G7サミット環境相会合閉幕

G7首脳は伊勢志摩で気候変動・エネルギーの意欲的な約束を

2016年5月16日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

16日、富山市で開催されていたG7サミット環境相会合は、長期的な温室効果ガス低排出開発戦略を2020年に十分間に合うよう可能な限り早期に作成・提出するとの約束を含むコミュニケを発表し、閉幕した。一部では前進もあったが、成果は乏しいものにとどまった。昨年COP21にて採択され、「地球平均気温上昇を工業化前から1.5~2℃未満に抑えること」をめざす、法的拘束力あるパリ協定の実施を加速するには不十分である。

今回の環境相会合のコミュニケでは、COP21決定によって2020年までに提出することが求められている排出削減の長期戦略について、G7諸国が早期に提出することを打ち出した。昨年のエルマウサミットの首脳宣言には策定時期が示されていなかったが、パリでの決定を踏まえ、時間軸が明示されたことを歓迎する。また、低炭素社会を実現するため、経済システムを変革し、融資、保険、機関投資家、多国間開発銀行など経済・金融システムのグリーン化を進めること、費用効果的に排出削減を進める政策手段としての炭素の価格付け(カーボン・プライシング)に言及した。

コミュニケではパリ協定の早期批准・発効を訴えているが、これは新しいものではない。先月のパリ協定の署名式で、米及びカナダは年内に締結すること、フランスはEU加盟国に今年夏に承認するよう求め、EUとして年内の批准をめざすことを表明している。

また、昨年のG7エルマウサミットの首脳宣言では世界全体として2010年比で2050年までに世界の温室効果ガスを40-70%の上方の削減をめざすとしたが、今回の環境相のコミュニケではパリ協定の1.5℃目標と今世紀後半に排出を実質ゼロにする目標を引用しながらも、2050年までの排出削減数値目標は示されなかった。また、不十分であると評価されている2020年までの排出削減目標や2020年以降の国別目標案(INDC)について、自国が目標を引き上げる意思を示すこともなかった。リスクの高い石炭などの化石燃料や原子力から脱却し、省エネルギーの強化、再生可能エネルギー100%への移行というエネルギーの脱炭素化を2050年までに実現させる決意を示すべきだった。特にCO2排出量が莫大な石炭火力発電所は、たとえ高効率・低排出と呼ばれる技術を採用したとしてもパリ協定の目標には沿わないものであり、規制する方針を示すことが求められていた。本日16日よりドイツのボンで国連気候変動会議が開催され、パリ協定の詳細ルールについて交渉が始まるが、これを後押しする内容にならず、残念である。

今月26、27日には首脳級の伊勢志摩サミットが開催される。議長国である日本は、サミットの最重要議題のひとつである気候変動・エネルギーについて、パリ協定の実施に向けて、今回の環境相会合の結果よりもはるかに意欲的な約束が打ち出せるように準備する必要がある。また、パリ協定批准時期の見通しを示していない日本政府は、これを示し、早急に国内手続きを進める必要がある。

プレスリリース(印刷用)

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