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【意見書】西条発電所1号機リプレース計画 環境影響評価準備書 に対する意見書(2018/5/21)


5月21日、気候ネットワークは、四国電力株式会社による西条発電所1号機リプレース計画における環境影響評価準備書に対する意見書を提出しました。

 

<意見書>

西条発電所1号機リプレース計画 環境影響評価準備書に対する意見書

2018年5月21日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
                         代表 浅岡美恵

 

1. 時代遅れの石炭火力を用いるべきではない

  本事業は既存の1号機の老朽化に伴うリプレースであるが、パリ協定発効以降、脱炭素化の動きが加速しているなかで、とりわけCO2排出量の大きい石炭火力発電が大きな問題となっている。このような世界情勢を鑑みると、石炭を利用し続けることは、時代に逆行する先見性のない選択である。折しも四国電力は、石炭火力事業に力を入れていること等を理由に、複数の公的年金基金より、投資撤退(ダイベストメント)の対象事業者となっている。このことから、化石燃料依存、特に石炭火力に対する風当たりが世界的に強まっており、経営上の大きなリスクであることは、自らが経験しているはずである。

 四国電力は石炭を選択した理由として、国のエネルギー基本計画の中でベースロード電源として位置づけられていることをあげている。しかし、石炭火力発電所からのCO2排出量、大気汚染物質の排出量は膨大であり、地球温暖化対策への悪影響、周辺住民への健康影響を考慮すると「最悪の選択」である。事業そのものを撤回すべきである。安くて環境に悪い燃料ではなく、再生可能エネルギーを用いることを求める。

 

2. 発電規模を拡大する必要性について

 本事業は、老朽火力の置き換え(リプレース)であるとしているが、発電規模は3倍以上に増強されるもので石炭火力の利用を拡大させる計画である(15.6万kWから50万kWに増強)。しかし、日本の電力需要は、長期エネルギー需給見通しにおける拡大予測とは乖離しており、低下もしくは頭打ちの状況にある。また、四国電力は3月30日に「平成30年度供給計画(一般送電事業者分)に基づく四国エリアの電力需給見通しについて」を公表した。その中で、需要見通しは、四国電力管内においても平成29年度の実績見込み値が、需要電力量が年間262億kWh、最大電力517万kWであるのに対し、平成34年度にはそれぞれ257億kWh、501万kW、平成39年度には254億kWh、497万kWと減少する見込みとされている。しかし、4月18日に開催された準備書に関する説明会では、電力需要の質問について「今後、10年間は需要が伸びると予測している」と回答された。一体、どちらが四国電力としての見解なのかお答えいただきたい。

 人口減少や再生可能エネルギーの普及、省エネの進行を加味すると、本事業が開始する2023年以降に大きな電力需要が追加で発生するとは考えにくい。将来的に供給過多となるリスクを内包しており、発電規模の拡大の正当性については、疑問を抱かざるを得ない。発電設備の建設による影響は多岐に及ぶことから、広域的な観点、地球環境への影響を含む視点からの説明が必要不可欠である。また、すでに公表している見通しと矛盾する説明をアセス説明会で行う姿勢は極めて不誠実と思われる。

 

3. パリ協定で合意された「脱炭素化」の動きに反する

 パリ協定において合意された、産業革命前からの気温上昇を1.5~2度未満に抑えるという目標を達成するためには、各国が現在の2030年の削減目標をさらに高めることが求められている。このことから、国の2030年目標を達成、あるいは目指しさえすれば石炭火力の新設が認められるというものではないことを考慮すべきである。また、新設1号機の年間CO2排出量は246万tとなり、一般家庭49万世帯分の年間CO2排出量に相当する。排出割合が大きく、多方面へ影響を与える電力部門においては低炭素化、脱炭素化が急務であるということを事業者は強く認識する必要がある。
現在、日本各地で石炭火力発電所の新増設計画が大小50基も進められている。これらが全て稼働、老朽火力の一定の廃止を含めた環境省の試算によると、日本の2030年の温室効果ガス削減目標を約6,800万トン超過するとされている。2030年の削減目標を達成することが困難な状況にある。

 中川雅治環境大臣は、世界の「脱石炭」の流れを受けて、各地で新増設計画を進める事業者に対して事業の再検討を要請している。事業者は環境大臣の指摘を踏まえ、ただちに事業を再検討し、中止を決断直ちに実施すべきである。

 

4. 電力業界が策定した「実行計画」との整合性が取れない

 四国電力を含む電力業界の自主的枠組みである「電気事業低炭素社会協議会」の「実行計画」では、2030年度に「排出係数0.37kg-CO2/kWh」を達成することを目指しているところである。本事業では1号機新設後、西条発電所全体で「排出係数0.781 kg-CO2/kWh」となるとされている。これは極めて高炭素な電源であり、目標達成への悪影響が強く懸念される。四国電力は「協議会に参加し取組を着実にすすめていることから、国の目標・計画との整合性は取れている」との説明があった。しかし、環境省がとりまとめた「電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果」(電力レビュー)においては、「電力業界の自主的枠組である「電気事業低炭素社会協議会」は、今年度初めて、会員企業の取組状況の評価を実施。この評価は、1年間の取組を各社が自らチェックしたことを協議会として確認したもの。定量的な目標設定を始め、具体的な評価基準を明確にしなければ、自主的枠組みの実効性には疑問」(協議会が業界全体の目標達成に向かっているかを評価する、という意味でのPDCAサイクルになっているとは必ずしも言えない)などと、自主的枠組みの実効性に大きな疑問が呈されている。目標達成へ向けた道筋が具体化されていない状況で、協議会に参加していることを理由に事業の社会的正当性を訴えるには不十分である。四国電力は、協議会に参加する事業者として目標達成へ向けた責任ある説明を行う必要がある。

