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【プレスリリース】「第三次環境基本計画(案)」に対する意見(2006/02/28)


2006年2月28日

「第三次環境基本計画(案)」に対する意見

気候ネットワーク代表 浅岡美恵

気候ネットワークでは、「第三次環境基本計画(案)」に対する意見書を提出しました。

意見

1 我が国の社会経済と環境問題の現状   ※11104  (1)日常活動からの負荷が課題となっている環境問題の現状   「日常活動」の代表が家庭での活動ととらえているが、地球温暖化問題ではCO2排出量のうち、直接排出で見ると9割近くが企業で、全体の5割は180の発電所、製鉄所、製油所、セメント工場から排出されている。1990年以降の変化では、直接排出量で2003年度では最大の排出量となるエネルギー転換部門が1990年比17%、6千万トン増加させたことが目立ち、石炭火発にフォーカスすると、日本の排出増に匹敵する増加が石炭火発だけでもたらされている。  ここでは、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済がバブル経済崩壊後も続いていること、環境負荷の高い企業活動が続いており、石炭火発の増加(設備容量および発電量)と石炭火発優先の発電(石炭火発とLNG火発、石油火発の設備利用率)、産業のエネルギー効率の悪化(鉱工業生産指数当たり産業部門エネルギー消費量)、自動車輸送分担率の増加、などに代表されるように短期的視野のコスト減のために環境負荷の高い企業活動が積極的に選択される傾向すらあることを書くべきである。  問題の科学的解決を図るためには、排出量の大きさ、増加量の大きさを見た上でその主要な分析をすべきではないか。

※11203 1 地球温暖化対策の分野  「対策が進んでいない」、「あらゆる主体が参加・連携して」、などと漠然と記述するのではなく、排出量の大きさ、増加量の大きさから重点的に点検し、原因はどうか、従来の対策にどういう問題があって解決に至っていないのか、を考えるべきである。(具体的な問題指摘に関しては、※21105への意見を参照。)  将来について、2013年以降の中期についてと、2050年程度をにらんだ長期のことについて記述する必要がある。  2013年以降については、昨年12月のCOP11・COPMOP1で、先進国の削減義務について、2012年までの義務と切れ目がないように目標を定め継続強化することが決まっていることから、今後の国内対策強化が不可欠なことについて記述すべきである。  また、2050年程度の長期をにらんだ気候目標として、工業化以前からの気温上昇2度未満とすることを目指して排出削減を図っていくこと、それを確実に達成し、短期・中期の削減を予防原則に基づき定めていくことを記述すべきである。

※12102 1 環境効率性の向上、環境と経済の好循環の実現による「より良い環境のための経済」と「より良い経済のための環境」の実現   経済活動を環境容量の範囲に抑えること、そのことは予防原則に従って定めることを原則に掲げるべきである。

※12303 2 施策決定における最大限の科学的知見の追求    対策の原則を定めるに関して、「合理的なコストの下で」と限定するべきではない。逆に、後始末が「合理的なコスト」で済まなくなるおそれのある経済活動は、不確実性があっても未然に防ぐ必要がある。

※12304  3 予防的な取組方法の考え方などによる、不確実性を踏まえた施策決定と柔軟な施策変更     予防原則は地球温暖化を始めとする環境政策の大原則であり、それに関して「『必要に応じて』講じます 」と位置づけるのは問題であり、削除すべきである。また、対策が「必要」かどうかについては、環境部局が環境問題の解決に「必要」かどうかで判断することが重要で、従来型経済活動で利益を得ている企業や業界団体や、その監督官庁などが環境保全の利益を過小評価して決めることがあってはならない。

※12403  施策決定プロセスへの国民・民間の参画の仕組みづくりのためには、透明性の確保が不可欠であり、「できるだけ幅広い情報を示しつつ」という曖昧なことではなく、検討に際して使用する情報を含め全ての情報開示を前提とするべきである。

※12602 1 50年といった長期的な視野を持った取組の推進と超長期ビジョンの策定  地球温暖化対策について、工業化以前からの気温上昇を2度未満とすることを目指して排出削減を図っていくこと、それを確実に達成し、短期・中期の削減を予防原則に基づき定めていくことを記述すべきである。

