G7伊勢志摩サミットはパリ協定の実施を加速させられるか?

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こんにちは。京都事務所の伊与田です。

私は今、G7伊勢志摩サミットのため、三重県の国際メディアセンターに来ています(今朝は下の写真の通り記者会見を行いました)。気候変動・エネルギーから見た今回のサミットの背景やポイントをまとめてみました。

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G7伊勢志摩サミットが開幕しました

2015 年は、気候をまもるためのパリ協定が採択された歴史的な年でした。今年2016年4月22日に開催されたパリ協定の署名式では175の国・地域が署名し、パリ協定を実施する政治的意思を示しました。

そんな中、はじまったのが5 月のG7伊勢志摩サミットです。

今回のサミットの主要議題のひとつは「気候変動・エネルギー」。また、「質の高いインフラ投資」も温暖化対策に関連する議題です。パリ協定の実施を加速化するため、これまで以上に強い「脱炭素」のメッセージをG7が発信できるかどうかに注目が集まっています。

G7伊勢志摩サミットの背景
~「脱炭素化」を掲げるG7、「排出ゼロ」をめざすパリ協定~

2015年6月のG7エルマウサミットでは、開催国ドイツによって気候変動が最重要議題に位置づけられました。エルマウでは、COP21パリ会議の成功に向けてG7首脳は次のことに合意しました。

  • 今世紀中に世界経済を脱炭素化する
  • 2050 年までに世界の温室効果ガス排出量を2010 年比で40-70% 削減する
  • 2050 年までにエネルギー部門の変革に向けて努力する

また、G7を含めた世界中の国は今世紀後半に(早ければ2050年頃に)世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにするというパリ協定にも合意しています。これらのことは、G7諸国がすでに、脱化石燃料を進め、脱炭素化へ舵を切る約束をしていることを示しています。

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M. Meinshausen, Australian-German Climate & Energy College, The University of Melbourne, climatecollege.unimelb.edu.auより作成

 

G7のリーダーが約束すべき7つのポイント

1. できる限り早期にパリ協定を批准し、早期発効を確保する

米中両国はパリ協定締結のための国内手続きを2016年中に行うと表明しています。G7のような責任も能力もある先進国が時間軸を明らかにしながら早期批准の意思を示すことは、パリ協定の長期目標達成に向けて世界中の国が協調して行動するためには必要不可欠です。

★パリ協定採択2small
法的拘束力あるパリ協定の採択は歴史的成果。早期発効が重要

2. 可能な限り早く脱炭素の長期戦略を作成し、提出するよう約束する

COP21の結果、各国は2050年に向けて温室効果ガス大幅削減を実現するための戦略を2020 年までに提出することが求められています。「排出ゼロ」を確実に実現していくため、G7諸国は率先して脱炭素化の長期戦略をとりまとめ、国連に提出する必要があります

富山で開催されたG7環境相会合では可能な限り早く、2020年という期限に十分間に合うように策定・提出することを約束しました(「前倒し提出で合意」という事前の報道もあったんですけどね)。

富山でG7として長期脱炭素戦略の提出を約束したこと自体は前進ですが、G7のような大排出国は、2018年の世界の温暖化対策の進捗確認(促進的対話)までに長期戦略を策定・提出することが望まれています。

 

3. 2020年以降の温暖化対策の約束草案の排出削減目標を見直し、より野心的なものに更新する

各国政府は、自国の短期・中期の排出削減目標を見直して引き上げ、再提出する必要があります。世界各国が掲げる既存の目標ではパリ協定の目標は達成できないからです。

責任も能力もある先進国であるG7は、特にその必要性が大きいと言えるでしょう。とりわけ、日本の2030年目標(2013年比で26%削減=1990年比で18%削減)は科学者グループ”Climate Action Tracker”から「不十分(inadequate)」という最低ランクの評価をもらってしまっています。

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4. 2050 年までにエネルギー部門を脱炭素化する
5. 化石燃料及び原子力からの脱却を加速する

気温上昇1.5℃未満を達成するためには、世界の化石燃料埋蔵量のほとんどは燃やさず地中に留めたままにしなければなりません。G7諸国は、2050 年までにエネルギー部門の完全な脱炭素化を達成することを約束するべきです。

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G7 諸国は、化石燃料、とりわけCO2 や環境汚染物質の排出が最も大きい石炭から脱却する意思を示すべきです(石炭火力発電所のCO2排出量は、例え高効率な次世代技術を用いたとしても天然ガス火力の約2倍)。

石炭火力発電所の新増設をやめ、既存のものも早期に閉鎖すべです。特に日本国内の石炭発電所の新増設計画は、G7 諸国の中でも突出しています(図1)。

図1

 

国内だけではありません。公的資金による海外向けの石炭事業支援額、こちらもG7諸国中日本がダントツです(図2)。

図2

石炭事業に資金支援しているのは日本だけではなく、もちろん他のG7諸国も化石燃料支援をやめる必要があります。しかし、その中でも、この期に及んで石炭を国内外で今から大幅に増やそうという姿勢は、パリ協定や持続可能な開発目標(SDGs)に逆行するとしかいいようがありません。

6. 再生可能エネルギーを100% へと増加させ、エネルギー効率を向上させる

G7 諸国は、再エネ100%への転換や省エネを加速させる決意を示す必要があります。また、日本政府の意向によって伊勢志摩サミットの主要議題にもなった「質の高いインフラ投資」は、化石燃料(特に、CO2排出量の多い石炭火力発電所)や原子力関連技術に対して向けられるべきではありません。

日本が再エネ100%に沿う 高い目標を掲げたらどうなる?

ちなみに、再エネ100%は温暖化対策だけでなく、様々な社会的な便益があります。NewClimate Instituteのレポートでは、日本が再エネ100%に沿う高い目標を掲げると次のようなメリットが生じると推計しています。

  • 化石燃料輸入コスト  年間3.6兆円節減
  • 大気汚染による健康被害  年間16,500人早期死亡から救う
  • 再エネ部門の雇用  67,000人増
再エネ100%

再エネ100%については、つい最近、いくつかニュースがありました。

 

ポルトガルが4日間にわたって電力の100%を再エネで賄った、と。もちろん日本とはもともとのエネルギー需要量も異なりますが、国土面積が日本の4分の1、こういうニュースを聞くと、再エネ100%は夢見るものから叶えるものになりつつあると感じますね。

 

7. 2020 年まで、そしてそれ以降も、資金支援貢献を引き上げていく

気候資金は、途上国が排出削減対策や適応策にとりかかるために不可欠です。すでに2020年までに1000億ドル拠出という目標が合意されていますが、G7諸国は、技術や公的資金、キャパシティ・ビルディング等による途上国支援を大幅に拡大する必要があります。G7諸国は、2020年までとそれ以降も気候資金をその責任と富に見合った公平な割合で拠出する必要があります。特に、緑の気候基金(Green Climate Fund: GCF)に対してさらなる貢献を行うことが必要です。

 

まもなく、G7サミットは閉幕します。果たしてどのような中身になるのか、注目ですね。

 


追記:G7サミット閉幕に寄せて(2016年5月30日)

G7サミットの結果をうけて、気候ネットワークなどの環境NGO4団体で次の共同声明を発表しています。全体として、パリ協定の実施を加速させるには不十分で、G7はリーダーシップの発揮ができなかったという評価です。

【プレスリリース】 G7伊勢志摩サミット閉幕:気候変動・エネルギーに関するNGO共同声明 G7、人類の生存を脅かす気候変動に対処するリーダーシップを発揮できず(2016/5/27)