EU、パリ合意に向けて温暖化対策の新目標を発表

~日本は野心的で公平な新目標の早期提出を~

2015年3月9日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

去る6日(現地時間)、EUは、今年末にフランスのパリで開催される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に向けて、2030年までの地球温暖化対策の新目標(約束草案)を正式に国連に提出した。COP19、COP20の合意の結果、3月31日までに提出することが求められていた目標案を、スイスに続いて早期に提出したことは、パリ合意に向けた重要なイニシアティブと言える。

EUは、「1990年比で2030年までに温室効果ガス排出量を少なくとも域内で40%削減するという拘束力ある目標」を掲げ、化石燃料と訣別し、クリーンなエネルギーの未来をめざす意思を国際社会に改めて示した。EU加盟国のデンマークは「電力の再生可能エネルギー100%」をめざし、英国の主要政党のリーダーは石炭発電から脱却することで合意している。それは、脱化石燃料と自然エネルギーへの転換が、危険な気候変動の防止に貢献するとともに、より多くの雇用を生み、持続可能な経済・社会の構築に資するからである。

しかし、EUの責任と能力を鑑みればこの目標は決して十分なものではない。COP21でパリ合意を成功に導くためには、排出削減努力をさらに強化し、途上国への支援についても盛り込む必要がある。

一方、日本政府では、3月31日という期限が意識されないままに2020年以降の目標案の検討が行われており、懸念が大きい。菅官房長官は3月5日午後の記者会見で「提出期限は12月」と述べたが、これは交渉の経緯を無視した、誤った認識だ。先進国であり、世界第 5 位の大排出国である日本の目標案の提出の遅れは、途上国にさらなる行動を促す際の足かせになりかねないことを重く受け止めるべきである。

気候変動問題に取り組む環境NGOのネットワーク”Climate Action Network Japan(CAN-Japan)”による「1990年比で2030年までに40~50%削減」という提言をもとに、日本政府は、意欲的で公平な目標の検討を加速させるべきである。これまでの政府内の検討では、省エネの余地の議論が不十分であり、CO2排出量が大きい石炭火力発電所新増設の問題に切り込めていないなどの課題も多い。脱原発と温暖化対策を両立させる観点から、省エネを深堀し、石炭を含む化石燃料依存から脱却し、再生可能エネルギーに転換するための意欲的な目標案の早期提出が必要である。

 

プレスリリース(印刷用)

EU、パリ合意に向けて温暖化対策の新目標を発表~日本は野心的で公平な新目標の早期提出を~(2015/03/09)

参考リンク

CAN-Japan「2030年に向けた日本の気候目標への提言」

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