海での温暖化現象:グレートバリアリーフの危機を救え

東京事務所の鈴木です。

2016年に、世界遺産グレートバリアリーフのサンゴ礁の白化現象が大きな話題となりました。その後も、毎年夏になると海水温の上昇などによるサンゴ礁の被害が報道されています。引き続き危機的状況にあることが調査研究によって明らかとなっています。

グレートバリアリーフの被害状況:最新の調査から

2016年はサンゴ礁群の約3割が死滅

世界的なサンゴの白化現象は、1998年と2002年にも発生していましたが、2016年の被害が突出していました。2018年4月に科学誌natureに掲載された論文には、2016年の記録的な熱波が、これまで考えられていたより広範囲に及んでいると述べられています。2016年にかつてないほどの壊滅的被害を受けたグレートバリアリーフのサンゴの白化現象は、リーフに生息していた3,863ものサンゴ礁群の29%を死滅させました。サンゴ礁の回復には時間がかかりますし、熱帯の海の生態系にどのような影響をもたらすかが懸念されています。

世界気象機関(WMO)によれば、人間による化石燃料燃焼・CO2排出等の影響で、2016年の地球平均気温は、産業革命前と比べて1.1℃高かったそうです。さらに温暖化が進み、地球の温度が2℃以上上昇した場合、熱帯の海が海洋生物を育む力が損なわれ、結果として海洋全体の生態系に大きな影響をもたらすと警告を発している研究者は少なくありません。

オーストラリアのジェームズ・クック大学(James Cook University)を拠点とするサンゴ礁研究センターのTerry Hyghes所長は、「グレートバリアリーフでは2016年3~11月の9カ月間で約30%のサンゴが死滅した」と発表しています。Hyghes氏の研究チームは、2016年に海水温が上昇してサンゴに共生する褐虫藻が抜け出してしまい、サンゴが白化する現象が観察された後、人工衛星を使って2,300キロにおよぶグレートバリアリーフの被害状況を観測しました。上空からの観測により、2016年の3月から4月の間に白化現象が広域で生じていることがわかりました。

熱波による白化現象が、サンゴの大量死につながった

また、同チームは高温による被害の詳細を見るため、同年3月と4月、さらに8ヶ月後により広範囲な海中調査も行いました。その結果、特に海水温が高かった北部での被害が大きく、約3分の1が熱波襲来から間もなく死滅。他の海域では、褐虫藻に去られたサンゴがゆっくりと死滅していたこと、サンゴの中でも枝状やテーブル状など複雑な形を形成する比較的成長の早い種の被害がひどかったことなどがわかったのです。研究チームは、熱波による白化現象が、サンゴの大量死につながったと結論付けています。

サンゴの大量死は、多様性に富んだサンゴ礁を劇的に変化させました。現在、海水温の上昇を耐え抜いたサンゴが生き残っています。多くの種が失われ、サンゴ自体の多様性が乏しくなってしまっただけでなく、そこに生息する海洋生物に多大な影響を与えているのです。

サンゴ礁の未来

グレートバリアリーフ以外の海域のサンゴ礁が同じような惨状に陥るか、海水温の上昇に適応して生き残るかは、わかりません。サンゴの適応力は固有種の生活史や熱耐性、生息する環境によって異なるからです。地球温暖化は明らかにサンゴ礁にとって「ストレス」ですが、新しい環境に順応しているサンゴがいることも立証されつつあります。一方で、海水温が極端に上昇する頻度はかつてより高くなっているだけでなく、海洋の酸性化や海面上昇といった別のストレスもサンゴの生息・回復に影響をおよぼしています。

リーフの約3分の1が白化してしまったほどの2016年に白化を免れたサンゴはわずか10%にも届きませんでした。以前の海水温上昇時に生じた大規模白化での際に40%以上が免れたのと比べても被害の大きさが明らかです。それでも、生き残ったサンゴは温度耐性が高いなど、死滅した種に比べて温暖化に強い種であるとも言えます。残ったサンゴを早急に保護し、サンゴ礁の回復を図らなければなりません。

グレートバリアリーフは、熱帯サンゴ礁での温暖化被害の象徴にすぎません。その他のさまざまな海域のサンゴは、表面的に見えない水中下で、じわじわと、しかし着実に温暖化の脅威にさらされています。だんだんと上昇する海水温からサンゴ礁を守り、最大限回復させるためには、温暖化を抑制するべく、温室効果ガスの削減に取り組むといった統括的な管理と、サンゴの植付による再生の促進のような地域の管理の両方が不可欠です。

オーストラリア政府の取り組み

最後に、オーストラリア政府のグレートバリアリーフ保護の取り組みを紹介しておきます。研究結果を受け、2018年4月28日、オーストラリア政府は、気候変動の影響からグレートバリアリーフを守るために新たに5億豪ドル(約413億円)を拠出すると発表しました。この予算案はグレートバリアリーフの保護に対する支出としては過去最大です。その後の5月9日、情報サイトCNETが、オーストラリア政府の2018年度予算にグレートバリアリーフ研究基金(GBRRF)への4億4380万豪ドルと、グレートバリアリーフ海洋公園局(GBRMPA)への5600万豪ドルが割り振られたと報じています、この資金は、白化現象への対策とともに、サンゴを食い荒らすオニヒトデへの対策も含めたグレートバリアリーフの保護活動に使われます。貴重な生態系であり、ユネスコの世界自然遺産でもあり、観光資源でもあるグレートバリアリーフがオーストラリアにもたらす経済効果を考えれば、まだ少ないのかもしれませんが、これでサンゴの研究・保護・再生が進むことを期待します。

