サウジアラビアと日本の「不名誉な共通点」~温暖化対策の劣等生~


京都事務所の伊与田です。テレビでは、サウジアラビア国王の来日が話題になっていますね。

そんな中ですが、私は、「日本」と「サウジアラビア」という2つの国名を見ると、これらの国の間の「不名誉な共通点」を思い起こさずにはいられません。

結論から言いましょう。

サウジアラビアと日本の、意外で不名誉な共通点。

それは、地球温暖化問題の解決の足を最も引っ張っている劣等生ということです。

より正確に言えば、ある調査で、世界で温室効果ガス排出量を最も多く排出している上位58ヶ国の温暖化対策の成績を評価し、順位づけしたところ、この2ヶ国が最下位グループだったのです。

気候変動パフォーマンス・インデックス(CCPI)

その「ある調査」とは、国際NGOが国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の場で発表している「気候変動パフォーマンス・インデックス(Climate Change Performance Index)」のことです。

CCPIは、毎年、温室効果ガス排出量が世界で最も多い国々の間で気候変動対策やその進展の度合いを評価し、得点を与え、順位づけをしています。気候変動の業界人の間では誰もが知る毎年恒例の有名ランキングで、国際的な大手メディアにもよく取り上げられています。

CCPI2017:58ヶ国中、サウジアラビアは最下位、日本は下から2番目

2016年11月、COP22マラケシュ会議のときに発表された、最新のCCPI2017では、世界で最も排出の多い上位58ヶ国中、温暖化対策の成績はサウジアラビアが最下位(第61位)。日本は、サウジアラビアより1つだけ順位が上の、下から2番目(第60位)となりました。

出典:CCPI2017<https://germanwatch.org/en/ccpi>

クリックで元データを見る

どうして58ヶ国のランキングなのに第60位とか第61位とかがあるのでしょうか?

それは、第1位から第3位に相当する十分な成績の国が存在せず、「該当者なし」とされているからです。ちなみに、最上位は第4位のフランスで、得点は66.17点です。最下位のサウジアラビアは25.45点、下から2番目の日本は35.93点でした(ランキング表参照)。

つまり、繰り返しになりますが、サウジアラビアと日本は、温暖化対策の成績ランキングにおいて、最下位グループと評価されている、ということです。

これを目にしたあなたは、「アメリカは?中国は?」と思われるかもしれません。アメリカは第43位、中国は第48位です。いずれも低い順位ですが、日本とサウジよりはだいぶましな位置にあります。

日本の評価が低い理由とは?

世界に名だたる産油国で、国連気候変動交渉の場で温暖化対策の合意の邪魔をしてきたことで有名なサウジアラビアはともかく、日本の成績はなぜこんなにも悪いんでしょうか?

CCPI2017の報告書には、日本の気候変動対策の成績について、再エネ分野だけで言えばいくらかの進展があるが、化石燃料の代わりに原発再稼働を進めようとしていることに批判があるとしており、また気候変動政策も、国内対策、対外政策ともに非常に貧弱なままである(remains very poor)と書かれています。

昔は、日本の順位はこんなに悪くなかったんです。CCPI2006のときは、最も排出の多い53ヶ国中、日本の温暖化対策の成績の順位は第34位でした(決して良い順位でもないですが…)。ちなみにその時のサウジアラビアの順位は53ヶ国で第53位、今と同じ最下位です。

つまり、この約10年もの間に他の国々が日本をどんどん追い抜いているということなのです。そしてついにCCPI2017では、日本はサウジアラビアと肩を並べるレベルにまで落ちてしまいました。

CCPIの評価方法:温暖化対策と、排出削減の進み具合等を総合的に評価

みなさんは、「どうして日本がアメリカや中国よりこんなに順位が低いの?」と思われるかもしれません。「どうして日本と産油国のサウジアラビアが隣り合わせの順位なの?」とも。

気になる評価・得点づけの方法論は、公開され、説明されています。例えば、下の図は、得点の配分を表したものです。

出典:CCPI2017<https://germanwatch.org/en/ccpi_bame>

クリックで元データを見る

得点配分は、現在の排出レベル(一人あたり排出量など)が30%、排出削減の進み具合(部門ごとの排出量の変化)が30%、再エネ10%、省エネ10%、気候変動政策20%で、合計が100%となっています。かなり包括的な評価がされていることがわかります。

なぜこの評価基準なのか、なぜこの得点の配分なのかは、ランキングやグラフを見るだけでは理解しづらいかもしれません。しかし、方法論のレポートを読めば、IPCCの報告書や国際機関の統計データ等を基礎として、よく考えられていることがわかります(例えば、部門ごとの排出量の変化を評価するにあたっては、概ね世界の温室効果ガス排出量の部門別の割合に応じて得点配分が定められているそうです)。

CCPI2017の厳しい評価を受け止め、対策の見直しを

もちろん、CCPIも、全知全能の神が考案したわけではないので、「いや、別の評価基準をもっと考慮すべきだ!そうしたら日本の順位も変わるはずだ!」というような議論はありうるでしょう。

しかし、長年にわたって国際社会で認知され、参考にされてきた国際比較の1つがCCPIですので、私は、これに目を向ける意義は大きいと思っています。今こそ、国際社会による厳しい評価を受け止め、日本の温暖化対策が本当にこのままで良いのか、見直すべきではないかと思います。