第二部 今四半世紀における環境政策の具体的な展開
※20006 エ 自主的取組手法  自主的取組は政策とはいえないので削除すべきである。もしくは、自主的取組を推進する政策手法について述べるのであれば、罰則や行政処分などの政策的対応を含む環境協定などを例示すべきである。

第1章 重点分野ごとの環境政策の展開 ※21103 (1)地球温暖化に関する科学的知見  途上国の排出量増加を書く前に、温暖化の原因として先進国の累積排出量の大きさについてまず記述すべきである。また、南北格差の大きさについても記述し、共通だが差異ある責任に基づき日本などの先進国が先行し、かつ将来もより多くの責任をもってより多くの対策を行うことを確認すべきである。

※21104 (2)国際的な対策の枠組み  2013年以降について、昨年12月のCOP11・COPMOP1で、先進国の削減義務について、2012年までの義務と切れ目がないように目標を定め継続強化することが決まっている。このことを記述し、今後の国内対策強化が不可欠になっていることを書くべきである。

※21105 (3)国内における対策   原因と対策・政策の問題点の主要なものを、排出量の大きさ、増加量の大きさを踏まえて重点的に点検し、記述すべきである。  すでに述べたように、全体の5割は180の発電所、製鉄所、製油所、セメント工場から排出されている。また、1990年以降の変化では、日本の排出増に匹敵する増加が石炭火発だけでもたらされている。  これまでの政策を振り返ると、対策量を明示するような計画が幾度もつくられたものの、肝心の政策的な担保はそのほんの一部でしかなく、現在の「京都議定書目標達成計画」でも全体の対策量のうち、対策の達成が法的に担保されているものの割合は2割に満たない。しかも産業部門のCO2については、大半は経団連の自主行動計画に依存している。また政策は、石炭火発増加や車の輸送分担率増加、乗用車の大型化など、逆行する企業活動を放置してきており、さらには石炭に安い税制、石炭火発建設自治体への交付金、道路建設に全交通関係公共事業の85%を集中、あるいは大型乗用車への物品税廃止などでCO2排出増を促進さえしてきたこと、政策への環境アセスメントがなかったことなどの問題点を記述し総括すべきである。

※21107 (1)究極の目標  条約の目標を達成するための気温上昇についても記述すべきである。その値については、工業化以前からの気温上昇を2度未満にすることを記述するべきである。

※21108 (2)中長期的目標  2050年程度の中長期をにらんだ気候目標を早急に策定することを記述すべきである。

3 施策の基本的方向 ※21112 (1)京都議定書の6%削減約束の確実な達成  計画に位置づけられた対策・施策の推進はもちろん、点検を毎年行い、不十分な対策はただちに強化し、政策で担保できていない対策はその達成を政策で担保するよう強化すべきである。

ア すべての主体の参加・連携の促進と各主体に期待される役割 ※21115 (ア)国  国については、対策を進める上で最良の政策を選択する義務があること、対策効果を事前に示し、事後に検証して不十分なら政策の追加・改廃を行うことを明記すべきである。  また、逆行する政策をただちに中止し、逆行するおそれのある政策を未然に防止するとともに、企業活動などを未然におさえる政策を導入することを責務として明記すべきである。

※21117 (ウ)事業者   利用可能な最良の技術の選択・導入を行う義務があることを明記すべきである。また、大量生産、大量消費、大量廃棄型経済活動の防止を行う責務があることを明記すべきである。

※21120 イ 多様な政策手段の活用  各主体の費用負担の公平性、については、温暖化対策では初期投資とエネルギーコスト削減とを比較すると、エネルギーコスト削減が上回る対策が数多く存在し、産業がそうした対策を選択する手段に恵まれている。にもかかわらず一部の対策しか実現されていないと推定されることから、費用負担の公平性には曖昧で不十分なところが多いため、この記述は削除すべきではないか。  また、インセンティブ付与型施策としては、化石燃料に課税する炭素税(環境税)が効果的であり導入を早急に実現すべきことを明記するべきである。

※21121 ウ 評価・見直しプロセス(PDCA)の重視  全ての政策について、計画時(P)に代替案の比較と政策効果を明示し、国民の意見を聞きつつ策定すること、中間段階・事後に必ず評価を実施し不十分なら追加政策をとることを実施すべきである。