しかし、局地的な保護活動を行ったとしても、地球全体で温暖化が進めば、根本的な解決にはならないのではないでしょうか。現在、各国政府が掲げる温室効果ガス排出削減目標がすべて達成されたとしても、今世紀末までの平均気温上昇は3℃ほどになってしまうと言われています。繰り返しになりますが、サンゴという種の多様性を次世代に伝えるためには、サンゴの適応策だけでなく、温室効果ガスの大幅削減が必要でしょう。

東京電力福島第一原発事故の現状と問われる「環境正義」

京都事務所の有木です。

5月19日、第5次エネルギー基本計画(案)が公示されました。

第5次計画では従来の路線から大きく変更することはなく、福島第一原発の事故が無かったかのように原発推進政策を継続させています。

エネルギー基本計画改定の時期を迎えている今、福島原発事故がもたらした被害の現状を共有し、原発が抱える問題点を再提起したいと思います。

避難指示が解除された区域でも帰還が進んでいない

2017年3月31日および4月1日、福島県の飯舘村や富岡町などで避難指示が解除されました。これにより事故直後に11市町村、約8万人に出されていた避難指示は、対象区域の約7割が解除されました。

しかし、解除がされてから1年ほどが経過した今でも、多くの地域で避難が進んでいません。その理由の一つは、政府が設定した「年間積算線量20ミリシーベルト」という避難の基準が高すぎることです。ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に基づく公衆の被ばく限度は「年間1ミリシーベルト」であり、多くの避難者が健康への影響などを鑑みて地元に帰還することをためらっています。政府は住民の理解が得られないまま、一方的に避難解除を進めており、それを理由に「被災者支援」の負担を減らそうとしています。

「放射線量が減少し、避難指定区域も7割が解除された。地元の復興が確実に進んでいる。」という見方は表面的なものです。実際には事故から7年が経った今でも多くの被災者が事故の被害に苦しんでいます。

避難の現状

避難者には避難指示区域に住んでいた人々はもちろん、それ以外の地域から自主的に避難した人々も含まれます。これらの人々は避難の長期化により心身への負担が大きくなっています。周辺に理解者がいない、相談できる相手がいないなどの悲痛な声が多く聞かれます。生きがいがなくなり、狭い仮設住宅でじっとしている高齢者もいます。子供に対するいじめも深刻になっています。パート・アルバイトなどの非正規雇用や無職の割合も多く、経済的に追い詰められているケースも少なくありません。

2017年3月に自主避難者約2万6千人への住宅提供が打ち切られましたが、福島県外ではその78%の人々が避難継続を選択しました。支援の減少と避難の長期化により、避難者への負担は今後も増え続けることが予想されます。

私達に問われる「環境正義(Environmental  Justice)」

東京電力福島第一原発でつくられていた電気は首都圏に送電されていました。つまり、電気を供給する場所と使用する場所が違っていました。東京電力管内に住む人々が福島に原発事故のリスクを押し付けていたと言うことができるでしょう。

この「利益を享受する場所」と「負担・被害が生じる場所」が異なるという構図は気候変動の問題でも同様です。

日本が保有している石炭火力発電所は大量のCO2を排出し、温暖化を進行させていますが、その被害を最も深刻に受けているのは太平洋の島国をはじめとする途上国です(当然、石炭火力が立地している周辺地域も大気汚染などの被害を受けます)。

これらの島国では海面上昇によって沿岸部に住む人々が避難を余儀なくされるなど、既に深刻な被害が発生しています。それにも関わらず日本政府は石炭火力の建設を国内外で積極的に進めており、2012年以降だけでも50基の新設計画が存在しています。

これらの現状から見えてくるのは、現政権の圧倒的な倫理観・正義感の欠如ではないでしょうか。「モリカケ問題」やセクハラに対する発言などにもそれが象徴されているように思えます。沖縄に負担を押し付けている米軍基地の問題も同様です。このような倫理観・正義感の欠如した政権に子ども達の未来が託されているかと思うと、危機感すら覚えます。

「環境正義(Environmental Justice)」という言葉があります。これは環境に対する利益と負担の不公平な配分を是正し、すべての人に良好な環境を享受する権利の保証を求める理念です。温暖化問題については「気候正義(Climate Justice)」という概念になります。

特定の地域に事故のリスクを押し付けている現状の原子力政策は、利益と負担を公平に配分しているとは言えません。「環境正義」に従って正しいエネルギー政策を日本政府がとることを切に願います。

マレーシアの子どもたち、低炭素社会に向けた取り組み

こんにちは。京都事務所のアシュリーです。3月に訪問したマレーシアの小学校の子どもたちの取り組みについて紹介します。

マレーシア・イスカンダル地域、低炭素社会への取り組み

2005年から京都市で始まった温暖化防止教育「こどもエコライフチャレンジ」は、他地域にも取り組みを広げており、2013年からはマレーシアのイスカンダル開発地域でも実施されています。

イスカンダル開発地域は、低炭素社会づくりに熱心に取り組んでいる地域で、マレーシア版こどもエコライフチャレンジもその取り組みのひとつです。このマレーシア版こどもエコライフチャレンジは、京都のこどもエコライフチャレンジをもとに、そこにマレーシアらしいアレンジを加えたものになっています。

マレーシア版こどもエコライフチャレンジとは?

マレーシア版こどもエコライフチャレンジは、子どもたちが低炭素社会について理解を深め、炭素排出量の削減にチャレンジするという目的のもとデザインされました。

子どもたちは、エコライフチャレンジとして次の3つの活動に取り組みます。

  1. グループでワークブックに取り組む
  2. 小学校内で電気代・水道代削減キャンペーンを行う
  3. リサイクル品収集キャンペーンを行う

この3つの活動の成果はマレーシア工科大学(プログラムのコーディネーター)に送られ総合的に評価されます。それをもとに上位15校が選ばれ、最終発表会が行われます。

発表会では、子どもたちがエコライフチャレンジで学んだこと、そして自分たちの地域を低炭素社会にするために自分たちには何ができるかについて発表し、優秀校が選ばれます。

電気代・水道代削減とリサイクル品収集キャンペーンや最終発表会は、具体的な数字を使って競争する要素を加えたマレーシア版のオリジナルな部分です。

2016年からは、これに加え、学習したことを定着・継続させていくための振り返り学習会をパイロット校で行う試みが始まりました。振り返り学習会は、子どもたちがそれまでに取り組んだエコライフを振り返り、今後の目標を決めて発表するというグループワーク。これからより多くの学校でこの取り組みが実施されるよう期待されています。

その他にどんな取り組みをしているの?

