2006年5月18日

「RPS法評価検討小委員会・報告書(案)」に対する意見

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

気候ネットワークでは、「RPS法評価検討小委員会・報告書(案)」に対する意見を提出しました。

意見内容

[意見1] ・該当箇所:全般 ・意見内容  京都議定書の目標達成及び中長期の地球温暖化防止のために、自然エネルギーの大幅拡大は必須であり、そのために効果的な政策・制度の早急な実施が求められており、固定価格制(ランニング補助型)の導入など、抜本的な政策強化を報告書に盛り込むべきである。  地球温暖化防止のために日本などの先進国には、2050年頃までに1990年比で6~8割の二酸化炭素(CO2)排出削減が求められている。  しかし日本は6%削減という京都議定書の目標達成ですら、厳しい状況に置かれている。目標達成のためのエネルギー起源CO2削減の対策として、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の推進は大多数の人に支持されていると言って良い。  にもかかわらず、日本においては、風力発電の伸びは鈍化し、バイオマス発電はほとんど見られず、世界一を誇った太陽光発電も今般累積導入量でドイツに抜かれてしまうなど、悲惨な状況にある。  自然エネルギーが進まないのは、コストが高いという経済要因がほとんどといえる。そしてそのコスト高の障害という状況が改善の方向に向かわないのは、政策・制度が原因と言って良い。すなわち、国(政府)の政策・制度に問題がある。  2003年4月に全面施行された、固定枠型の制度設計を持つ「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(新エネ利用特措法、通称「RPS法」)は、目標量・義務量が低すぎるなど、自然エネルギーの促進どころか逆に普及拡大を阻む様々な制度上の欠陥が指摘されている。  そもそも自然エネルギーの拡大を促す政策としては、固定枠制(RPS制度など)に比べて、固定価格制(ランニング補助型)の方が導入効果が高いことは、実施している欧州の国々の実例が示している通り、明白である。  新エネ利用特措法(RPS法)の抜本的な見直しは待ったなしであるにもかかわらず、この報告書(案)は、経過調整率を見直し2009年度までの義務量をわずかに上方修正する以外は実質的にすべて先送りする内容となっており、全く不十分なものである。  報告書には、自然エネルギーの大幅拡大に効果のある固定価格制(ランニング補助型)の導入など、抜本的な政策転換・政策強化を盛り込むことを強く求める。  なお自然エネルギーの大幅拡大は、京都議定書の目標達成に限らず、中長期の地球温暖化防止、脱化石燃料、ひいては持続可能な社会の実現のために必須であり、政策においてもそのような視点を持つべきであるのは言うまでもない。

[意見2] ・該当箇所:全般 ・意見内容  目標期間・目標値などについて、自然エネルギー(新エネルギー)政策と地球温暖化防止政策の連携・整合を図ることを求める。  これまで、新エネ利用特措法(RPS法)を始めとする自然エネルギー(新エネルギー)政策の目標期間・目標値などは、必ずしも京都議定書の約束期間などと整合性を持たず、見直しのタイミングも地球温暖化防止政策の見直しのタイミングとは異なってきた。そのため、地球温暖化防止政策の見直しの際に、その重要な一部をなす自然エネルギー(新エネルギー)政策のあり方については動かすことが出来ず、総合的な対応をとるための足かせとなってきた。今後の目標期間・目標値や見直しのタイミングは、地球温暖化防止政策の評価・見直しと整合性を持ち、地球温暖化防止政策の見直しのタイミングにあたって必要に応じて自然エネルギー(新エネルギー)政策の見直しができるよう、連携を図ることを求める。

