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【意見】産業構造審議会:「将来枠組み検討専門委員会中間取りまとめ(案)に対する意見」(2004/11/11)


2004年11月11日

産業構造審議会:「将来枠組み検討専門委員会中間取りまとめ(案)に対する意見」

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

1.氏名 気候ネットワーク 代表 浅岡美恵(団体として) 
2.連絡先 
・住所 〒604-8124 京都市中京区高倉通四条上ル高倉ビル305 
・電話番号 075-254-1011 
・FAX番号 075-254-1012 
・電子メールアドレス kyoto@kikonet.org 
3.職業(会社名、団体名、役職等)

4.意見 

全体について 
・将来的な枠組みについての具体的な方向性を示したものだと理解するが、2章で示された科学的知見からの要請に対しての提案は、それに応えたものになっているとは言えない。特に、長期的な目標をどこに置くのかという言及が全くないままであり、将来の方向性を見据えない制度提案では、気候変動を防止することへの説得力に欠けるといわざるを得ない。 
・先進国の大排出国の一つである日本として、今後自らがどの程度の削減を目指す方針であるのかが全く示されておらず、その意欲が全く見られない。その上で、米国の現政権が加わることを口実に、京都議定書を弱めた提案をすることは、日本自身も米国と同様、将来の大幅削減を実現する実効性のある制度提案を否定しようとしているように読める。もし日本自身が積極的に大幅削減をする意欲があるならば、またその積極性を理解されようとするならば、自らの具体的な中長期の削減目標を示し、日本としていかに気候変動防止に貢献する準備があるのかを、世界に向けて明示し発信するべきである。 

第2章 気候変動問題の中長期的展望 
P20-23 
「1 これまで得られている科学的知見の概要」について 
・気候変動の悪影響をできる限り小さくするためにいかに大幅な削減対策をしなければならないか、これまでの大量生産社会からの脱却がいかに必要かが非常によくわかる。 
・これをもってすれば、京都議定書を徹底強化して、削減を大幅に進めるべきとの結論が引き出されるはずであり、少なくとも目標を緩めてよいなどという結論はありえないと考える。 

P23-24 
「2 究極目標を巡る議論」について 
・P23で、科学的不確実性があるので安定化濃度や気温上昇の限度での究極目標設定は困難であり、国際的合意の試みは建設的ではないとしているが、すでに国際的に確認されている予防原則を用い、直接は排出量で目標設定するものとして、その根拠に安定化濃度や気温上昇の限度を積極的に用いるべきである。またその際、不確実性は長期目標設定をしない理由とはならず、逆に不確実性を考慮してもっとも厳しい削減道筋を取ることとすべきである。 

第3章 将来の枠組みを巡る主な論点 

<全体> 
・全体を通じ、第2章で紹介された厳しい対策を必須とする科学的知見と、第3章でみられる、数値目標義務等を止め、ルールを甘くし、皆で取り組むことだけを決め、さらに結果は問わない、というかのような路線とは大きな乖離があり、相容れないものと考えられる。 

P25 
「1 主要排出国の参加」について 
・項目の中に、米国を除く日本などの先進国の更なる削減について何も言及がない。世界の枠組みを提案する日本として、これでは自らの更なる削減意欲がないと取られても仕方ない。当然のこととして、過去の排出に責任のある全ての先進国が、次の枠組みで更なる削減をすることも明示するべきである。 

(1)出発点としての京都議定書 
・京都議定書はコミットメントの内容・懲罰的な遵守スキームなどのため参加のインセンティブが働きにくい構造、としているが、実際は、途上国を含む120カ国を超える国が参加し、参加を明確に拒んでいるのは米豪だけである。また、遵守制度は、守れない可能性がある国に対する促進的措置と守れなかった場合の強制措置とで、遵守を奨励するものであり、かならずしも懲罰的なスキームとは言えない。 

