日本の京都議定書第1約束期間の目標達成に際して

~これまでの政策を反省し、温暖化対策を抜本的に見直すべき~

2014年4月16日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 15日、環境省は、2012年度の日本の温室効果ガス排出量の確定値をとりまとめ、京都議定書第1約束期間(2008~2012年度)の削減目標を達成し たと発表した。これまで京都議定書の目標達成の必要性を強調し、活動してきた市民として、日本が国際協定を遵守したことを歓迎したい。京都議定書が国内の 様々な温暖化防止の取り組みを後押しし、温暖化対策の議論を加速させてきた意義も大きかった。

 しかし実態は、正味の温室効果ガス総排出量が基準年比で1.4%増加し、そこから日本に第1約束期間の特例として認められた森林等吸収源3.9%、 京都メカニズムに基づく海外クレジット5.9%を総排出量から差し引くことで、辛うじて8.4%削減を達成したというものである。しかも、海外クレジット の中身は経団連自主行動計画における電事連の目標達成分が大半であって国内の実質的な排出削減ではないため、将来もクレジットを購入していく必要がある。 このままでは、IPCC第5次評価報告書が示唆する、産業革命前から2℃未満に抑えるために必要な中長期的な大幅削減への道は開けない。また、京都議定書第2約束期間のもとで国際約束を持たないことから、国や各地域の政策や、さまざまな主体の対策の動機づけが弱まっていることも深刻な問題である。

 日本政府は、一部の産業界の旧態依然とした声に押され、多くの先進諸国が導入し、効果を上げているキャップ・アンド・トレード型排出量取引制度や炭素税な どの実効性ある排出削減策を長年にわたって見送ってきた。再生可能エネルギー固定価格買取制度も長年見送られてきたが、東京電力福島第一原子力発電所事故 を契機として2012年にようやく導入され、その後は再生可能エネルギー導入量が著しく伸びている。原発事故後には、節電が定着しつつあり、機器の更新に よって一層省エネが進むことも証明された。国内のエネルギー収支を見れば、6割が熱として捨てられている現状がある。工場をはじめ、オフィスなどでも省エ ネの可能性も大きく、制度の導入によってもっと大幅に削減することができる。

 温暖化対策の推進に向けて省エネや再生可能エネルギーの大幅導入を進めることは、新たな環境産業を育てる機会でもある。排出量取引制度や炭素税をいち早く 導入した欧州諸国には、この間に温室効果ガス排出量を削減しながら、日本よりも高い経済成長率を達成している国が多数ある。これまで、日本が本気で温暖化 対策の制度の導入に踏み切らなかったことで、新たなグリーンビジネスの芽を摘んでしまった面もあった。今、地域レベルでは、再生可能エネルギー導入によっ て地域活性化を進めようという取り組みが急速に広がっている。政府は、地球温暖化対策で実効性ある政策をとらなかったことによる“失われた20年”を取り 戻すべく、現行のエネルギー・気候変動政策を抜本的に見直さなくてはならない。脱原発と同時に赤信号がともっている気候変動問題の解決の道筋をつくり、 2015年までになさねばならない法的拘束力ある国際合意に貢献するべきである。

 

プレスリリース

日本の京都議定書第1約束期間の目標達成に際して~これまでの政策を反省し、温暖化対策を抜本的に見直すべき~(2014年4月14日、PDF)

 

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