日本政府、野心なき削減目標の「日本の約束草案」を決定
?~日本がCOP21パリ合意の成功を危険にさらすのか~

2015年7月17日

特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 本日17日、日本政府は、地球温暖化対策推進本部にて「2020年以降の温暖化対策の国別目標案(約束草案)」を決定した。日本の削減目標は、先月に示された政府案から修正されることなく「2030年までに2013年比で温室効果ガス26%削減」となった。6月3日から1ヶ月間行なわれていたパブリックコメントについては、環境省のWEBにて1,982件ものコメントが寄せられたことが報告されており、その意見としては「公平性・野心度が低く、国際社会における日本の責務を果たせない」「2℃目標に整合しない/2050年80%削減の長期目標と整合しない/2℃目標を明記すべきである」といった意見が多数寄せられているにもかかわらず、この意見に真摯に耳を傾けた形跡もなく、突如として発表されている。

 そもそも、「13年比26%削減」という目標については、1990年比で18%削減に過ぎず、「2050年80%削減」という政府の長期目標にも沿わない、極めて不十分な目標である。削減水準が不十分であるだけでなく、近年で最も排出の多い2013年を基準年にすることで目標を高く見せかけ、「欧米に遜色ない」と主張することは、1990年以来削減を続けてきたEUや、近年削減傾向になっている米国の過去の努力を無視する論理であり、国際社会で通用するものではない。実際、6月上旬に行なわれた気候変動交渉ボン会議では、日本の削減目標案に対して野心が低すぎることを理由に、不名誉な「化石賞」を受賞している。

?そればかりか、国際政治の最重要課題が気候変動となっていて、COP21パリ合意を歴史的成功に導こうとする世界において、日本の存在感はますます低下し、脱炭素化に向かう世界におけるビジネスチャンスも逸すものである。

 各国のINDC(国別削減目標)が出そろう中、2℃目標を達成できる可能性は非常に少なく、さらなる見直しが不可欠とされる。日本が、大幅な削減に向かっていく道筋をたどるために、将来世代に大きなつけをまわすような案ではなく、今の世代がしっかりと責任をもって削減する意志を示すためにも、今回の約束草案を撤回し、気候の安定化と持続可能な社会に向けた希望を持てる削減目標を打ち出すべきである。

参照

日本政府・温暖化対策推進本部

環境省「日本の約束草案」の地球温暖化対策推進本部決定について(お知らせ)

ダウンロード

日本政府、野心なき削減目標の「日本の約束草案」を決定 ~日本がCOP21パリ合意の成功を危険にさらすのか~(2015/7/17)

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