P27 
②主要途上国の参加 
・主要途上国の参加は、先進国による京都議定書の目標達成と更なる削減努力があった上で、伴うものと考えるべきである。また、途上国は多様であり、その参加のあり方も多様である必要がある。第4章にみられるような削減対策の支援を受けること、あるいはある部門での効率改善を図ること等、京都議定書の現在のスキームを充実・発展させることで対処可能であることは多い。 

③米国の参加 
・米国の参加が重要であることは言うまでもないが、米国現政権は国際合意に背をむけており、こうしたルール違反の国家に対しては、国際社会が結束して立ち向かうべきであり、米国の求めに応じてルールを変えようという本報告の姿勢は本末転倒である。オランダの提案は、本報告の第2章で触れられている科学的知見に照らして必要だと考える削減を実現しようと真剣に考えた場合の一つのアプローチであり、これが現在のルール違反をしている米国現政権にとって受け入れがたいからとして否定的に捉えることは、米国と同様に、日本に温暖化防止に向けた意欲に欠けると言わざるを得ない。 

「2.コミットメントのあり方」について 

(1)国別排出絶対量の短期的な削減目標の特質 
・全般にわたって、数値目標義務を始めとして京都議定書を否定的に捉えたものであり、京都議定書を第一歩とする積極姿勢が見られない。下記の視点を踏まえ、大幅に修正すべきである。 

P28 
「① 大幅な削減にはつながらない」について 
・ここでは、京都議定書の5年ごとの数値目標を否定しているが、第2章で紹介された厳しい対策を必須とする科学的知見は、短期の削減を積み重ねる確実な削減を求めているものである。目標を長期に先送りして対策を遅らせればそれだけ被害は拡大すると考えるべきである。短期の目標設定が「気候変動問題の究極的な解決につながらない」とする根拠が不十分ではないか。また、5年間は短期とは必ずしも言えない。 
・既存技術を前提にするために小幅の削減しかできないとしているが、根拠がないのではないか。逆に革新的技術などによって大幅削減ができるという根拠は示されていない。 

P29 
「③ 技術開発を十分に促進しない」について 
・技術開発は、厳しい削減義務があればそれが促進策となって、猛烈な技術開発競争が生じ、民間努力でなされるものである。逆に緩めれば技術開発は行われないであろう。一般的には、本報告とは全く逆である。 

P29 
「④ 費用対効果の悪い取組となりかねない」 
・短期的にも損をすることのない費用効果的な対策は多数存在する。それらまで先送りしたいというように読めるが、費用対効果のよいものを確実に選んで対策を早期に進めることは良いことではないか。対策先送りは、途上国の人々や将来世代につけを残すだけでなく、省エネ技術開発を遅らせ、日本企業を確実に衰退させると危惧するものである。 
・報告には過去に進めてきた省エネルギーの努力が産業界の国際競争力の強化に大きく貢献してきたとある。省エネはエネルギーコスト削減になるので、今後の取り組みも同様に「国際競争力の強化に大きく貢献」すると考えられ、それを各国に確実に実行させる法的拘束力ある各国への削減目標の設定強化がますます必要になっている。 

P30 
「⑤ 衡平な目標設定が困難である」について 
・「衡平性」については、目標設定の際に、その指標をどこにおき、その程度をどこまで許容するかの議論をするべきものである。本報告においてそうした提起がなく、「衡平性」が確保できないので目標設定自体が適切ではないという論旨は乱暴である。逆に目標設定をしないとなぜ「衡平性」を確保できるのかも検証されなければならない。 

(2)将来の枠組みのコミットメントのあり方 
・どの程度の削減を目指すのか、削減量の大小について何も問題にしない議論は、根本的に問題設定を誤っているように考えられる。削減には関心がないというのでないならば、目指すべき削減量についても議論するべきである。 

