<プレスリリース>

48基中、初めての石炭計画中止

~関西電力、赤穂発電所の石炭への燃料転換計画を事実上断念~

2017年1月31日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

31日、関西電力は、重油・原油を燃料とする火力発電所「赤穂発電所(兵庫県赤穂市、60万kW×2基)」について、石炭へと燃料転換するという計画を見直し、現在のまま運用を継続すると発表した。その理由として、節電・省エネによって電力需要が減ったこと、CO2排出削減の強化が求められていることをあげた。これは、事実上の計画断念である。今回の関西電力の判断は、48基という多数の計画案件の中で、初めての計画中止となる。電力需要の低下及び気候変動対策の要請を理由にした今回の判断を歓迎したい。

当初、赤穂発電所の計画は、2015年度中の着工と、2020年度中の運転開始をめざしていた。既存の重油・原油火力もCO2や大気汚染物質を排出するが、石炭用のボイラーを新たに導入し、稼働率が上がれば、今後数十年もの間、CO2排出が続き、累積する環境汚染は甚大になる。地元住民からは、「なぜ今さら石炭に変えるのか」との批判が高まっていた。また、兵庫県知事は「CO2削減方策について十分説明されているとは言い難い」とし、「石炭に含有される有害物質について調査・予測・評価を行うこと」を求める意見を出しており、着工が遅れていた。市民の省エネ・節電努力と、地域の首長・地元住民・NGOらの声が今回の方針転換を後押ししたと言える。

しかし、これは赤穂発電所特有の問題ではない。日本にはこの他に45基もの石炭新増設計画がある(1基はすでに稼働した)。中でも、関西電力グループは、赤穂の他に、6基もの石炭火力発電所の新増設を計画中である。日本の節電・省エネは年々進み、東日本大震災前から日本の発電電力量はすでに12%低下しており、自然エネルギーの大幅普及も見込まれる。仮に石炭発電所を建設したとしても、投資に見合う事業となるかは極めて不透明な状況である。関西電力は、今回の見直しに続き、他の計画の見直しにも着手すべきである。

また、関西電力は、赤穂の計画断念を理由に原子力発電所の再稼働やリプレースを正当化するようなことはあってはならない。今求められるのは、CO2排出量の多い石炭と、事故等のリスクが高い原発から脱却し、省エネと自然エネルギーによって新しいエネルギーシステムに移行することである。それこそが排出ゼロをめざすパリ協定の時代の要請である。

以上

 

参考情報・ウェブサイト

 

プレスリリース(PDF)

【プレスリリース】48基中、初めての石炭計画中止~関西電力、赤穂発電所の石炭への燃料転換計画を事実上断念~(2017/01/31)