2012年2月23日

「総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会中間取りまとめ(案)」に対する意見

気候ネットワーク

 気候ネットワークでは、パブリックコメント「総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会中間取りまとめ(案)」に対する意見公募に際し、下記の意見を提出しました。

1.はじめに

・省エネルギーの重点分野の見直し:東日本大震災後、省エネの必要性はこれまで以上に高まっている。これからの省エネの重点は、絶対量が大きくロスの大きい火力発電所や、手段も多様な工場の対策に置くべきである。とりまとめ案には、産業・エネルギー転換部門の省エネ対策強化の項目がなく、国全体の省エネを推進するための重要な視点が欠けている。1990年以降の業務と家庭のエネルギー効率推移は産業と同じであり、民生の消費増加の多くは床面積や世帯数増加が原因である。主体の数が多く、エネルギー消費量が小さいところを重点にするのは、政策として効率的とは言えない。国全体の大幅な省エネを進めるために、重点分野の見直しが必要である。

・省エネルギー目標の設定:省エネ法の下では、原単位の改善、個々の機器のトップランナー規制など、単体での効率向上を基本としてきた。今後は、エネルギー総使用量の削減という視点からの、2020、2030年の省エネ目標を設定することが必要である。

2.ピーク対策

・今回の案は、工場等の原単位効率向上の努力義務を達成するための計算方法の中に、ピーク時の算定方法に(系統電力使用量及びその他買電量のみに1.5などの合理化係数を用いて)変更を加えるといういびつなものである。これでは、見かけ上の省エネが進んでも、ピーク時に化石燃料起源の自家発などにシフトし増エネになる可能性があり、省エネという目的に反する。こうした考えを入れる前に、大前提として、全体でエネルギー総量の削減を義務化する方針が必要である。

・「特別高圧」の大口工場・業務施設の2011年4~12月の電力量削減率(前年同月比)は、家庭や中小規模事業所の削減率(7.3~8.1%)の半分程度と極めて小さく、省エネ法指定工場の省エネが今後の最重点となることは明らかである。ピーク時カットを割増で認め、エネルギーロスの大きな対応を容認するのは、大規模事業所の省エネ対策の遅れを追認することであり問題である。

・現行省エネ法における原単位の改善自体が努力目標であること、原単位自体も改善率も公表されていないため、第三者が検証出来ず、不透明な運用となり、効果も期待されにくい。ピーク対策は、省エネ法の範囲にとどまらず、需給調整や電力料金見直し等を通じて検討するべきである。

3.民生の省エネ対策

・建物の断熱性能をストック全体で上げていくには、新築建築物の断熱規制が必須である。速やかに1999年基準を大きく強化した基準を設定し義務化を図るべきである。2020年までの段階的な義務化の導入では遅すぎる。

4.規制の在り方の見直し

・省エネ対策の基礎は、工場単位での実態把握である。また、第三者による情報把握を通じた省エネおよびCO2削減可能性の分析、透明性の確保は極めて重要であり、エネルギー消費の基礎情報及び効率情報は公開を基本とされるべきものである。ところが部会では、事業所ごとのエネルギー使用実態の把握等の定期報告義務を簡素化する方針が検討されてきた。定期報告制度を取りやめ、経産省による行政指導を非公開で行う方式に改めることは、省エネ推進の大きな後退になるため、省エネ法の改悪であるとの意見が相次いでいた。

・その後、こうした意見が反映され、定期報告制度についての変更はなされないようであるが、この方針転換がとりまとめ案に反映されるべきである。

5.省エネ法の改正の方向性

・ピーク対策は、エネルギー総使用量の削減を大前提に講じるべきであり、法改正の中に省エネ目標を位置付けるべきである。

・住宅・建築物対策では、法改正と同時期に義務化の工程表を出すという現行案では、法的根拠がなく、住宅・建築物の省エネ対策強化を著しく遅らせる。住宅・建築物の省エネ基準の強化および速やかな義務化を、省エネ法の改正案に明確に位置付けるべきである。

・規制の在り方の見直しの定期報告義務の簡素化方針の取りやめは歓迎する。しかし、現行案にある、事業者毎のエネルギーの総使用量、事業者毎の「見直し後の原単位」の改善率、エネルギー起源二酸化炭素の排出量等の把握・公表まで取り下げる必要はなく、維持するべきである。

・産業部門においても、工場同士、プラント同士でエネルギー効率に差があることから、工場単位で「トップランナー規制」を導入し、全工場が省エネトップランナーになるように規制で誘導しつつ、情報を開示し、努力する事業者が報われるようにすべきである。

・法改正の中に電気事業者への情報開示義務等が盛り込まれると報道されるが、そうした議論は部会ではなされていない。このような改正は必要なことであるが、これまでに部会で説明・検討がされておらず、審議プロセスが不透明である。

関連リンク

    • 総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会 中間とりまとめ(案)はこちら(経済産業省ウェブサイト内)から閲覧頂けます。
    • プレスリリース「経済産業省の省エネ法“改悪”改正案の撤回を~事業者のエネルギー使用実態把握を簡素化するのは、改悪だ~」
    • プレスリリース「省エネ法の改正案に関する要望書」の提出について

※過去の資料はリンク切れとなっています。詳しく知りたい方は事務局までご連絡ください。

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