「① 途上国における排出抑制をもたらす取り組み」について 
・途上国における排出削減は、京都議定書の途上国への協力でも一部可能であり、それが十分進められていないことを認識するべきである。また、途上国への投資や協力を促進することは先進国の義務を緩めることとは関係がなく、先進国は先進国としての排出削減を一層進めるべきであることに変わりないことも確認するべきである。 

「② 抜本的な排出削減をもたらす取り組み」について 
・本報告では、「将来の枠組みにおいて抜本的な技術革新がコミットメントの中核をなすべき」としており、コミットメントとしての法的拘束力のある目標を弱めることにより、予定調和的に技術普及が進むかのように書かれているが、その根拠は何も示されておらず、数値目標を課すことによって技術開発が進まないという理由が理解できない。また、技術普及や国境を越えたセクター別原単位目標設定については、「共通政策措置」の中で取り組むことが可能であり、そのことと数値目標設定は矛盾せず、相乗効果になるものである。 

P34 
「コラム4 技術の開発・普及を通じた国際貢献(太陽光発電と風力発電の事例)」について 
 自然エネルギー技術開発には、数値目標が大変有効である。逆に目標も何もないと進まないと見るべきであろう。日本政府はヨハネスブルグサミットにおいて再生可能エネルギー目標設定に反対したが、これを撤回し、京都議定書のグッドプラクティスガイダンスの議論の中で共通政策措置として提案し、それを通じて自然エネルギーの技術開発を促進すべきである。 

「③ ホットエアの問題への対応」について 
 ホットエアは、数値目標の設定に際して衡平性の指標の議論を詰めることによって、防止を図る必要がある。また、西側先進国などがホットエア活用により国内削減を先送りすることが問題であることから、排出量取引への上限設定が必要であると考える。 

P36 
第4章 将来の枠組みの具体的なあり方 
「1.具体的行動へのコミットメント」について 
・数値目標を補完的なものに弱めようとして論旨だと理解するが、目標も数字もない行動を示したコミットメントを中心とした制度にした場合に、なぜ法的拘束力ある数値目標を課した場合よりも削減が進むのかを明らかにすべきである。また、日本自身の削減はどう見通しているのかも示すべきである。 
・数値目標も含めどのコミットメントに重きを置くかについては各国に柔軟性を与えるとしているが、これでどうやって衡平性を確保できるのか、またどうやって客観的な取り組みの評価が出来るのか、さらに、いかに確実な削減を確保できるのか、いずれについても全く疑問であり、それに答えた提案とはなっていない。 

(1)途上国における排出抑制への協力 
P37 
「2 民間主導の協力」 
 CDMの適用条件を大幅に緩め、原子力CDMも出すべきとの意見のようだが、これは条約会議での「CDMへの原子力利用を控える」との合意を覆す主張であり、容認できない。また、CDMルールを甘くすると実際の削減につながらない大量のクレジットが発行される恐れがある。合意されたルールにおける環境十全性への配慮は、今後も最大限尊重され、継続されるべきである。 

P40-41 
「(2)革新的技術の開発・普及」について 
 コストについて、革新的技術の方が地道な省エネ技術の改良より安いというのは常識と異なる。例えば炭素貯蔵・隔離は、モニタリングを含めれば莫大なコストになると考えられるが、それでも、数年で元が取れる省エネ技術より安いというのはどういうことか。また、革新的な技術開発を進めることにより、今進めるべき省エネ技術の改良は普及を進めることを怠るようなことがあってはならない。 

P43-44 
「(3)国境を越えたセクター別の原単位の向上」について 
 「トップランナー方式」でのセクター別対処は、現行京都議定書のグッドプラクティスガイダンスをさらに発展させた「共通政策措置」で対応可能である。日本政府はこれまで「共通政策措置」に反対し、政策措置は各国で自由であるべきなどと発言してきたが、これを機会に「共通政策措置」に基本的に賛成することを表明し、日本としては「トップランナー方式」を先進国共通の政策措置として提案するべきではないか。 

