2009年9月24日

国連気候変動サミット 鳩山首相の「2020年に90年比25%削減」を歓迎
国内目標と削減対策の具体化が急務

気候ネットワーク代表 浅岡 美恵

鳩山首相が22日、国連・気候変動に関するハイレベル会合で、科学が要請する水準に基づくものとして、温室効果ガスの排出を2020年までに1990年比25%削減を目指すとの日本の新たな中期目標を表明し、国内排出量取引制度や再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入などを国際社会に向けて約束した。こうした取組が世界経済の新たなフロンティアと新規雇用を提供するとの認識を共有し、日本が率先して削減を実現していくことを表明したものとして、心から歓迎する。  新政権は、半世紀ぶりにもたらされた政権交代への内外の期待に、国内での削減対策と海外での削減や適応への支援の具体化をもって応えていかなければならない。

しかしながら、25%削減目標の具体的内容も明確でないのが現状である。コペンハーゲンでの合意にかかわらず、2050年の長期目標をライクラサミットでの合意である1990年比80%削減に引き上げ、そこに至る日本の温室効果ガスの直線的削減の経路を法定化し、その実現を担保する炭素税や大規模排出源へのキャップ&トレード型国内排出量取引や再生可能エネルギー発電の固定価格買取制度を具体化し、その導入期限を明記した気候保護の基本法の制定が急務である。それこそが、コペンハーゲンの成功のために日本に求められている国際貢献である。日本の既にある利用可能な優れた技術を発展させ、新たな雇用を創出し、持続可能な地域の経済・社会づくりにも目を配った温暖化防止対策を策定、実施していくことこそ、国民が政権交代に期待したことである。

とりわけ、日本のCO2排出量の7割弱を占める発電所や工場など数千程度の大口排出源に、国際的なルールと共通のルールに基づく国内排出量取引制度の導入を2011年にも導入することは極めて重要である。その制度設計において、対象を事業所単位でとらえ、日本のCO2排出の3分の1を占める発電所からの排出を直接排出でとらえて対象とすることが、国内排出量取引制度の将来的発展のために不可欠である。

また、前政権のもとで決定された太陽光発電電力の限定的な買取制度が予定されているが、先の通常国会で成立したエネルギー供給構造高度化法は発電事業者に再生可能エネルギーの買取りを義務づけた法律ではない。速やかに再生可能エネルギー固定価格での買取を義務づけ、再生可能エネルギー導入目標を高め、すべての再生可能エネルギーについての導入に踏み出すべきである。

 

80%削減への道は、現在および将来世代の被害や負担を最小化し、人類が生存していくために必ずやり遂げなければならない道である。鳩山首相がまさに指摘したように、それは国民・企業とともに取り組む政治の責任である。気候ネットワークは、新政権の温暖化対策を実効あるものとするために、具体的な制度を提案し、議論を深めることに貢献していく。

以上

発表資料

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