今回、エコライフに熱心に取り組む2つの小学校を訪問しました。それぞれのキャンペーンにむけて、分別用ごみ箱の設置や時間を決めて電気を消す取り組みなどが行われていましたが、それ以外にもさまざまな取り組みが行われているのが分かりました。

例えば今回訪問した両方の学校で生ごみなどから肥料を作り野菜や植物を育ており、その活動について熱心に説明してくれました。またそのような活動には、エコライフチャレンジの対象となっている6年生だけでなく、学校全体で取り組んでいるのが印象的でした。

肥料をつくる「ミラクル・タンク」。どのようにして肥料ができるのかを説明してくれた。
ココナツの殻から土を作り植物を栽培している。生姜の収穫の様子を見せてくれた。
学校全体でエコライフに取り組む。子どもたちは取り組んでいる活動のジャンルごとにワッペンをつけている。ワッペンの一覧表。

 

イスカンダル開発地域は、マレーシアの重要な開発対象地域であり、経済成長により急速な温室効果ガス排出量増加が危惧されている地域です。しかし、今回子どもたちの取り組みの様子を見て、低炭素社会づくりが始まっているのを実感しました。子どもたちのこの取り組みが、家庭やコミュニティに広がり、地域全体で低炭素社会を目指していってほしいと思いました。

 

 

パタゴニアの環境配慮型食品〜パタゴニア・プロビジョンズ

こんにちは。気候ネットワークの桃井です。

売上の1%を環境活動に寄付するパタゴニア

さて、このブログにパタゴニアの広告バナーが数ヶ月前から貼られていることに気付いていただけてるでしょうか?

パタゴニア

パタゴニアは、アウトドア衣料品のメーカーで、売上1%を環境団体に寄付しています。気候ネットワークもその寄付をいただいて活動に充てています。また、東北(仙台)、関東(千葉、神奈川、東京)、関西(京都、神戸)、九州(福岡)と全国各地のパタゴニアのスタッフの皆さんが、活動にも積極的に参加してくださっているというとてもありがたい存在です。

このバナーをクリックして、リンク先にあるパタゴニアのオンラインストアでパタゴニア製品を購入すると、その売上の一部が気候ネットワークに寄付されるという仕組みになっています。ということで、ぜひパタゴニア製品をご購入される方は、こちらをクリックしてからお買い求めくださいませ(笑)。

パタゴニアのこだわり

パタゴニアの環境活動は寄付だけではありません。むしろパタゴニアの事業活動の方にこそ私たちは目をむけるべきでしょう。

環境に与える影響をできるだけ小さくするために素材の環境適合性への配慮、製造時等でのエネルギーや水の利用などにこだわり続けています。また製品の製造に関わる労働者の環境にも徹底して配慮がなされたフェアトレード商品であるという点から、契約工場の情報も開示されているという意味でも、企業の社会的責任を徹底したビジネスが展開されているのです。

パタゴニア・環境への影響
http://www.patagonia.jp/environmental-impact.html

おいしく安心な食品ビジネスも展開

パタゴニアでは約2年前から食料品の販売もはじめられています。こちらも、環境や安全、種の保存などへの配慮という点でこだわりを徹底したものばかりです。パタゴニアが食品分野に進出したのも、環境配慮を貫いた食品を世の中に示すためなのだということです。パタゴニアがなぜ食品を?と思われた方はぜひこちらの創始者であるイヴォン・シュイナードさんメッセージをご覧ください。

それで、先日(といっても1ヶ月以上前ですが)、うちのオフィスのランチタイムに、そのパタゴニアの食品(プロビジョンズ)の試食会を行いました。

スープ:レッドビーンズチリ

オーガニック認証済みのレッド・ビーンズやうずら豆、トマト、にんじん、パプリカ、ハーブやスパイスを使ったスープ。沸騰したお湯に入れて、中火で1分煮込んで蓋して9分で完成。

こちらスパイスの効いたスープですが、大きなレッドビーンズがこれでもかというくらいたくさん入っているので、豆好きの方にはたまらないと思います。2人分とのことですが、それなりに量があるので、カップに入れて飲めば5~6人で分けても良いくらいです。

セイバリー・グレインズ:-グリーンケール+カムット

オーガニック認証済みのキヌアなどにハーブやスパイス、グリーンケールやマッシュルームの入った穀物料理です。沸騰したお湯に中身を入れて、蓋をして10分待つだけで完成。


ランチのときにつくってもらったハンバーグを乗せて食べました。味付けが少し薄めなので、お魚とかお肉とかと合わせて食べると美味しいです。

 

 

セイバリー・グレインズ:-マッシュルーム+カムット

オーガニック認証済みのキヌアなど穀物に3種類のマッシュルームが入った食品で、それだけでもすごく美味しいです!こちらも沸騰したお湯に中身を入れて、蓋をして10分待てば完成。みんな、おいしい、おいしいと大好評でした。

 

安心でおいしいオーガニックの環境配慮型食品

いずれのお料理もおいしいのですが、何よりもおいしいものをオーガニック認証されたこだわりの素材で安心していただける点が良いですよね。動物性のものが使われてないので、ベジタリアンやビーガンの方にもお薦めです。

↓↓ぜひこちらのリンクからチェックしてみてください!

