2010年3月12日

地球温暖化対策基本法案、公約から大きく後退
~国内排出量取引はキャップ&トレード型とすべき~

 

気候ネットワーク代表 浅岡 美恵

昨年9月、鳩山首相が国連環境特別総会で、「温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくもの」として1990年比2020年25%削減を目指すとし、「我々が選挙時のマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として国内排出量取引制度や、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現を目指していく決意」を表明した。鳩山首相は国際社会や国民の期待に応え、その公約実現の責任を負う。
 しかしながら、本日、閣議決定された地球温暖化対策基本法案は、その実現の土台として、極めて脆弱といわざるをえない。

法案に2020年目標としての25%削減目標はあり、その施行前にも目標達成に資するよう基本的施策を講じるとするものの、25%目標の施行を「すべての主要な国の公平なかつ実効性が確保された地球温暖化の防止のための国際的な枠組み構築と意欲的な目標について合意をしたと認められる日以後」としたことで、政権はより重い責任を負ったといえる。具体的な施策の進展がない場合には、排出削減を実現できず、国内外から信頼を失い、日本の低炭素経済への移行と経済再生の機会も損なう。

対策の中核である国内排出量取引制度については、日本経団連や連合などの働きかけを受けて最後まで混迷の末、総量によることを基本としつつも、原単位指標についても検討の余地を残し、選挙公約で掲げたキャップ&トレード型排出量取引制度を明確に打ち出せなかった。原単位目標容認では総量削減の担保ができず、このような大規模排出源の排出削減のための制度といえない。10年前のイギリスでの失敗の経験に学び、原単位指標を容認した取引制度としてはならない。

旧政権が原発拡大を口実に省エネや再生可能エネルギー拡大を先送りし、石炭増加も容認してきたことが排出大幅増加を招いたことへの反省もなく、原子力拡大を図るとの条文を入れた。その一方で、再生可能エネルギー固定価格買取制度も、旧政権下のエネルギー供給構造高度化法のもとに、実質的に低い目標のもと、再生可能エネルギーを飛躍的に拡大させる制度の創設を明確にしえていない。

将来世代のために不可避の低炭素経済への道をここで封じてはならない。鳩山政権は国際社会と国民への公約にもう一度思いを致し、公約の実現を確実にする国内法制度を打ち立てるべきである。温暖化防止に与野党の壁はない。国会は、その役割を果たすべきである。

以上

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