(2)さらなる長期的、継続的な排出削減等 ※21124 イ 中長期的な国内対策の在り方  2050年程度の中長期に関しては、前述した通り、工業化以前からの気温上昇2度未満を目指して排出削減を図っていくことを目標とし、対策は、それを確実に達成するために短期・中期の削減を予防原則に基づき進めていくべきことを記述すべきである。  「技術革新を進めるほか」との文章は、技術の中身を特定せずに使うのは危険である。技術については環境アセスメントを実施し環境への悪影響がないことを前提に使用することを書き添えるべきである。

※21125 ウ 新たな国際枠組みの検討  昨年12月のCOP11・COPMOP1で、先進国の削減義務について、2012年までの義務と切れ目がないように目標を定め継続強化することが決まり、まず先進国の対策強化が重要になっていることから、日本も6%を大幅に上回る削減提案を行う方針を示すべきである。

4 重点的取組事項 (1)温室効果ガスの排出削減、吸収等に関する対策・施策 ア 温室効果ガスの排出削減対策・施策 ※21130  漠然とした方向性ではなく、利用可能な最良の技術によるストック効率向上、石炭・石油から天然ガス・自然エネルギーへのシフト、代替フロン等3ガスの生産・消費のできる限り早い中止・全廃、という原則を掲げるべきである。  その上で、CO2に関しては、漠然と消費側の努力・我慢に頼らず、市場に出ている商品は効率が悪いもの、排出係数の高いものを市場から追放し、トップランナーかそれに近いものに限っていくことを基本とし、消費側が商品選択を誤るのを未然に防止するようにすべきである。

※21131 (イ)具体的な対策  石炭火発の新増設中止とLNG火発や自然エネルギーへの転換を中心とした発電対策、産業の省エネ・燃料転換対策の徹底、建物の次世代省エネ基準厳守化、車の小型化・効率化(共同輸送など)、モーダルシフトを重点にすべきである。なお、環境基本計画で環境負荷において様々な問題を抱えている原子力発電の活用を掲げるのは問題であり削除すべきである。  またCO2以外の代替フロン等3ガス対策については、脱フロン化を重点にすべきである。

※21132 イ温室効果ガス吸収源対策・施策  森林整備における吸収量は、確実に増大するとの科学的根拠が不十分であり、一時的な吸収をもってエネルギー起源CO2削減対策と同等に扱うことには問題があることを基本認識として確認するべきである。その上で、仮に森林吸収源を利用する場合でも、目標達成に利用するのは、基準年と比べて人為的に吸収量が増加した分のみとするべきであり、活動範囲の純吸収量とするべきではない。

※21133 ウ京都メカニズムに関する対策・施策  京都メカニズムが、国内対策に関して補足的であるとの原則を具体的に定めるべきである。また、産業部門対策において経団連自主行動計画の達成に京都メカニズムを利用する事を認めていることについては問題があるため、ルールを設け、制限するべきである。

※21134 (2)横断的施策  環境税(炭素税)は、市場メカニズムを通じた政策手法の代表であり、エネルギー起源CO2の排出削減に適した必要不可欠な政策である。あらゆる主体に対して対策効果が期待されるだけでなく、制度設計により、真面目に努力する企業・国民がむくわれる政策として、これら主体がかえって負担減になるようにもできる政策手法である。これを、「検討を進めていく課題」と消極的に位置づけるのではなく、早急に導入し、対策効果を見て強化すべきである。  なお、環境税(炭素税)は、財源調達は二次的なものであり、あくまでも価格インセンティブ効果で削減を促す政策手法であることを確認すべき。  また、環境税(炭素税)は環境負荷の大きな企業・家庭に相対的に大きな負担をさせるものであり、「国民負担を極力小さくすることが重要」という表現がそれと矛盾しないことを確認すべき。

※21135 (3)基盤的施策  使用すべきではない技術として、他の環境負荷をもたらす可能性のあるもの、将来世代に迷惑をかけるものをあげ、大きな技術に関しては環境アセスメントを義務づけることとすべきである。  二酸化炭素回収・貯留・隔離技術は、不確実であって他の環境負荷をもたらす可能性のあるものと位置づけるべきであり、従来技術よりすぐれていることの確証が得られるまで使用しないことを明記すべきである。問題のある技術開発に対し国が予算を確保することも慎重であるべきである。