パタゴニア

気候ネットワーク設立から 20年のあゆみ

事務局長の田浦です。

気候ネットワークは、気候フォーラムを受け継いで1998 年4 月にスタートし、まもなく設立20 年を迎えることになりました。

気候ネットワーク設立20周年記念ロゴ

これまで、全国のネットワーク組織として、会員をはじめ多数の専門家やボランティアの協力を得て、国際交渉への参加、国内政策ウォッチ、地域のモデルづくり、調査・研究、政策提言、キャンペーン、温暖化防止教育などの活動を継続してきています。全てを網羅することはできませんが、これまでのあゆみを振り返ってみます。

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気候変動NPOが辿ってきた軌跡と展望〜学生インターンの目から

みなさんこんにちは。

気候ネットワークインターン生の塚本です。

気候変動NPOでインターンシップをしている身として、気候変動NPOの歴史や抱えている課題を知っておきたいという思いから、この記事を書こうと思い立ちました!

NPO法人の数がここ数年で増大

近年、NPO法人が職員の公募を拡大しており、大手転職サイトへの求人掲載数は過去3年間で3倍以上に急増したようです。その背景には、法人増や規模拡大に伴って、中途や新卒の募集が増加したことが理由の一つとなっているようです。

私見としては、従来よりもNPO法人で働くことへの抵抗が薄らいできているのではないかなと思います。また、社会課題を柔軟な働き方をしながら解決していきたいという、志ある人の数も増えてきていることがあるのではと感じています。

(出典:日本経済新聞2018年1月15日朝刊)

NPOってそもそも何?

NPOは営利活動を行う?

そもそもNPOというのは、Non Profit Organizationの略称であり、非営利団体を意味します。川口清史(2000年)はNPOについてこう言及しています、「正確にこの組織をいえば、Not for-Profit Organizationと理解したほうがいいと思います。forは目的ですから、利益のためではない組織という意味です」。

つまり、利潤をあげることもあるけれども、その利潤を再度その組織のミッションに基づき、活動のために使用する、ということです。

学校法人や福祉法人などと同様に、公共の利益のために活動しているNPOですが、それらとの違いは一体どこにあるのでしょうか?

まず、何と言っても、ミッションの実現のため、人々が自分の意志で、自発的に参画しているということです。また、行政や政府から強く独立しているといった特徴が挙げられます。比較的小規模で構成され、活動している点も一つ言えます。

NPOにはどんな種類があるの?

全てのNPOは、各々が確固としたミッション、目的を持って活動しています。それらの分野は多岐にわたり、福祉・環境・教育・医療・難民支援など、またそれらに対して分野横断的に取り組むNPOもしばしば見られます。

NPO活動を行う各個人の目的を見てみると、その根底にあるものは、世の中に求められていること/世の中が大切だと思っていることを実践するという意識に違いありません。

広義でのNPOが抱える課題

そんな中で、NPOを取り巻く問題が、過去から現在に至るまで数多くあることも確かです。戦後、四大公害から阪神淡路大震災に至るまで、様々な市民活動が展開されてきました。市民活動が大きく盛り上がってきた神戸での震災後、市民団体にとって念願の法律である「特定非営利活動推進法」が制定されました。NPOはそれ以降、法人格を得たことによって賃貸契約を結んだり、銀行口座を作ることが可能になったことで、活動の幅が大きく広がりました。

しかし、同時に多くの課題が同法に内包されていることも事実です。現在と違い当時は、寄付による相互的な税の減免措置がないことに加え、訴訟にかかる団体訴権が認められていないなど、法的問題は山積していました。

財政的に大丈夫?

賃金の面においても、多くの課題を抱えているといった状況です。自発的な活動であり、利益を顧みず社会貢献を果たすという側面がある一方で、一般的に大量生産大量消費型社会にある意味即した形で活動する企業は、利潤を究極的に追求します。たとえば、環境保全の側面で見たときに、社会に求められている活動をしているのはNPOであり、他方で大企業の活動は持続可能性の概念に逆向したものであると言わざるを得ません。

しかしながら、活動を続けていく上で、職員に賃金を払い、事務所の賃料を支払い、その他にも多くの経費がかかる中、職員を長期に渡って育成し養っていくという持続可能性面では、NPO活動が抱えている課題の一つであると言えます。

欧州はNPOのための資金制度が充実!

他方で、欧州の市民団体に広く見られる特徴として、それらが抱えている人数と資金力の強さです。資金面では、寄付金を集めやすい仕組みとして税金の優遇制度が整っています。また、比較的潤沢な資金に支えられていることもあり、100人を超える有給スタッフが在籍している団体もあります。そういった団体には、気候変動交渉の専門家が10人もいるなどといった状況があり、日本の状況からは大きく先を行っていると言わざるを得ません。

そのような状況を打破せんが如く、環境市民団体への資金援助が年々増えてきている事もまた事実です。環境意識の高い企業や財団、また個人寄付が、市民団体の運営において大きな力となっています。しかしながら、未だにそれらの額は十分とは言えません。

財政面のみならず、市民団体が社会の合意形成の過程に、民主主義的に組み込まれていくことが、民主主義の観点から強く求められていると同時に市民団体は積極的に行政に対するアプローチを継続的に行っています。

気候フォーラムと京都議定書

気候フォーラムって?

