【2018年5月18日追記】
2018年5月1日、東京都会計管理局長より、「ファンドの仕組みや契約上、現時点での投融資からの撤退は困難である」とする返信が届きました。また、これにより、響灘火力発電所への投融資は2014年9月に実施済みであったことが明らかになりました。
 

<プレスリリース>

東京都の官民連携ファンドが石炭火力に30億円融資

~気候変動対策に逆行 小池都知事は撤回を求めるべき~

2018年3月22日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡 美恵

 

2018年3月20日、東京都は、都が行なっている官民連携インフラファンド事業において石炭・バイオマス混焼発電所に対して30億円を資金供給したと発表した。しかし、2016年に発効したパリ協定に基づき、世界全体での今世紀中の早い段階に脱炭素化することが求められている。とりわけ石炭火力発電は膨大なCO2を排出することから、世界的に脱石炭の潮流があり、明らかにパリ協定に逆行するものである。

今回の投融資は、都が15億円を出資した官民連携インフラファンドの一つである「IDIインフラストラクチャーズ」が、福岡県北九州市の響灘火力発電所に対して総事業費約300億円の1割にあたる30億円を供給したものである。同発電所は石炭とバイオマス(木質ペレット)を混焼する計画で、現在、2019年2月に運転開始に向け、建設工事が行われている。

石炭火力発電は、最新の設備であってもLNGの2倍以上のCO2を排出し、気候変動への影響が大きい。たとえバイオマス混焼の事業であっても、「響灘火力発電所(仮称)建設事業環境影響評価準備書」によれば、年間58.4万トンものCO2を排出する。さらに排出される硫黄酸化物や窒素酸化物、PM2.5などによる大気汚染に伴う健康影響は看過できない問題である。

世界では、気候変動対策の高まりを受け、化石燃料産業への投融資を取りやめる「ダイベストメント」の動きが広がっており、金融機関が相次いで石炭火力発電などの化石燃料関連産業への投融資撤退を発表している。現在、その数は850機関以上、運用資産総額6兆米ドル以上にのぼる。こうした動きは、金融業界にとどまらず、ニューヨーク市のように、ダイベストメントを進める自治体もあり、その動きは加速している。

東京都は、世界初の都市型キャップアンドトレード型排出量取引制度を創設したことで世界的に高い評価を得た(同制度による2016年度実績は前年比12万トン削減であり、響灘火力の年間排出量の5分の1に相当)。また、C40(世界大都市気候先導グループ)にも加盟しており、パリ協定の目標達成に向け世界の都市と連携してイニシアチブを発揮するとしてきた。

ところが、今回の投融資は、オリンピックを控える都の環境政策方針とも矛盾し、脱炭素化へと向かう世界の流れに背くものであり、これまでの功績を貶めることになる。元環境大臣でもある小池知事は、「IDIインフラストラクチャーズ」に対して、石炭火力への投融資撤回を求めるべきである。報道では同ファンドによる投融資案件は今後ないとされているが、同ファンドに限らず、都は、ダイベストメントの方針を打ち出し、脱炭素社会へと歩みを進めるべきである。

 

発表元)東京都報道発表資料:官民連携インフラファンドの投融資案件について

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/20/02.html

 

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【プレスリリース】東京都の官民連携ファンドが石炭火力に30億円融資~気候変動対策に逆行 小池都知事は撤回を求めるべき~(2018/3/22)

 

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