映画「不都合な真実2 放置された地球」~ノーベル平和賞のアル・ゴア氏が語る、気候危機とのたたかい~

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京都事務所の伊与田です。先週、公開中の映画「不都合な真実2 放置された地球」を観てきました。いわずとしれた、2006年公開の映画「不都合な真実」の続編で、地球温暖化問題に警鐘を鳴らす米国の元副大統領アル・ゴア氏(ノーベル平和賞受賞)が気候危機に立ち向かう姿を追ったドキュメンタリー映画です。

映画「不都合な真実2 放置された地球」

公式ウェブサイト:http://futsugou2.jp/
劇場公開日(日本):2017年11月17日
総合評価:★★★★☆

「不都合な真実2」の総合評価は、★4つ。おすすめです!

独断と偏見で、総合評価は、★4つです!みなさんにおすすめしたい、良い映画だと思います。

住民の移住先の土地を購入した島国、キリバス。多くの墓を掘って熱波による死亡被害に備えるパキスタン。大干ばつが社会不安と国内紛争につながったシリア。タイフーン・ハイヤンで壊滅的な被害を受けたフィリピン。この映画では、すでに発生し、今後ますます深刻になる気候危機の「リアル」を説得力のある映像で伝えます。

一方、気候危機に立ち向かう人々、アル・ゴア氏のCOP21パリ会議への参加と合意のための働きかけ、急速に拡大する自然エネルギーのダイナミズムなどがドラマチックに描かれています(私もCOP21に参加しましたが、あのときの思い出が蘇りました)。

これを観ると、自ら行動することによって社会を変えられる可能性を信じたくなります。そして、現代社会における最大の困難の1つである気候変動に立ち向かい、これを克服しようとする時代に生きていることを、エキサイティングなことだと思えるようになります。

ここだけの話、いわゆる環境問題系のドキュメンタリーの中には、勉強にはなるけれど、楽しめるかというと微妙な作品もあるような気がします。しかし、この「不都合な真実2」は、美しい映像と場面にマッチした音楽、アル・ゴア氏らの明快なメッセージで、飽きずに最後まで楽しむことができました。

 

COP21の舞台裏。「パリ協定はアル・ゴアのおかげでできたの?」

この映画を観た知人から、「まるで、COP21のパリ協定は、アル・ゴア氏のおかげで合意できたみたいな内容になってたけど、本当にそうなん?アル・ゴア氏だけの手柄ってわけじゃないやろ?」と聞かれました。

映画を観ると、COP21合意に抵抗するインドを説得するため、ゴア氏が米国の再エネ企業を説き伏せてインドへの技術協力を約束させたことで、最終的にインド政府が納得し、合意にこぎつけた…と読める描かれ方になっています。

個人的には、COP21の合意の困難さは、必ずしもインドだけではなかったと思います。また、ゴア氏の根回しがどこまでインドに影響を与えたのかも私にはわかりません。「パリ協定は彼がいたからこそ成立した(アル・ゴア氏の行動がなければパリ協定はできなかった)」とまではなかなか言えないと思います(実際、映画ではそこまでのことは言っていない)。

しかしながら、それでも私はアル・ゴア氏と彼のチームに敬意を表したいと思います。COP21パリ会議では、アル・ゴア氏のように、自らの信念にもとづいて能力とネットワークをフルに活用してグローバル合意に貢献しようと懸命に動いた何百、何千、何万もの人々がいたからこそ、この合意ができたと思うからです。

COP21に参加した人間なら、誰しも、「私はこうやってパリ会議の成功に貢献したんだ」といえるストーリーを持っているのではないかと思います。この映画は、その、「アル・ゴア編」なのだと思います。

「coal power plant=火力発電」?

ただ、この映画の字幕で、「気候マニア」としては、ひとつ気になる部分がありました。映画では、アル・ゴア氏らが「coal power plant(=石炭火力発電所)」を何とかせなあかんと話す場面があるのですが、それが字幕では「火力発電」と訳されていたのです。

石炭火力発電も火力発電の一種ですから、この訳は間違いではありません(火力発電には、石炭火力の他に、石油火力、天然ガス火力、バイオマス火力等があります)。それに、字幕には字数やタイミングなどの制約があるのも理解できます。

しかし、この訳は、気候変動対策のプロである彼らの、石炭火力への問題意識の焦点をいささか曖昧にしてしまっている恐れがあるように思います。

最大の排出源=石炭火力発電

というのも、石炭火力発電は、人間活動のうち最大のCO2の排出源だからです。クリーンと言われる次世代型の技術を使っても、すでに運転中の平均的な天然ガス火力の約2倍のCO2を排出します。

この映画の公式ウェブサイトのコンテンツ「地球を守るために私たちにできる10のこと」には、1本の木を植えると生育中に1トン以上のCO2を吸収するとありますが、大型の石炭火力発電所(100万kw)が1基動けば、1年間で約600万トンものCO2を排出します。この排出量を相殺するには毎年木を600万本くらい植えないといけません。それだけ石炭火力の排出量は莫大なのです。

このため、パリ協定を守ろうという気候変動対策の専門家の間では、石炭火力発電所は、急いで減らさなければならないというのが共通認識です。そして、スクリーンの中のアル・ゴア氏も、優先課題であるとの認識をもって、「coal power plant=石炭火力発電所」の問題を議論していたように見えました。

特に、日本国内では、先進国の中で突出して、42基もの石炭火力発電所の新増設計画を抱えています。そんな日本だからこそ、日本語の字幕で、国際的に「石炭火力発電」がとりわけ問題視されていることが描かれてほしかったと思うのです。

この点はすこし残念でした(なので、日本語字幕版は★をひとつ減らしました)。

地球をこれ以上放置しない

それでも、この映画は、気候変動を何とかしようとたたかいながらも戸惑い、悩む人々に、行動することの希望を伝えてくれることは間違いありません(映画の中で熱弁をふるうアル・ゴア氏は、心に刺さる名言を連発するのです。それが何かはここではなく、実際に映画でご覧いただければと思います)。

日本公開版のサブタイトルは「放置された地球」ですが、これ以上放置しない、放置させない、という決意が湧き上がってくる映画です。公開終了までわずかですが、ぜひ映画館に足を運んでいただければと思います。