気候変動の文脈では、環境市民団体の台頭が顕著になり始めたのは、1992年の国連気候変動枠組条約が採択された時期であると言えます。特に、COP3京都会議に向けた気候フォーラムの結成並びにロビー活動は、気候変動業界における市民社会の目覚ましい活動の一つです。

気候フォーラムは、「市民の立場から二酸化炭素などの温室効果ガスの削減に取り組むとともに、気候変動枠組み条約第3回締約国会議において実効性のある削減議定書が採択されるよう活動する」(日本弁護士連合会、2001)ことを目的に設立された、温暖化防止を目的とした環境NPOが集うプラットフォームです。主な活動としては資料の作成・情報発信・地球温暖化問題に係る啓発活動・政府及び産業界への提言活動など多岐に渡ります。

COP3で京都議定書が採択されたあと、気候フォーラムは大きな役目を終えました。しかし、当然ながら温暖化防止活動は議定書採択で終わったわけではありません。京都議定書のルール作りを監視し、各国による批准、発効まで持っていくことが求められていました。

京都議定書採択後の気候変動NPOの役割

気候変動問題は極めて長期に渡り、市民の役割が大きい問題です。COP3での京都議定書採択を以て、気候フォーラムが解散するか、その役割を引き継ぐかどうか、議論がありました。結果として、1998年、気候フォーラムの後継組織として気候ネットワークが設立されました(今年で設立20周年です!)。

他にも、地球環境市民会議(CASA)グリーンピース・ジャパンWWFジャパンFoE Japanなどの環境NPOは、京都議定書採択以前からこの分野で活動を行ってきており、現在もCOPをフォローし、また国内でも気候変動・エネルギー政策への提言活動など幅広い活動を展開しています。

また、2009年のCOP15コペンハーゲン会議に参加したユースが中心となって、Climate Youth Japanというユースの気候変動NPOも設立され、活動を続けています(私もCYJのメンバーとしても活動しています!)。

気候変動NPOの今後に注目!

広い意味でのNPOが抱える諸課題から、気候変動NPOが辿ってきた軌跡をここに記しました。

今年2018年は、ポーランドはカトヴィツェにて開催されるCOP24、2019年はG20大阪開催など、重要なイベントが盛りだくさんです。気候ネットワークは気候変動NPOとして、これらの会議を監視し、提言活動及び情報発信を行う大きな役割があると思います。

また、気候ネットワークだけでなく他の気候変動NPOの活動についても知っていただき、ぜひ様々な形で支援していただければなと思います。

(文責:塚本悠平)

参考文献

  • 「NPO(非営利団体)とボランティア」、立命館大学人文科学研究所、2000年10月15日、(株)田中プリント
  • 「NPOも人手不足」日本経済新聞、2018年1月15日朝刊
  • 「21世紀をひらくNGO・NPO」、日本弁護士連合会・公害対策環境保全委員会編、2001年4月20日、(株)明石書店

エコチャレ交流会 3/2に参加して 

みなさまこんにちは。

インターンの塚本です。

先日私は、気候ネットワーク「エコチャレボランティア交流会」に参加してきました。

様々な経験を持ったシニアメンバー、環境教育の現場に

エコチャレボランティアの方々には、様々なバックグラウンドをお持ちの方が多数いらっしゃいます。

大先輩のみなさんが勢ぞろいなさっていた交流会に若者の参加はあまり見られなかったことは、私としては少しショックではありました。しかし、彼らの熱意や気概を大いに感じ、パワーをいただきました。

自己紹介

交流会の初めに参加者全員による自己紹介を行いました。

(自己紹介の様子)

その中で印象的だったのは、自動車エンジンの開発の仕事をしていらっしゃった方のお話です。「仕事現役の時には、温室効果ガスを大量に排出する自動車産業のエンジン部門におりました。引退してからは、次第に環境への思いが高まってきたこともあり、環境教育に携わるようになりました。今まで温室効果ガスの大量排出をしてきた分、今後は環境活動を通して温室効果ガスの削減に貢献したいと思って参加しています。」

それ以外の方々からも、仕事を引退した後に環境活動を行うようになったとの声が多くありました。エコチャレはこういった方々に支えられていることを知り、またどういった思いで環境教育に携わっておられるのかということを知ることができました。

学習会の様子を振り返ろう

2017年度に実施したエコチャレの様子を、各小学校がホームページに挙げているものを幾つか紹介します。

音羽川小学校

音羽川小学校のHPでは、「今回学習したことからスタートして、これから地球温暖化防止のために自分たちはどんなことができるのかを考え、発信していきます」との児童の発言が取り上げられていました。

納所小学校

また、納所小学校のHPでは、「他教科の学習においても環境問題に関することに反応し、課題を持って考えるようになりました。」とのメッセージと共に児童の学習の様子が掲載されています。

各小学校がそれぞれのHPにて取り上げているエコチャレの取り組みを紹介し、ボランティアの方々は大きく奮起されました!

こういった児童からの前向きな発言や行動の変化は、今後の活動の糧になること間違い無しですね!

クイズでアイスブレイク!

(クイズの説明を行う気候ネットワークスタッフ)

クイズは全部で8問ありました。いくつかピックアップすると、

  • 日本の温室効果ガス排出量の国別ランキング
  • RE100に加盟している日本企業の数
  • 日本全国の送電線と配電線の長さを足した長さ

などなど、実際のエコチャレ学習会で児童に出題しているようなものから、気候変動問題について普段から学びを深めていないとわからないものまで多岐に渡りました。

クイズを各グループ対抗で行うことで場がとても和みました!

