電力業界の「実行計画」「自主的枠組み」ではCO2削減はできない

~政府の政策的対応が急務~

2015年7月17日

特定非営利活動法人気候ネットワーク

 

 本日17日、電気事業連合会加盟10社、電源開発株式会社、日本原子力発電株式会社及び特定規模電気事業者23社は、「電気事業における低炭素社会実行計画」(以下、「実行計画」)を策定し、温室効果ガスの削減に向けた自主的枠組み(以下、「自主的枠組み」)を構築したことを発表した。しかし、「実行計画」「自主的枠組み」ともに気候変動対策としては不十分なものと言わざるを得ず、実効性は期待できない。

 「実行計画」において設定されている0.37kg-CO2/kWhという低い目標は、容認できるものではない。「最大削減ポテンシャルとして約1,100万t-CO2」の削減は、従来型の発電システムとの差であり、現状からの削減ないしは基準年からの削減量でもないため、総量での削減量はまったく明らかにされていない。これでは評価のしようがなく、政府の2030年及び2050年の温室効果ガス削減目標と整合的と言うことはできない。

 さらに、現在47基あると言われる石炭火力発電所の建設計画の扱いや、原発再稼動の見込み、再生可能エネルギーの導入見込みなどの具体的な計画が示されていないため「実行計画」の実現可能性や妥当性が評価できない点や、参加企業間の責任分担が不透明である点も大きな問題である。

 「自主的枠組み」は、上述した電気事業者が構成するもので、販売電力量でのカバー率は99%超とされているが、石炭火力発電所などの建設を計画しながらも自らは小売を行わない発電事業者が対象外となっているため、発電部門の対策としては不十分なものである。さらに、過去をふりかえってみても、電気事業連合会は削減目標を達成することができず、東日本大震災以降にいたっては未達成分を海外クレジットを用いて補填することも放棄している。このような状況のなか、自主的な取り組みに頼っていては十分な対策は期待できないことは明らかであり、0.37kg-CO2/kWhという低い目標ですら達成を保障する担保がない。よって政府は、温室効果ガス削減に向けた政策的な対応を打ち出すことが急務であり、特に石炭火力発電を抑制する政策が必要不可欠である。

 以上の理由から、電力業界は、実効性のある温室効果ガス削減対策を実行するべく、「実行計画」および「自主的枠組み」のあり方を見直すことを求める。

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電力業界の「実行計画」「自主的枠組み」ではCO2削減はできない~政府の政策的対応が急務~(2015/7/17)

 

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