プレスリリース

住友商事が仙台の石炭火力発電所計画をバイオマス専焼に変更

~石炭計画の中止を歓迎。国内石炭火力発電所新設計画1基中止で全35基に~

2018年6月1日
特定非営利活動法人 気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

本日6月1日、住友商事株式会社は、宮城県仙台市仙台塩釜港で計画中の石炭バイオマス混焼発電事業について、石炭を燃料とする計画であったものを、バイオマス専焼発電事業に切り替えて検討することを決定したと発表した。これにより、2012年以降に把握された日本国内の石炭火力発電所建設計画50基のうち、7基が中止・燃料変更となった(50基中、8基は稼働中、35基は建設中もしくは計画中。2018年6月1日現在)。

本事業計画は、四国電力と住友商事による共同事業として計画され、仙台市環境影響評価条例に基づく環境アセスメントに基づき方法書を公表していたものの、本年4月10日、四国電力が事業からの撤退を表明し、住友商事が単独で検討を進めることになっていた計画である。

住友商事は、燃料を石炭からバイオマスに変更した理由として、「(2017年8月の)方法書に対する市長意見」および「2017年12月に発表された新規石炭火力発電所の立地抑制に関する仙台市の指導方法である『杜の都・仙台のきれいな空気と水を守るための指導方針』」を考慮して、木質バイオマス専焼の可能性を模索してきたところ、持続的な燃料の調達についての可能性が見えてきたことなどを理由にあげている。

これまで、本事業計画に対しては、地元の「仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会」や気候ネットワークなどが中心となって、事業者、自治体、市議会に対して中止を求め、地道に粘り強く働きかけてきた。大気汚染、隣接地域に存在する蒲生干潟への影響、気候変動への影響などの観点から市民が訴えてきた脱石炭の活動が功を奏したものである。石炭を燃料とすることをやめた住友商事の判断を歓迎したい。仮にこの計画が実現すれば、年間60万トン(一般家庭12万世帯のCO2排出に相当)以上のCO2排出が増加するおそれがあると推計されていた。計画変更によって、かかる膨大なCO2排出増加を未然に防げたことは、パリ協定の実現を求める市民運動の勝利といえる。他の石炭火力発電の新設計画を進めている事業者も、住友商事に続き、計画を見直し、中止すべきである。

ただし、木質バイオマス燃料を用いた火力発電については、環境・持続可能性の観点から様々な課題もある。今回の計画についても、バイオマスの調達先などが明らかにされておらず、その方法によっては甚大な環境負荷を発生させる恐れがあること、バイオマス火力発電としては大規模なこと、CO2排出量の情報が石炭混焼計画時から更新されていないこと、大気汚染物質の排出も少なくないことなどいくつかの懸念点が残る。今後、事業者のさらなる対応として環境影響評価の情報を積極的に開示し、地元住民や環境NGOを含む市民との環境コミュニケーションを図ることに期待したい。

以上

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【プレスリリース】住友商事が仙台の石炭火力発電所計画をバイオマス専焼に変更 ~石炭計画の中止を歓迎。国内石炭火力発電所新設計画1基中止で全35基に~(2018/6/1)