私にとってのエコチャレ

私自身、エコチャレに初めて参加したのが約半年前となります。事前学習会と事後学習会の両方を経験させていただきました。環境教育の現場に立つのはエコチャレが初めてということもあり、わからないことだらけでした。

しかし、エコチャレのベテランスタッフ/ボランティアの方々に支えられ、なんとか実施のサポートを務めることができたと感じています。

またエコチャレを通して私自身、特に初等教育における環境教育の重要性を体感することとなりました。頭の柔軟な小学生への環境教育を行うことによって、将来世代として社会で活躍するであろう彼らに温暖化の脅威、また対策することの重要性を感じてもらうことは非常に大切ではないでしょうか。仮にエコチャレ自体の記憶が成長とともに薄らいでいくとしても、エコチャレで学んだことは、彼らの環境に対する考え方の大切な一部分として残っていくでしょう。

私にとって、そんなエコチャレを長年にわたって支え続けてきた方との交流会は刺激的であり、彼らへの感謝を伝える場ともなりました。

若者も環境教育に携わろう

先ほど少し書きましたが、エコチャレボランティアは仕事をリタイアした方々によって支えられている部分が大きいです。

しかし、今後の社会を担うのは現在の若者世代です。ベテランの方々だけではなく、若者世代が知識や経験を受け継ぎ、環境教育の担い手として活躍することが必要です。

エコチャレでは、小学生は環境教育を受ける立場です。若者は、いつまでも教育のみを受けるといった状況を打破しなければなりません。つまり、若者が気候変動問題の当事者として問題意識を強く持ち、温暖化防止に取り組むとともに、教育者として活動することが大切だと考えます。

日本のエネルギー政策を考える〜CASA第一回エネルギー学習会

皆様こんにちは!

気候ネットワークインターン生の塚本です。

先日私は、地球環境市民会議(CASA)主催の第一回エネルギー学習会に参加してきました! 以下、その報告をいたします!

多様なアクターが学習会に参加していました!

環境NPOのスタッフや企業の勤め人、行政職員から高校教諭まで、幅広い層の参加者が見受けられました。

参加者は全部で16名いました。金曜日の晩にもかかわらず多くの方々が参加していることに驚きました!

二つの市民団体の代表者の方々が登壇

全大阪消費者団体連絡会事務局長である飯田秀男さんや、CASA事務局長の宮崎学さんが登壇者として講義をしてくださりました。

エネルギー学習会では二つの論点がありました!

第五次エネルギー基本計画の検討が行われていることを踏まえて、学習会では二つの論点に絞って講義や議論が展開されました。

  1. 第四次エネルギー基本計画及び長期エネルギー需給見通しから見る日本のエネルギー政策の問題点を考える。
  2. 第五次エネルギー基本計画策定に向けた意見箱及びPC(パブリックコメント)提出に向けた戦略策定。

原発ゼロを実現しなければ!

 第四次エネルギー基本計画における争点として大きく挙げられるのが、核燃料サイクルを維持することによる原子力発電の推進・2030年エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合・石炭火力発電所新設問題です。

 *ただし、議論が白熱したことにより、第一回エネルギー学習会では主に原子力政策について意見を交わしました。

図1 2030年エネルギーミックス(出典:エネ百科)

原発事故やもんじゅ騒動後の原子力政策はどうなってる?

 原子力政策に関して、近年日本中を騒がせたもんじゅ廃炉が学習会の議論の中心に据えられました。2011年東電原発事故を経験した日本国内における、原発反対といった世論は7年ほど経った現在まで弱まることはありません。

 しかし日本政府は、そんな世論を無視するかのごとく、第四次エネルギー基本計画策定後に公表された長期エネルギー需給見通しにおいて2030年エネルギーミックス(上記図1)が発表されました。2013年段階では電源構成の中で原子力発電はわずか1%を占めるといった状態でした。それもそのはず、使用済み核燃料の再処理や貯蔵場所がないことはおろか、汚染水の漏出などあまりにも多くの問題が露見したからです。それに対する世論は厳しいものでした。現在でも、原発再稼働や新設への反対運動は全国規模となっています。

 それと同時に、財政面でも技術面でも破綻した日本の核燃料サイクルを、果たして日本政府がどのように進めていくのかということに対して、学習会参加者の多くが不透明感を覚えました。

政府の見解を見てみよう!

 そんな原子力発電を推し進める政府の見解として、安定供給及びコストの低さを挙げています。化石燃料の使用による温室効果ガスの大量排出は気候変動を促進させ、片や再生可能エネルギーは不安定電源であり、主幹電源にはなりえない、それらが日本政府の原子力推進時にしばしば言及されるものです。

 しかし、それらの主張には大きな欠陥があります。まず一つ目の理由に、原発のコストは年々上がってきており、逆に再生可能エネルギーの価格は年々下がってきていることが挙げられます。原発は、燃料の殆どを海外から輸入しており、政府の言う「準国産資源」では決してありません。

再エネコストは低下し、原発コストは上がる

 また、日本経済新聞朝刊(2018年1月17日)によると、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、「2010年から現在までに太陽光発電のコストが73%、陸上の風力発電のコストが約25%下落したとの調査結果を2018年1月13日に発表した。同機関は、太陽光発電のコストが2020年までに2017年比で半減する可能性があると見込む。」と発表しました。つまり、再生可能エネルギーの電力価格の減少と原発コストの上昇とが同時に起こっているということです。

参加者間での質疑応答

Q.再エネと原子力、結局どっちが高いのでしょうか?

→計算モデルによって数値は異なるが、原発の方が長期的に見ると高い、といった的確な返答を、CASA早川さんより頂きました。

Q.原発の段階的廃止に向けて、国は予算を削減していくべきですか?

→非常に繊細な問題であることは間違いないです。ただ一つ言えることは、廃炉しようがしまいが、いずれにせよ政府から多くの予算が振り分けられることになります。現状では、東電原発事故以来、原子力研究者数や原子力を学ぼうとする学生の数が急速に減ってきていることがわかります。そうなると、廃炉したくてもそれを実施する人員や研究の蓄積がなくてはどうにもなりません。

Q.核燃料サイクルはすでに破綻していると言えますが、日本政府は断固それを推し進めようとしています。いずれ日本が核燃料サイクルを放棄した場合、現在使用済み核燃料の貯蔵地である青森県からどこに移すのでしょうか?

