【2018年1月15日追記】

このプレスリリースは、2017年12月11日に環境省から発表された温室効果ガス排出量データ(速報値)をもとに発表したものです。その後(2018年1月9日)、環境省により、このデータの修正版が発表されました。このため、プレスリリースで引用している数値と環境省の修正版の数値には違いがあります。環境省の修正版のデータは、次のウェブページよりご覧ください。

環境省:2016年度(平成28年度)の温室効果ガス排出量(速報値)の修正について

 

<プレスリリース>

日本の温室効果ガス排出量、3年連続減少

~排出増の工場・発電所・Fガス対策が急務。大転換への舵切りが不可欠~

2017年12月14日

特定非営利活動法人気候ネットワーク

代表 浅岡美恵

プレスリリース本文

 12月11日、環境省は2016年度の温室効果ガス排出量の速報値を発表した。これによれば、日本の2016年度の温室効果ガスの総排出量は13億2200万トン-CO2であり、前年度比で0.2%減(300万トン減)となった。2009年度以降、毎年増加し続けていた日本の排出総量は、原子力発電が停止するなか2014年度に減少傾向に転じ、16年度も辛くも減少傾向を維持した。政府の「2020年度までに2005年度比で3.8%以上削減」との短期目標は、森林吸収分も入れると、3年連続で超過達成したことになる。

 エネルギー起源CO2排出量は、全体として、前年度比で0.5%減少(600万トン減)となった。部門別に見ると、産業部門で1.6%増加(700万トン増)、エネルギー転換部門(発電所等)で7%増加(570万トン増)しているのに対して、業務その他部門で5.2%削減(1190万トン減)、家庭部門で2.8%削減(520万トン減)、運輸部門で0.8%減少(180万トン減)と。業務・家庭等での排出減少分が産業・エネルギー転換の排出増加で一部相殺された形になった。

 その他のガス種では、フロン類4ガス(Fガス)がすべて前年度比で増加した。特に、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)は前年度比で10.3%増加(2005年度比で238.4%増加)と、大きく増加している。これは、気候ネットワーク等の市民団体の提言にも関わらず、事業者が冷媒分野でのHFCの導入を進め、政府もこれを積極的に推進した結果、起こるべくして起こったことでもある。

 パリ協定がめざす脱炭素化に向けて日本の排出削減の傾向を加速させるには、これまでの対策の延長線上ではなく、以下のような対応で、大転換することが不可欠である。

 

1.温室効果ガス削減目標の強化を。

 すでに2020年度目標をすでに超過達成したことで対策の手を緩めるのではなく、むしろその目標の低さを真摯に受け止め、今後の目標を引き上げる必要がある。

 

2.カーボン・プライシングの導入を。

 産業部門とりわけ大規模排出源対策として、キャップ&トレード型排出量取引制度や炭素税の強化等、効果的なカーボン・プライシング施策の導入が求められる。

 

3.Fガスから自然冷媒への転換を。

 Fガス利用を止め、オゾン層破壊も地球温暖化も起こさないノンフロン・自然冷媒への転換を今すぐ行う必要がある。

 

4.石炭火力発電所規制の導入を。

 CO2の巨大な排出源である石炭火力発電所対策も急務である。2012年以降の国内の石炭火力発電所建設計画は、稼働済みのものが4基(50万kW)、計画中のものが42基(2,051.1万kW)ある。すべて稼働すれば、1億2126.6万トン(推計)ものCO2を追加的に排出し、CO2排出係数も大幅に悪化させることになる。そうなれば、業務・家庭・運輸部門で積み上げてきた削減分を相殺してしまうどころか、国全体のCO2排出量も増加に転じる恐れがある。

 

5.「エネルギー基本計画」の大転換に向けた見直しを。

 今後の温室効果ガス大幅削減に向けては、今年度に見直しされる「エネルギー基本計画」において、原発・石炭火力をベースロード電源とするエネルギーミックスの考え方を見直し、省エネ・再エネを重視した脱炭素社会に向けた舵切りが不可欠である。

 

プレスリリース(PDF)

日本の温室効果ガス排出量、3年連続減少 ~排出増の工場・発電所・Fガス対策が急務。大転換への舵切りが不可欠~

 

参考リンク

2016年度(平成28年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について(環境省)

 

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