[意見3] ・該当箇所:P.9、義務量 ・意見内容  本来は固定価格制(ランニング補助型)への抜本的な制度転換が最も望ましいが、固定枠型のRPS制度を継続する場合は、2009年度までの経過措置は直ちに廃止し、2010年度の目標量・義務量は大幅に引き上げるべきである。  既に大量のバンキングが生じていることなどからしても、2010年度の目標量・義務量と各年度の義務量は、著しく低いと言わざるを得ない。  2009年度までの経過調整率を見直して義務量を上方修正することは評価するが、それだけでは全く不十分である。  固定枠的な仕組みを続ける以上は、自然エネルギーの大幅拡大に資する高い目標量・義務量を設定すべきである。すなわち、2010年度の目標量・義務量は大幅に引き上げるべきであり、今ある2009年度までの経過措置(経過調整率)は直ちに廃止すべきである。  また関連して、ボロウイングも直ちに廃止すべきである。なお、バンキングも廃止が望ましいが、「2010年度の目標量・義務量引き上げ」「2009年度までの経過措置(経過調整率)廃止」を行えば、現状で見られる弊害は著しく緩和できると考える。  なお、現行法の規定により政府は今年度後半には2014年度までの利用目標量を設定する予定であるが、2011年度以降も、自然エネルギーの大幅拡大に資する高い目標量・義務量とすべきであることは言うまでもない。  具体的には、内外の自然エネルギー(再生可能エネルギー)の2020年の目標設定を見ると、EU20%、ドイツ・イギリス20%(電力)、カリフォルニア州33%(電力) 、東京都20%程度などの数字が掲げられていることなどを参考に、最低でも2020年で20%以上の目標量とし、2010年度・2014年度はそれに対応した目標量・義務量を設定すべきである。

[意見4] ・該当箇所:P.12、目標期間 ・意見内容  事業リスク低減のため、目標期間は長期化すべきである。例えば、現行の「4年ごとに8年後の目標」に代えて「3~5年ごとに15年後もしくは20年後の目標値」とするなどが考えられる。  報告書(案)では、「次の長期エネルギー需給見通しの作成時に大まかな目安(義務量とは異なる)を示すことができるよう検討を行う」とのことであるが、これは何もやらないと言っているに等しい。直ちに目標期間の長期化を実施すべきである。もちろん、「大まかな目安」ではなく、(現行制度を継続するとすれば拘束力のある)利用目標量として設定すべきである。  なお目標期間を長期化しても、2010年度や2014年度にも適切な高い目標量・義務量を設定すべきであるのは[意見3]で述べた通りであり、短期目標(2010年度や2014年度)の達成状況をチェックする仕組みも必要不可欠である。  また地球温暖化防止の観点から、2020年・2030年・2050年という長期の時間枠での自然エネルギーの普及目標を戦略的に立てるべきである。

[意見5] ・該当箇所:P.13~14、義務対象エネルギー②水力発電及び地熱発電 ・意見内容  基本的に、国際的に共通の「持続可能な自然エネルギー」(new renewables)の定義と調和させる方向で見直すべきである。  水力発電・地熱発電の対象範囲について検討する方向を示したことは、評価する。  具体的には、地熱はすべてを対象とすべきである。また小水力は、水系の生態系に配慮しつつ、世界的な基準である設備容量1万kWなどを参考に、規模要件を引き上げるべきである。  なお、廃棄物発電は対象から除外することを求める。  また、対象範囲の変更に合わせて目標量を変更するのは言うまでもない。

[意見6] ・該当箇所:P.16、その他の論点の評価②電力会社による余剰電力の購入 ・意見内容  太陽光発電に対しては、固定価格(ランニング補助)型で支援する制度を、政府(国)として早急に導入すべきである。  報告書(案)に「余剰電力購入メニューを継続することが大いに期待される」と書かれているが、政府の政策担当部署が、自らが所管する課題についてこのような、あたかも他人事のような無責任な言い方をすることは、極めて不適切である。この課題を政策・制度としてどうするのかを、政策担当者として市民(電力会社を含む)に対して示す義務がある。  いずれにせよ、太陽光発電の更なる拡大のためには、固定価格的(ランニング補助的)な制度が必要不可欠である。今までは電力会社の余剰電力購入メニューが実質的な固定価格(ランニング補助)制度として存在してきた。しかし、引き続き電力会社に一方的に依存したり、お願いしたり、押し付けたりするのは、もはや限界である。政府(国)の政策として、太陽光発電に対する固定価格(ランニング補助)型で支援する制度を、早急に導入すべきである。太陽光発電は風力発電などの他の自然エネルギーよりコストが高いので、固定枠制(RPS制度)を継続し目標量・義務量を大幅に引き上げる場合も、何らかの固定価格的(ランニング補助的)な制度が必要である。  その際の購入価格は、今般太陽光発電の累積導入量で日本を抜いたといわれるドイツのような高い価格が望ましいが、少なくとも当面は最低でも現行の電力会社による余剰電力購入メニューの価格を維持すべきである。

以上

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