 また、4/18に行われた事業者主催の住民説明会において、「伊方原発3号機の再稼働が必須」であるとも述べた。しかし、同原発については計画時から幾度にもわたって住民側から訴訟が提起されている。現在も、複数の地域において稼働差し止めを求める訴訟が提起されており、国民的理解が得られていない。ひとたび事故が発生すれば、人命・環境に重大な影響があることは言うまでもない。排出係数の低減に原発を据えること自体に極めて大きな問題があり、原子力に依存しない低減策が示されなければならないと考える。

 

5. 最新鋭の大気汚染除去装置が導入されていない

 石炭火力発電所は、大気環境への影響が大きな火力発電である。大気汚染や健康リスク、温暖化対策コストなどの外部費用を含まない見かけ上のコスト安による石炭利用の推進は、事業者の事業性メリットの最大化でしかなく、「最悪の発電方法」である。例えば、再生可能エネルギーであれば、大気汚染物質の排出はほぼゼロである。LNG火力発電所であれば、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、ばいじん、水銀については、石炭火力と比べて極めて低減されるか、もしくは排出がない。環境負荷の低い発電方法があるにも関わらず検討を怠っている。さらに、2023年運低開始である本事業のばい煙処理装置は、横浜市で2009年から運転している磯子火力発電所新2号機(石炭)と比較しても、SOxやNOxの排出濃度が高いことから、石炭火力の中でも最新鋭の大気汚染除去装置を導入しているとは言えない。少なくとも磯子新2号機以上の水準でなければ、最新鋭とは呼べない。磯子新2号機以上の環境対策を導入すべきである。

 

6. 海水温上昇による生態系への影響の評価が不十分である

 準備書において温排水の拡散、海水温上昇のシミュレーションは行っているが、それによる生態系への影響については定量的な評価がない。本事業によって温水拡散面積が1.3倍に増えるにも関わらず、周辺海域に及ぼす影響は少ないと判断することは根拠が不十分である。また、準備書において「現状と比べて改善させる」ことを環境影響が少ないことの根拠とするような記述があるが、発電所が立地したことによる環境影響からも考慮すべきである。なぜなら現状(既設稼働)により海洋生物へ影響を与えている可能性もあり、「現状と比べてどうか」という比較だけでは不十分である。海水温が上昇すれば、赤潮や青潮が発生するなど、漁業へ影響が出る可能性があり、平面シュミュレーションだけでなく、生態影響を考慮した3次元シミュレーションなどを用いて評価をすることが必須である。

 

7. 発生する石炭灰の受け入れ先が確保できない可能性がある

 四国電力は、石炭灰(ばいじんおよび燃え殻)は現状と同様にセメント原料等としてほぼ全量(99%)を有効利用するとしている。しかし、現在各地で発生する石炭灰はセメント工場だけでは受け入れきれず、大量の石炭灰の処理先がない状況であり、本当に99%を有効利用できるのか疑問が残る。韓国などに石炭灰を販売することで現地の環境破壊を引き起こしていることや、下水道工事などの際に埋めて処分しているなどの現状があり、計画の整合性がないと言わざるを得ない。

 

8. 情報公開に制限を設けるべきではない

 環境アセスメント手続きでのアセス図書の縦覧について、「環境影響評価法等に基づき、定められた期間実施している」との事業者の見解が示されているが、それは法で定められたものであり、当然実施すべきことである。環境アセスメントにおいては、環境影響を正確に把握する上でも、情報公開が極めて重要である。それにも関わらず、「事業者のノウハウが含まれている」ことを理由にアセス図書の印刷を制限し、「あらまし」のみを閲覧可能とするだけでは、情報公開に消極的と言わざるを得ない。事後も公開される「あらまし」では十分な情報は得らないことから改善を強く求める。

 環境省は2018年3月に、環境アセスメントに関する図書を縦覧期間終了後も環境省のウェブサイトなどに掲載することについて事業者の協力を求めるとしており、四国電力は公開に協力するべきである。

 

9. 設備利用率について
 現役の1号機は設備利用率が84%であるが、CO2の排出量を予測した準備書においては、設備稼働率を75%に設定している。設備利用率を意図的に低くしてCO2排出量を低く見せているとの誤解を招きかねず、現状の稼働率よりも低く設定した理由を明確に示すべきである。

 

10. 再生可能エネルギーの急成長を受けて
 2016年5月4日の九州電力の事例などに見られるように、接続制限値を超えるほど再生可能エネルギーが成長してきており、それは四国電力管内でも同様である。このような状況では、調整能力に優れたLNG火力の方が石炭火力よりも使い勝手が良い。現在の石炭火力や原発に偏った設備構成では調整能力が低く、設備利用率が下がって採算割れを起こす危険性が高いと考える。

 

11. 既存設備の休廃止の具体的なスケジュールを示すべきである
 事業の必要性がある場合は、少なくとも四国電力管内における既存設備の休廃止の具体的なスケジュールを示すなど、国の温暖化対策との整合性が十分に確保されなければならないと考える。

 

12. 大気汚染物質の排出量の総量を示すべきである
 既設発電設備より大気への影響も低減するという説明であるが、大気汚染物質の評価については、総量も説明されるべきである。想定される設備稼働率を複数おき、大気汚染物質の排出量が年間でどのようになるのかも示すべきである。濃度基準を守るのは法で定められたもので、当然守られるべきものであり、排出される総量との比較をもってして、「低減」とされなければならないと考える。

 

意見書(PDF)

【意見書】西条発電所1号機リプレース計画 環境影響評価準備書 に対する意見書(2018/5/21)

参考

西条発電所1号機リプレース計画 環境影響評価準備書の公表について

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