兵庫県高砂市の石炭火力発電所新設計画、当面延期へ

~続々と見直しが迫られる日本の石炭計画。高砂の計画は延期よりも中止にすべき~

 

2017年4月25日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

4月25日、電源開発株式会社(J-POWER)による兵庫県高砂市の石炭火力発電所新設計画に大幅に遅れが生じることがわかった。25日に開催された高砂市建設環境経済常任委員会にて、同市生活環境部が、「環境アセスメント準備書の提出について、J-POWERより口頭で当面延期との報告を受けた」と説明した。高砂市における計画が大幅に遅れる見通しとなったことを歓迎したい。J-POWERは、この計画に対する地元住民の反対や環境影響の懸念の声を真摯に受け止め、計画を即刻中止とすることが求められる。

今回、「当面延期」の判断の詳しい理由は明らかにされなかったが、その背景には省エネの進展による関西圏の電力需要の低下傾向と収益見込みの変化、兵庫県知事による環境影響を懸念する意見、大気汚染の健康被害を懸念した地元住民による反対運動などがあると考えられる。

石炭火力は、たとえ次世代型のIGCCと呼ばれる最新技術でも天然ガス火力の約2倍ものCO2を排出する。J-POWERの計画は、高砂市で60万kWの石炭火力発電所を2基新設するもので、これらが仮に稼働すれば、年間約720万トンものCO2が排出されるおそれがある。高砂市内の温室効果ガス排出量が年間240万トン程度であることを考えても、莫大な排出である。昨年に発効した国際条約「パリ協定」は、世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをめざすものであり、高砂の発電所の計画はこれに逆行するものである。また、石炭火力発電所は、健康被害を招く窒素酸化物、硫黄酸化物、PM2.5や水銀も排出する。

これらの汚染排出を数十年間にわたって固定することになるという懸念もあり、今年1月には、兵庫県赤穂市で関西電力が保有している火力発電所の石炭への燃料転換計画が中止された。3月には千葉県市原市における石炭火力発電所新設計画が中止になった。日本においても、環境大臣が規模の大小にかかわらず石炭火力発電所の建設に懐疑的な見方を示しているなど、石炭計画が続々と見直しが迫られている状況にあることは間違いない。

J-POWERは、気候変動や健康影響の懸念をもつ住民の声を真摯に受け止め、電力需要が低下し続けている現実を直視し、有害であり不要である石炭火力発電所計画を中止するという判断をただちにすべきである。

以上

印刷用プレスリリース(PDF)

プレスリリース「兵庫県高砂市の石炭火力発電所新設計画、当面延期へ ~続々と見直しが迫られる日本の石炭計画。高砂の計画は延期よりも中止にすべき~」(2017/4/25)

 

問合せ

特定非営利活動法人 気候ネットワーク(http://www.kikonet.org)

【東京事務所】〒102-0082 東京都千代田区一番町9-7一番町村上ビル6F
TEL: 03-3263-9210、FAX:03-3263-9463、E-mail:tokyo@kikonet.org

【京都事務所】〒604-8124 京都府京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305
TEL: 075-254-1011、FAX:075-254-1012、E-mail:kyoto@kikonet.org