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【声明】日常化する異常気象:改めて「第5次エネルギー基本計画」の欠陥を問う〜気候変動を直視し、脱石炭・再生可能エネルギーへの転換に舵を切ろう(2018/7/24)


声明

日常化する異常気象:改めて「第5次エネルギー基本計画」の欠陥を問う

気候変動を直視し、脱石炭・再生可能エネルギーへの転換に舵を切ろう

2018年7月24日
代表 浅岡美恵

もはや、誰もが気候の異変に気付いている。直近でも、西日本の歴史的豪雨災害は200人を超える犠牲をもたらし、生活及び産業の基盤が破壊された。連日の40℃に達するような酷暑により、多くの人々の健康が危険にさらされている。とりわけ高齢者や子どもたちなど気候変動の影響に脆弱な人々の生命や健康はすでに深刻に脅かされ、失われている。温暖化は環境問題の範疇を超え、人命や健康をいかに守るかという基本的人権の問題となっている。

私たちは、現下の災害、熱中症への罹患等の被害を直視し、被災者へ多層の支援はもとより、災害防止の教訓を得て次に備えることはいうまでもないが、ここで改めて、パリ協定と整合しないエネルギー政策はありえないことを確認したい。本気で再生可能エネルギーへの転換に舵を切らなければならない。

エネルギー基本計画の重大な欠陥

台風6号が九州を中心に猛威をふるうさなかの7月3日、第5次エネルギー基本計画が閣議決定され、3週間が経過した。その策定過程で、私たちは、これまでの我が国のエネルギー政策が、気候変動を正面からとらえ、パリ協定が目指す脱炭素への真摯な取組み及び意思が欠落していることを、繰り返し指摘してきた。しかしながら、第5次計画は、石炭火力と原子力を重要なベースロード電源と位置づけた2014年の第4次エネルギー基本計画をそのまま引き継ぎ、パリ協定の採択前の2015年7月に経済産業省が定めた長期エネルギー需給見通しにいう2030年の電源構成(エネルギーミックス)を盛り込み、「その確実な実現に全力を挙げる」(3頁)とし、2050年に向けては不確実性を強調して選択を先送りした。その中核に、およそ現実性のない原子力への仮想的願望への固執があることは自明である。

このエネルギーミックスはパリ協定採択前の日本の排出削減目標(2030年までに2013年比で26%削減)の約束草案(INDC)の基礎となったものであり、パリ協定採択後、これが日本の正式な削減目標として国連に提出されている。パリ協定の下で、2020年までに2030年削減目標の引き上げと長期低排出発展戦略の提出が求められているが、本閣議決定は、それらへの消極性の布石でもある。

そもそも、今次計画は「電力供給においては、安定供給、低コスト、環境適合等をバランスよく実現できる供給構造を実現」することを政策の基本的な方向とするというもので、ここに、およそ、脱炭素への大転換を目的とするパリ協定の位置付けを見出すことができない。この点だけでも、今次計画には重大な欠陥がある。

気候変動の現実を直視し、脱炭素への取り組みを

気候変動は既に現実の社会・経済・産業・生活の脅威となっている。そのことを直視し、その影響の最小化を図ることは、すべての人々及び事業者の持続可能性に不可欠であるからこそ、パリ協定の採択、早期発効が導かれてきた。今次計画でも「気候システムの温暖化について疑う余地がない」とのIPCC報告に触れ、国内排出削減の必要性を否定するものではないものの(6頁)、全体を通して、対策の緊急性、緊迫性はうかがわれない。国や事業者の「時間軸を設定したエネルギー転換・脱炭素シナリオ」が今後の国際競争力を左右するとの認識はあるようだが(9頁)、今次計画には国としての「変革の意思」と「変革に対する前向きの模索」はみられない。

脱石炭・再エネ拡大への新たな一歩を踏み出そう

何よりもまず取り組むべきは、パリ協定に逆行する石炭火力発電所の新増設計画の中止及び既設の石炭火力発電所の閉鎖である。今次計画で電源構成に占める石炭火発の割合は東日本大震災前の水準よりも高い。また、東日本大震災以降、浮かび上がった石炭火力の新増設計画は、気候ネットワークの調査では50基にも及ぶ(うち計画中止7基、運転開始8基、計画中35基)。

そもそも、高効率・次世代の技術を用いたとしてもすでに商業運転中の平均的な天然ガス火力発電の2倍ものCO2を排出する石炭火発の問題は改めて指摘するまでもない。国内外からの批判を受け、今次計画における石炭についての記述はパブリックコメント実施時の案から若干、修文され、ベースロード電源とした石炭火力についても出力調整の必要性が高まるとの認識が書き入れられたものの、非効率石炭のフェードアウトに言及するのみで、高効率化・次世代化の推進方針は変わらない。混迷というほかない。石炭火力発電所に環境適合性などありえない。世界が石炭火力からの脱却をめざし、すでに実現しつつある国もあるなか、国として、脱石炭への「転換の意思」が問われている。

再生可能エネルギーについても、今次計画の記述は錯綜し、混迷している。他国の現状の水準にも劣る割合(22~24%)を2030年目標に据え置き、その主力電源化を図るとするものの、具体的な推進策はない。2030年まで「確実な主力電源化への布石としての取組みを早期に進める」(17頁)というにとどまり、2050年に向けては「経済的に自立し脱炭素化した主力電源を目指す。」(99頁)という新たなハードルを設定した。しかも、現行の系統運用ルールのもとで原子力と石炭をベースロード電源とすることは、再エネの送電網への接続が制約されることを意味し、2030年の電源比率の実現さえも危ぶまれる現状にある。実際、計画の政策の基本的方向には、変動性再エネ(太陽光・風力)の位置づけはない(17頁)。再エネ拡大のための当面の課題は系統への接続問題である。その解決においても、化石燃料から再生可能エネルギーへの明確な「転換の意思」が問われる。

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パリ協定に定める排出ゼロへの道筋においても、気候変動は今後も進行し、より広範な危険が増大・深刻化することはIPCCの警告に示されている。早かれ遅かれ、すべての人がその深刻な影響・被害から逃れられなくなる。そうした時代にあって、脱炭素への本気の対応なくして、我が国経済の前途も危ういとの認識は、既に国内でも金融機関・投資家の投融資における変化や企業・自治体による「気候変動イニシアティブ」の発足などに現れている。今次計画の閣議決定をもって旧来型の政策を固定化させてはならず、パリ協定と整合するエネルギー基本計画への改定に向けての出発点とすべきである。

 

以上

 

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