5 取組推進に向けた目標 ※21138 (2)個々の主体からの二酸化炭素排出量等に関する目安  直接排出量において全体の1割程度にすぎない家庭と業務だけ目標を示すのは問題である。まずは大口排出源について掲載すべきである。  掲載すべきは以下の事業である。また、省エネ法の効率改善が達成されるように目標を示すべきである。
 電力(火力発電所のCO2原単位)  鉄鋼(粗鋼生産量あたりCO2排出量))  化学(主な生産品の生産量あたりCO2排出量)  セメント(生産量あたりCO2排出量)  紙パルプ(生産量あたりCO2排出量)  石油(製油量あたりCO2排出量、換算値の禁止)  トラック(貨物輸送トンキロあたりCO2排出量)

第2章 環境保全施策の体系 第1節 環境問題の各分野に係る施策 1 地球環境の保全 (1)地球温暖化対策 ア 温室効果ガスの排出削減・吸収等に関する対策・施策 ※22109 a エネルギー起源二酸化炭素  産業部門については、自主行動計画に依存し続けるのではなく、目標の8.6%以上の削減を実現するために、利用可能な最良の技術を採用することと、全事業所が省エネ法の目標を達成することを担保する政策を導入すべきである。  業務部門、家庭部門では、建物の次世代断熱基準の確実な遵守と、守らない建築物の販売、賃貸、借契約締結の禁止する措置を取るべきである。  エネルギー供給部門では、石炭火発の新増設を禁止し、LNGシフト、自然エネルギーシフトで確実な目標達成の実現、それを政策で担保する政策の導入をすべきである。  自然エネルギーシフトのため、2010年までに一次エネルギー供給の10%以上を自然エネルギーでまかなう目標をたてるとともに、電力については自然エネルギー電力の固定価格買い取り制度を、熱については太陽熱・バイオマス熱源を積極導入する政策を導入すべきである。  なお、原子力は推進すべきではなく、削除すべきである。

※22112 d代替フロン等3ガス  脱フロンの早期実現を目標に掲げ、大気中に放出されるスプレー商品を(医薬品など不可欠用途であることを証明できたものを除き)ただちに禁止し、マグネシウム鋳造等でも2007年中に使用を禁止すべきである。  洗浄、半導体液晶製造については密閉型あるいは除害装置付施設以外での使用を禁止すべきである。  断熱材は、公共関与の建築物への代替フロン使用をただちに禁止するとともに、民間建築物も早期に使用を禁止すべきである。また、冷媒は脱フロン商品化を促進し、期限を切って使用を禁止すべきである。

※22117  環境税(炭素税)は、温暖化防止の政策手法として有効で必要不可欠な手段であることから、早期に導入を実現するべきであることを記述すべきである。

※22135 b交通需要マネジメント手法の活用をはじめとする物流、人流、交通流対策、局所汚染対策の推進  バイパスおよび環状道路等の整備は、短期的に限られた範囲では速度を速めても中期的に広範囲では自動車交通量を増加させると見られ、また仮に効果があるとしても他の政策手法に比較して費用対効果が著しく悪いことが推察され、温暖化対策への悪影響も予想されることから、環境対策として記述するのは不適当であり、削除すべきである。

第3部 計画の効果的実施 ※30101 第1節 政府をはじめとする各主体による環境配慮と連携の強化  国や自治体が新たに政策立案をする際には環境影響評価を実施し、代替案の中で温室効果ガス排出が最小のものを選択すべきである。また、このことを担保するために戦略アセスメントを法制化すべきである。

※30301 第3節 各種計画との連携  国の他の政策との関連では、環境の保全を目的にするものに限らず、影響のあるものについては環境基本計画を優先すべきである。また、このことを担保するために戦略アセスメントを法制化すべきである。

※30401 第4節 指標等による計画の進捗状況の点検及び計画の見直し  環境省の政策に限らず全ての環境政策について、計画時に政策効果(達成できる対策の種類、指標、目標値)を明示し、代替案の比較を義務づけて最良のものを選択すべきである。これを中間段階・事後に必ず評価を実施し不十分なら追加政策をとることを実施すべきである。また、計画策定時、中間点検時、事後には市民・NGOや専門家など第三者の審査を得るべきであり、自己評価に終わらないようにすべきである。

以上

問合せ

特定非営利活動法人 気候ネットワーク
URL:http://www.kikonet.org/

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