの「2追加対策の具体的な方向性」の中で同列に扱い、積極的に位置付けるべきである。 

(5)追加対策を踏まえた温室効果ガスの排出量の見通し(P68) 
意見:生産が減少する産業部門の追加対策が著しく小さいのではないか。 

意見:代替フロン等3ガスは、対策ケースでも、高位の排出見通し(74百万t-CO2)の数値のままであるのは問題である。前述の通りここでの高位推計は過大であり、実際には現行対策においても低位推計(基準年総排出量比+1%程度)よりもさらに低い排出レベルに抑えられると考えられる。対策ケースでは、更なる削減を目指すべきであり、またそれが可能であるので見直す必要がある。 

(6)温室効果ガスの排出量見通しと京都議定書の約束達成へ向けた考え方(P69) 
意見:「追加対策を含めた対策を講じても約束達成が困難な場合もある」としているが、本中間取りまとめで示された対策は全体に渡って不十分であり、取るべき実効性ある対策を取らずに約束達成が困難とするのは、政府としての役割を十分果たしていないことに他ならない。まずは国内排出削減対策強化を、これ以上先延ばしすることなく最大限に実施するべきである。 

5.京都メカニズムの活用 
(1)基本的考え方(P70) 
意見:基本的考え方としてはまず、京都議定書に記されている通り、目標達成は国内の排出削減対策が主であり、京都メカニズムの利用は補完的であるべきことを明記するべきである。 
また京都メカニズムのうち、国際排出量取引制度は、他の先進国の排出余剰分を購入してくるだけで温暖化対策に資するものではないため利用しないことを基本原則として明記すべきである。 

(3)活用規模(P71) 
意見:ステップバイステップのアプローチは、確実な目標達成を実現するために導入されており、対策が不十分な場合に、対策・政策措置を見直し、確実に目標達成をしていくことが目指されているはずである。目標達成の不確実性を理由に京都メカニズムを利用する方針は適切ではなく、まずは確実な達成へ向けた国内対策の強化が図られるべきである。「経済活動量・国民生活水準を抑制するような対策は講じるべきではない」との理由で、今後の適切な政策措置の導入を先延ばしして、京都メカニズムに大きく依存しようとした方針は取るべきではない。 
 今求められていることは、温室効果ガスの排出の抑制を目指すことであり、それは、化石燃料利用を前提としたエネルギー消費量の増加はもはや継続すべきではないことを意味している。よって、経済発展を理由にエネルギー消費量やCO2の増大を当然かのように位置付け、京都メカニズム利用を正当化しようとすることは、国内の排出削減対策を放棄しているに近いと言わざるを得ない。 

(4)政府による活用の具体的あり方(P71) 
意見:政府が予算措置を講じ、目標達成できない分を国民の税金を通じて購入してくることには、極めて慎重になるべきであるのと同時に、政府内検討のみではなく、必ず国民の合意を経るべきである。また、そのようなことにならないために国内の排出削減対策を強化し、それを裏付ける政策措置の導入を確実に行うべきである。 
 また、ODA利用については、「流用となってはならない」とのマラケシュ合意の記述に基づき、多くの途上国においてODA利用そのものに反対がある中、ODAを利用しない基本方針を定めるべきである。 

(5)民間事業者による活用(P72) 
意見:民間事業者が行う京都メカニズムは、国内のエネルギー起源CO2の排出削減に充当されるために使われるべきではなく、現行の大綱における1.6%分に該当する京都メカニズム利用としてカウントされるべきである。 

(6)国際ルール策定へのイニシアチブ(P72) 
意見:これまで日本政府は、国際ルールについて、国際社会にとって必要なルールを協調的に作り上げる立場ではなく、日本の“国益(短期的な目先の経済的利益)”だけを考えた無理な主張を強いることを繰り返してきたため、数多くの批判を受けてきた。今後においては、例えばODA利用ルールの緩和等において他国に日本の主張を強要するようなことはせず、世界の考え・立場へ耳を傾け、世界にとって、また環境にとって適切なルールへ合意する柔軟性を持ち合わせるべきである。 

6.今後の課題 
3)追加対策の検討(P74~75) 
意見:日本経団連の自主行動計画については、単に「進展を図る」のではなく、大綱の上の位置付けを見直し、目標達成を担保する政策措置(税・取引・協定)を導入するべきである。また、「温室効果ガス排出量の公表の仕組み」については、事業所ごとの排出量の報告・公表制度として、第2ステップの追加対策の具体的方策とし、今回導入すべきである。これらはいずれも「今後の課題」としてではなく、大綱の第2ステップで導入すべく、P62の「2.追加対策の具体的な方向性」の中で同列に扱い、積極的に位置付けるべきである。 

(2)中長期的な視点からの課題 
1)2013年以降の温暖化問題に関する国際的枠組みについて 
意見:専門委員会での検討は、一部の産業界の意見のみを取りまとめた極めて偏ったものと受け止められる。これを政府全体や国民の間で広く議論する前に国際的に示すことは、他国に混乱を与える上、今後の枠組みのあり方の建設的な進め方とは言えないので、根本的に改める必要がある。 

2)技術開発等中長期的な視点からの温暖化対策の方向性(P76) 
意見:CO2隔離固定化技術は、地中・海中の生態系の影響、エネルギー収支、大気中への漏れなどによる環境影響等、問題が多く進めるべきではない。また、水素関連技術においても、それが原子力において進められることは問題であり、運輸用の普及については課題も多い。これらの将来技術の促進は、国民的合意の下、適切だと判断されるものについてのみ進めるべきである。

以上

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