2009年1月26日

中期目標検討委員会のモデル仮分析結果の発表について

 

気候ネットワーク代表 浅岡 美恵

1月23日、地球温暖化防止のための日本の中期目標について議論を行っている首相官邸の中期目標検討委員会(第3回)が開催され、各委員から、モデル仮分析結果が複数示された。これについて評価・コメントをする。

詳細については、下のファイルをご覧ください。

【要 旨】

1.示されたモデルの仮分析結果では、地球温暖化の進行による被害を最小限に抑制する視点が全体に希薄である。危険な被害を回避するためには、2℃未満の気温上昇に抑える必要があり、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)はそのために先進国に求める2020年に1990年比25~40%の削減が必要としている。そのシナリオに辛うじて届く提案は、国立環境研究所の25%削減シナリオのみであり、RITE(地球環境産業技術研究機構)及び日本エネルギー経済研究所の試算はこれを大幅に下回っている。低い目標シナリオは検討から外すべきである。

2. 2008年の政府の長期エネルギー需給見通しの「最大導入ケース」)(2020年に1990年比4%削減(CO2))は、現在までのCO2増加の主因である石炭火力発電所をそのまま温存し、産業のエネルギー消費が2020年までほとんど減らないことを前提とする、「対策なし」に近いもので、対策を「最大導入」したケースとは言えない。さらにもっと対策を追加することが可能であり、また不可欠である。

3.日本の対策コストが高いとの記述が各所にみられるが、対策を取らなかったときの温暖化影響による被害額については、一切検討がなされていない。また、発表資料によれば、国立環境研究所の試算では、1990年比15%削減シナリオでは、温暖化対策投資額(追加分)よりも対策によって削減できるエネルギーコストの方が大きく、日本全体では短期的にも利益になるレベルとされている。

4.RITEや日本エネルギー経済研究所が高い削減目標が「厳しい」というのは、限界削減費用における「最高コスト」が高くなって厳しいという意味で強調され、試算に反映されている。類似のケースを国立環境研究所が試算しているように、国全体では「得」になるようなエネルギーコスト削減額を計算に入れ、費用対効果の高い対策を講じることとすれば結果は大きく異なり、試算によってコスト額が10倍に跳ね上がることにもなる。国民の選択のための検証が必要であり、各試算の根拠の開示が必要である。

5.RITEや日本エネ研の示すような1990年比0~10%程度(CO2)の削減は、気候変動のための日本の責任を果たす目標とは言えない。それらは同委員会でのオプションとすべきではない。政府は、3月の次の交渉会議(AWG)までと決められた情報提出までに、IPCCの指摘する2020年に1990年比25~40%のレベルの中期目標を提案すべきである。

6.中期目標に消極的な理由は国内対策とりわけ直接排出でCO2排出の3分の2を占める電力・産業の大口排出源の対策を自主計画に任せていることにある。排出量取引、炭素税など大口排出源向けの政策強化が不可欠である。

7.100を超える国内のNGO団体は、2020年に温室効果ガスを1990年比で30%削減することを含む「気候保護法」の実現を求め、MAKE the RULEキャンペーンを実施している。短期的な利益に固執する業界団体の意見ばかりではなく、世論の声にも耳を傾け、それを真摯に受け止めるべきである。

以上

発表資料

中期目標検討委員会のモデル仮分析結果の発表についてに対する評価・コメント

 要旨(PDF 23KB)

 詳細分析(PDF 36KB)

 全文(PDF 37KB)

 

関連リンク

政府官邸ホームページ(中期目標検討委員会の議事次第・資料)

 

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