→日本政府は、核燃料サイクルを放棄した場合の仮定を考慮していないようです。青森県としては、再処理ができない場合は、すべての使用済み核燃料を元あった場所、即ち各地にある原子力発電所に返納するという見解を明らかにしています。

(CASA第一回エネルギー学習会 質疑応答の様子、筆者撮影)

 

学習会を終えて。。

 本学習会において、まず感じたこととして、30歳以下は私一人だけだったことです。エネルギー問題に関心のある若者が少ないことは常日頃から感じていますが、16人中1人というのはどうもやるせない気持ちにさせられました。次回は私が所属しているClimate Youth Japanのメンバー及び、気候ネットワークインターン生を引き連れて第二回エネルギー学習会に参加します。様々な年齢層が意見をかわさなければ、真の衡平な視点からの意見交換はできないと考えます。

みなさんも第五次エネルギー基本計画に意見を出しましょう!

 また、本学習会を通じて改めて認識したこととして、第四次エネルギー基本計画の内容は、第五次計画策定において変更を必要としており、また現状にそぐわないものであることです。2014年に閣議決定された第四次計画は、パリ協定の目標である2度/1.5度を考慮しておらず、石炭火力発電の新規増設計画は見るに耐え難く、更には再生可能エネルギーの世界的、また国内においても分散型電源が指数関数的に増加しているなどの、多様な状況の変化を内包していません。我々市民の意見を政府の意思決定過程に届けるために、意見箱及びパブリックコメントへ個人また団体による提言が望まれます。

 

エネルギー政策に関する「意見箱」│資源エネルギー庁
http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/opinion/

セミナー「自治体と自然エネルギー100%を考える」を開催して

セミナー「自治体と自然エネルギー100%を考える」

皆様こんにちは、京都事務所インターン生の塚本です。

先日発足した、自然エネルギー100%プラッットフォームを契機として、2018年2月19日(月)京エコロジーセンターにて、セミナー「自治体と自然エネルギー100%を考える」を開催しました。

講師には自然エネルギー拡充における先進事例である宝塚市地域エネルギー課長の古南様及び、気候ネットワーク主任研究員の豊田さんをお招きしました。

セミナーの流れ

  • 開催時間:13時〜16時
  • 主催者より挨拶
  • レクチャー1:講師 豊田陽介氏 →質疑応答1
  • レクチャー2:講師 古南恵司氏 →質疑応答2
  • レクチャー3:塚本悠平 →質疑応答3
  • ワーク1
  • ワーク2
  • 講評

 

レクチャー内容

(筆者撮影)

 

レクチャー1では、豊田さんより自然エネルギーについての基本説明、自然エネルギー拡充における国内外の動向及び地球温暖化防止に向けた市民の取り組みなどについて、講義していただきました。

質疑応答では、参加者の一人より質問を頂きました。質問内容としては、「市内にて自然エネルギーを導入していくにあたって、地元にある企業と協働することについてどうお考えでしょうか?」といったものがありました。それに対して講師からは、「企業を巻き込むことは良いことです。ただ継続的なものにしていくためには地域貢献だけでなく、企業にも自然エネルギー事業を行うにあたって長期的にどのようなメリットが生まれるのかといった具体案を示す必要がある」との回答を頂きました。

レクチャー2では、古南さんより宝塚市の基本概要、宝塚市の宝塚エネルギー2050ビジョン及び市民との協働について、お話し頂きました。

質疑応答では、参加者の一人より質問を頂きました。レクチャー2の中で宝塚市西地区における市民が主体となって進んでいる自然エネルギー事業における報告があったことを受けて、「西地区のエネルギー事業はどういう経緯で進んだのでしょうか?」といった質問を頂きました。それに対して講師からは、「FIT制度という政策的支援による後押しがあったことは間違いないですが、特に言えるのは地元の方々が元々エネルギー問題に関心があったことに加え、自然エネルギー事業に必要となる土地を市民が提供してくれるといった環境が大きかった」との回答を頂きました。

レクチャー3では、司会の塚本よりユースと自然エネルギーとの関係性及び、自然エネルギー100%プラットフォームの詳細について発表しました。

質疑応答では、講師の古南さんからも質問を頂きました。質問内容としては、「自然エネルギ−100%プラットフォームにて100%宣言するにあたって、達成方法はどれくらい具体的でないといけないのでしょうか?」といったものでした。それに対して講師の豊田さんより、「方法をあまり固めすぎる必要はなく、ある程度示しておけば良く、宝塚市であればエネルギー2050ビジョンがそれにあたります」といった回答を頂きました。

グループワーク

(筆者撮影)

 

3つのレクチャーが終わった後に、2つのグループワークを行いました。1つ目のテーマを「ユースが自然エネルギーについて考える意義」とし、ブレインストーミング→グループ内共有→全体共有と言う形でワークを進めました。様々な意見が出た中で、全体に共有してくださった意見としては、キーワードが2つありました。一つが「世代間衡平性」で、若い世代が将来的に気候変動の影響を受けることは明らかであり、自ら考えて行動しなければならない。また、将来世代への責任が、将来を担う現代世代にはある。などの意見が出ました。二つ目のキーワードは、「ユースへの社会的な期待」が挙げられました。若者は、社会の既存の枠組みに捉われずに自由な発想とともに行動を起こすことができる、といった意見を頂きました。

 

2つ目のグループワークは、「あなたならどうアクションを起こしていく?」といったテーマの下に行われました。流れは一つ目のグループワークと同じでした。全体に共有してくださったアイディアとして挙げられたものとしては、「柔軟な考えを持つ世代に対する環境教育」及び、「高い環境意識を持ち、それを実行に写している企業を就職活動の際に意識的に選ぶ」などがありました。

 

