こんにちは。東京事務所インターン生の酒井です。

今回は、インドネシアのチレボンから緊急来日した現地NGO・弁護士の方々の2日間に同行しました。現地の司法判断に対する日本企業の対応と彼らの訴えについて、報告します。

石炭火力発電所稼働の悪影響

チレボンには、日本企業が事業実施者や融資機関となって進めてきた事業によって稼働した石炭火力発電所が、すでに1機あります。

技術の進んでいる日本においても、石炭火力発電は排出される物質によって環境や健康に悪影響を及ぼすため、推進すべき発電事業ではありません。しかしインドネシアのものは、日本のものよりも対策が不十分であるため、悪影響を及ぼす物質が多く排出されます。

石炭積み上げ時に漁村に散乱した粉塵

また、現地では、小漁業や貝の採集、塩作りなどを組み合わせながら生計を立てている住民が多いのですが、この石炭火力発電所の影響によって、魚や貝の収穫量は激減し、塩田は黒ずんでしまいました。漁民は生活難になり、塩田の労働者たちは失業しました。

そして、発電所建設のために土地を売却したため、多くの小作人も失業しました。

また、発電所について反対する住民に対し、殺害予告がされるなど、深刻な人権侵害の問題も起こりました。

インドネシアのサルジュム氏が訴える、石炭問題

今回来日したサルジュム氏も、石炭火力発電所によって収入が激減した漁民のうちの一人です。

彼は3児の父であり、以前は沿岸での小規模漁業や、季節によって貝採取をしていました。たまに隣人の大工の仕事を手伝ったりもしていましたが、遠くへ働きに出る必要はありませんでした。

しかし、発電所ができてからは貝採取はできなくなり、漁獲量も25~50分の1まで落ち込みました。

家族の生活を支えるために、遠くへ働きに出たり、溶接を学んでいますが、収入は安定しません。

小漁業の様子

「環境許認可は不当」:住民の勝訴にもかかわらず、日本は融資を決定

しかし、この1号機だけではなく、2号機への拡張計画も決定しました。住民グループは、このような影響にも関わらず発行された環境許認可が不当であるとして訴訟を起こし、2017年4月19日に州政府に対し、勝訴しました。

しかし、4月18日に、日本のJBIC(国際協力銀行)は拡張計画への融資に調印していました。そのJBICは、4月13日の国会答弁ではこの訴訟の「進捗について認識」していると述べていました。

そして4月21日に、州政府が控訴したため、高裁や最高裁での判決が確定するまで環境許認可が依然有効となり、本格着工の懸念がされています。

 

インドネシアの住民の訴え

まず、彼らは現地の司法判断を軽視した日本の融資について、強い怒りをもっていました。

そしてJBICの前で行ったアクションで、「日本の税金で私たちの生活を壊さないでください」と訴えました。

国際社会の中で私たち日本の税金が、世界の人々の生活を壊すものではなく、救うものであってほしいと思います。

また、彼らは、「日本の原発と同じように発電事業によって被害を受けた仲間として協力して安全でクリーンなエネルギーへの転換を進めていきたい」と話していました。東日本大震災で原発事故を経験した日本だからこそ、世界にも安全でクリーンなエネルギーを広めていけると感じます。

インドネシアでの発電事業の現状を知り、世界の中の日本の役割について、再認識することできた2日間でした。