P44 
「2.数値目標」について 
・世界全体の排出量の数値目標を設定することのみならず、各国別の数値目標は必要である。京都議定書が、各国において温暖化対策を進めるインセンティブになっているのは、法的拘束力のある数値目標が課されていることの効果であると言ってもよい。ところが本報告では、各国別の数値目標は実効性がないとしている。本報告に書いてあるような制約のない緩やかな行動を決めることによってなぜ科学の要請に応えられるのか、国別削減義務よりもどれだけ高い削減が得られるのか、報告書は何も答えてない。一般的には結論は逆ではないか。 
・次期約束期間は、2013年から2030~2050年といった長期間の設定が適当としているが、これほど長期では、期限を決めて地道に取り組む対策や技術開発が先送りされ、行われなくなると考えられる。短期の法的拘束力ある削減目標を国別に課すことよりも、これほど間延びした期間設定をする方が対策が進むという根拠は何か。例えば2015年に、京都議定書の発展と比べて先進国や日本でどれだけの削減になるのかを示せないのであれば無責任ではないか。 
・ユニラテラルCDMは、国際的にも様々な議論があるところであり、各国の思惑も大きく異なる。制度設計によっては大きな抜け穴にもなりかねないことに留意し、国際情勢、各国の考えを踏まえた慎重な対応をするべきである。 

P45 
「3.レビュー・プロセス」について 
(1)定期的なプレッジ・アンド・レビュー 
・京都議定書の遵守制度を廃止して、1992年の気候変動枠組条約の審査・報告だけにしようという主張だと理解するが、それでは対策として不十分であることから法的拘束力を有した京都議定書が合意された経緯がある。それを全く無視した意見であり、事実上のスキームの後退を提案しており問題である。 

P46 
(2)遵守スキーム 
・遵守スキームは、常に前倒しで対策に取り組み、余裕をもって達成する国には特に厳しいことはなく、環境フリーライダーが横行しないように厳しい措置を求めるはずである。日本政府はこれまで一貫してゆるい遵守制度を求めてきたが、日本が今後も誠実に目標を達成する気があれば、厳しい遵守措置など問題ないはずである。同専門委員会の中にも、「日本も京都議定書を守らなければよい」などという意見を表明する委員がいることからも、これが本音であると邪推されても仕方がない。そうでないというのであれば、京都議定書で合意されたようなしっかりとした遵守制度の継続を提案するべきである。 

P47 
「4.適応」について 
・途上国の一部では緊急に適応に対処しなければならない地域があり、先進国の資金の拠出による早期の適応対策が必要になっている。 
・京都議定書を批准した附属書II国の中で、途上国への基金拠出のコミットメントをしていない日本は、日本も早期に基金拠出を宣言し、誠実に実行すべきである。 

第5章 今後の国際的な議論の進め方 
P50 
「1.主要排出国による議論の先導」について 
 気候変動の条約交渉は排出国の利害調整会議ではなく、地球の将来を加害者たる大排出国だけでなく、一方的な被害を受ける途上国、島嶼国などが一緒に話しあうべきものであり、それが大国主導の一方的外交ではない、全締約国参加の国連型国際交渉の特長である。被害国の意見を聞かず、「主要排出国による議論の先導」により、方向性の大きなところを合意しようというアプローチは問題であり、取り下げるべきである。 

P51 
「3.産業界とNGOの参画」について 
 ここでは産業分野は産業界が、民生分野はNGOが、というように割り振り、国際社会で提案しようとしているが、これは、NGOについての認識・理解に大きく欠けた逸脱した提案であると言わざるを得ない。OECDは、政策提言等の幅広い活動を行うNGOを含む、全ての利害関係者の意思決定への参画を求めているところであるが、それは商売の利害とは異なり、本報告でのNGOの認識とは全く異なるところである。 

以上

問合せ

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
URL:http://www.kikonet.org/

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