講評

二人の講師の方々より、それぞれセミナーを通しての講評を頂きました。古南さんより、「行政職員は、昔は仕事のみしていれば良いといった風潮が間違いなくありました。しかし昨今では、仕事の他に関心のあることに活動し、業務以外でのネットワーキングができる人が増えてきていることを実感しています。今日は、仕事を通じてと言う形ではあるが、様々な人と繋がりたいと言う想いを持って講義をしにきました。自然エネルギーに関心の高い皆様に宝塚市の取り組みについて知っていただき、また皆様が持ってらっしゃる様々な意見を聞くことができ、嬉しく思います。」との講評を頂きました。

豊田さんからは、「再エネのコストが高いと言う概念はもう古くて、むしろ安くなってきていることを広く知ってもらいたい。また、ユース参画に関しても、実際に自然エネルギーについて知り、またそれがもたらすメリットを体感してもらいたい。将来的に、自然エネルギーとはどんな仕事にも、生活にもつながってくるということも知っておいて欲しい」といった講評を頂きました。

所感

参加者の方々は、普段より様々な形で温暖化問題に関わっておられたことから、主催者側としても勉強となる意見や質問が多く出ました。自然エネルギーに関心が高い方が参加してくださったということもありますが、生活の中でエシカル消費を意識しながら消費行動を取っている方や、電力会社の切り替えを既に検討している方がいらっしゃるなど、市民の間に自然エネルギーの重要性のみならず環境意識の向上を感じざるをえませんでした。

また懇親会では、参加者の方々と講師の方々との活発な交流が行われ、予定していた時間よりも1時間も延びてしまいました。参加者の方から、講師の方に再エネ事業の依頼があったり、市民参画における課題などについての議論で大いに盛り上がりました。

(筆者撮影)

 

本セミナーを足がかりとして、今後も自然エネルギー100%といううねりをより大きくしていくべく、「第二回〇〇と自然エネルギー100%を考える」企画を考えています。それと同時に、より多くの方々に自然エネルギー100%というムーブメントに参画していただけるよう、活動して参ります。

本セミナー開催にあたって、ご多忙の中いらしてくださった講師の方々、並びに会場を貸してくださった京エコロジーセンター様に、深く感謝申し上げます。

(文責:塚本悠平)

インドネシアで進む泥炭地破壊と私達の生活

京都事務所の有木です。2月の3日および4日に大阪で開かれた「ONE WORLD FESTIVAL」に参加してきました。

ONE WORLD FESTIVAL 会場の様子

 

インドネシアNGOが語る熱帯泥炭地と私たちの暮らし

2日目の午前中は「ウータン・森と生活を考える会」が主催する講演会「つながってる!インドネシアNGOが語る熱帯泥炭地と私たちの暮らし」に参加しました。インドネシアのNGOで活躍するヨヨさん(Yoyok Wibisonoさん)から、インドネシアの「熱帯泥炭湿地林」の破壊の問題について話を聞くことができました。


泥炭地の問題を説明するヨヨさん

熱帯泥炭地の破壊が温暖化の原因になっている

1つ目のポイントは、インドネシアにおけるCO2排出の最大の原因が熱帯泥炭地の破壊によるものだということです。

泥炭とは、主に植物が不完全に分解して堆積した一種の有機質土壌のことであり、泥炭がある厚さ以上堆積している場所を泥炭地と言います。手付かずの泥炭地はCO2や水を吸収する役割を果たし、「炭素の貯蔵庫」とも呼ばれています。

しかし、近年原生林が伐採され、アブラヤシなどのプランテーションが進められてきたことで泥炭層の分解・酸化が進み、蓄えられたCO2が大気中に放出されているそうです。また、泥炭地で発生する火災も大きな問題となっています。プランテーションにより水分が失われたことで泥炭層の乾燥が進み、火災が発生しやすい状況になっているそうです。一度火災が発生すると消し止めるのは非常に困難であり、大量のCO2を放出してしまします。

熱帯泥炭地破壊の原因は我々の生活にある!

2つ目のポイントは熱帯泥炭地破壊の最大の原因であるアブラヤシなどのプランテーションは、日本にいる私達の生活と大きく関係しているという点です。

アブラヤシから取れるパーム油は私たちの身の回りにある食品や化粧品、洗剤などに大量に使用されています。ポテトチップス、マーガリンなどは、特に明記されていない限り、ほぼパーム油が使われています。日本の私たちがパーム油を使えば使うほど、インドネシアではプランテーションが進み、泥炭地破壊が進行すると考えられます。

企業の「倫理的な」活動に期待

「これらの事実を重く受け止め、私達の生活をもう一度見直すことが必要である」と、「ウータン・森と生活を考える会」の石崎雄一郎さんは訴えていました。油の使用量を減らす、パーム油ではなく国産の油を使う、パーム油を使う場合は認証マーク(RSPO)のついたものを購入する、などの対策が考えられるそうです。

パーム油を使って食品などを作っている各企業はこの問題をどの程度認識しているでしょうか。泥炭地破壊など地球規模の環境問題の解決のためには、大量生産を行う企業の協力が必要不可欠です。これらの企業が「倫理的な(エシカル)」企業活動を行い、問題解決に向けてムーブメントを起こすよう、訴えていきたいと感じました。


質疑応答の様子

SDGsの達成にむけて

ヨヨさんは、長年にわたりインドネシアの熱帯林と泥炭地の復旧に尽力してきました。彼の発言で印象に残っているのは、プロジェクトを行う場合、環境の回復だけではなく地元に住む方々の生活についても同時に考える必要があるということです。

プランテーションは確かに大きな環境破壊をインドネシアにもたらしましたが、一方で現地の労働者の収益源となっているという側面もあります。SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標には「陸の豊かさを守る」、「気候変動への対策」のほか、「人や国の不平等をなくす」、「すべての人に健康と福祉を」といったものが含まれています。持続可能な社会を実現するためには、これらの要素を総合的に考えていく必要があることを痛感しました。

市民のチカラで、気候変動を止める。