【要請書】

30の市民団体、大阪ガス社長に山口県宇部市の石炭火力発電所新設計画からの撤退を要請

2018年6月22日

6月22日、気候ネットワークは、29の市民団体と共同で、大阪ガス株式会社が関与する石炭火力発電所「西沖の山発電所(仮称)」新設計画からの撤退を要請する手紙を、大阪ガス株式会社本荘武宏社長宛に送付しました。

 

大阪ガス株式会社
代表取締役社長 本荘武宏殿

西沖の山発電所(仮称)の事業撤退を求める要請書

2018年6月22日

 

拝啓

 

 時下、貴社におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 誠に恐縮ではございますが、貴社の今後の事業展開についてぜひご一考いただきたく、筆をとった次第です。

 私どもは、気候変動や大気汚染公害などの環境問題や消費者問題の解決のために活動する市民団体です。近年、国内で急増する石炭火力発電所建設計画について気候変動や大気汚染及び健康被害、消費者保護の観点から大きな懸念を持っております。

 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故を経て、2012年以降に発表された50基の計画のうちの一つが、貴社と電源開発株式会社及び宇部興産株式会社が関与する山口宇部パワー株式会社による「西沖の山発電所(仮称)」(山口県宇部市)です。この計画をめぐっては、年間で一般家庭144万世帯相当*という膨大なCO2を排出し、気候変動の大きな原因になること、硫黄酸化物、窒素酸化物、PM2.5、水銀等による大気汚染とこれに伴う健康被害につながること、計画地周辺の自然生態系へ悪影響を与えかねないこと、電力会社のCO2排出係数を改善するため原発推進の動機づけになることなどを理由に、反対の声が上がっています。

 電力小売全面自由化以降、原子力発電でも石炭火力発電でもない、再生可能エネルギー中心の電力会社を選ぶことを呼びかける消費者運動も広がっています。また、吹田市が「吹田市電力の調達に係る環境配慮方針」を策定するなど、自治体や事業所においても、再生可能エネルギー中心の電力会社を選択しようという流れが始まっています。直近では、河野外務大臣が、外務省として再生可能エネルギー100%をめざして検討を始めると発表し、環境大臣もこれに続きました。

 石炭火力発電は、たとえ次世代型の最新技術を用いたとしても平均的なガス火力発電所の2倍という膨大なCO2を排出します。仮に木質バイオマスを混焼したとしてもその排出量が他の発電方法と比べて莫大であることには変わりありません。今や、石炭火力のあり方そのものが、国、地域、企業のあらゆるレベルで問われているのです。

 貴社はガスが石炭や石油に比べてクリーンであると宣伝しておられます。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮した経営のため、天然ガスへの転換や再生可能エネルギーの導入によってCO2排出削減に取り組むと対外的にアピールされています。それにもかかわらず、名古屋発電所、名古屋第二発電所に続き、最も汚染度の高い化石燃料である石炭を燃料とする火力発電所の新増設に関与されることは、環境保全の観点からも、貴社のブランドに深刻な矛盾が生ずるという点からも、極めて残念という他ありません。さらに、パリ協定と持続可能な開発目標(SDGs)が合意され、脱炭素化の国際潮流がある中においては、新たな排出規制によって化石燃料インフラ、とりわけ排出量の多い石炭インフラが座礁資産となるリスク、機関投資家からの投融資が引き上げられるダイベストメントのリスクもはらむことになります。

 貴殿は、貴社のウェブサイトにおいて「グループ全体のCSR水準を一層高めることでESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮したグローバル基準の経営」をめざすとおっしゃっています。このメッセージに沿って、今こそ脱石炭へと方針を転換されるべきときです。貴社が、石炭火力発電の問題点を踏まえ、「西沖の山発電所(仮称)」の計画から撤退されることで、「ESG(環境・社会・ガバナンス)に配慮したグローバル基準の経営」に向けて前進されることを心から願っております。

敬具

*マサチューセッツ工科大が2007年に発表したレポートに基づいて、設備容量から概算し推定した年間CO2排出量720万トンを、日本の家庭1世帯あたり年間CO2排出量約5トンで除した数.

 

市民団体 30団体(賛同順)

  1. 気候ネットワーク
  2. 大阪公害患者の会連合会
  3. 西淀川公害患者と家族の会
  4. 神戸の石炭火力発電を考える会
  5. ひょうごECOクラブ
  6. 石炭火力発電所問題を考える市民ネットワーク
  7. 公害地域再生センター(あおぞら財団)
  8. 地球環境市民会議(CASA)
  9. 神鋼石炭火力公害問題灘区連絡会
  10. 350.org Japan
  11. 地球救出アクション97
  12. 京都・水と緑をまもる連絡会
  13. サークルおてんとさん
  14. 石炭火力を考える東京湾の会
  15. 蘇我石炭火力発電所計画を考える会
  16. 石炭火力を考える市原の会
  17. 袖ヶ浦市民が望む政策研究会
  18. 横須賀石炭火力発電所建設について考える会
  19. 国際環境NGO FoE Japan
  20. 足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ
  21. 東アジア環境情報発伝所
  22. 再エネ工房
  23. 仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会
  24. 環境市民
  25. 国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
  26. きょうとグリーンファンド
  27. Climate Youth Japan
  28. 市民電力連絡会
  29. 国際青年環境NGO A SEED JAPAN
  30. パワーシフト・キャンペーン運営委員会

 

 

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