「フロン回収破壊法改正案」の閣議決定にあたって
~肝まで省令に委ねた法改正案。フロン削減の方向性の明示を~

2013年4月19日

本日4月19日、「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保に関する法律(フロン回収破壊法)」の一部改正案が閣議決定されました。改正法案は、名称を「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン合理化管理法)」と改め、フロン類の製造業者やフロン類の製品の製造業者が講ずべき措置を定めているほか、業務用冷凍空調機器の管理者(流通業界等)に対するフロン類算定漏えい量の報告義務、フロン類を充填する際の措置などが規定されています。

これまでの「フロン回収破壊法」が、本来必要なフロン対策のうち、業務用冷凍空調機器という製品のみを対象に廃棄時・整備時のフロン回収・破壊を義務づけるというきわめて限定的な法律であったのに対して、本改正案では、まず第一にフロンメーカーや機器メーカー、ユーザーの責務を拡大し、生産・使用に関する規定を加えた枠組みになったことは評価できます。

しかし、肝心の具体的な使用基準や措置に関しては、経済産業大臣が「判断の基準」を定めるなどとして、行政の裁量に大きく委ねた構造となっています。また、段階的削減スケジュールも、フロン削減に向けた方向性も、この法案には明示されていません。現在使用しているフロン類についてはメーカーに対して「合理化」することが求められていますが、HFC32への転換など、一見「合理的」に見えても、温室効果が高く、持続可能ではない物質の転換を推進する余地を残しており、自然冷媒に一足飛びに進む道を阻むことにもなりかねません。

かつて経済産業省は、長期的な展望や視野を持たず、HCFCやHFCが過渡的物質であることがわかっていながら、オゾン層保護対策としてCFCからHCFC、HFCへと転換を推奨してきたために、気候変動対策や環境負荷を先送りしたばかりか、現場に対して二重投資を強いてきました。こうした苦い経験を活かさず、再び誤った方向に誘導するような法体系にはすべきではなく、国会にてしっかり長期的視野をもって具体策を法律の中に明示すべきです。

また、「管理の適正化」にあたっては、流通業界にフロン類算定漏えい量の報告義務を課した点などはこれまでに比べて一歩前進と言えますが、フロン類や機器の製造段階からのフロン量を把握するしくみになっておらず、客観的な検証もできません。製造・出荷段階からのフロンの量が用途別などでわかるようにするべきです。

気候ネットワークでは、去る4月4日に「「フロン回収破壊法」の改正に関する提案」を発表しています。ここでの提案もふまえ、今国会での議論を深め、フロン削減に向けた方向性をしっかり明示するとともに、より効果的かつ実効のある法改正を求めます。

以上

プレスリリース本文

「フロン回収破壊法改正案」の閣議決定にあたって~肝まで省令に委ねた法改正案。フロン削減の方向性の明示を~
(2013年4月19日、PDF)

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