みなさんこんにちは。

気候ネットワークインターン生の塚本です。

気候変動NPOでインターンシップをしている身として、気候変動NPOの歴史や抱えている課題を知っておきたいという思いから、この記事を書こうと思い立ちました!

NPO法人の数がここ数年で増大

近年、NPO法人が職員の公募を拡大しており、大手転職サイトへの求人掲載数は過去3年間で3倍以上に急増したようです。その背景には、法人増や規模拡大に伴って、中途や新卒の募集が増加したことが理由の一つとなっているようです。

私見としては、従来よりもNPO法人で働くことへの抵抗が薄らいできているのではないかなと思います。また、社会課題を柔軟な働き方をしながら解決していきたいという、志ある人の数も増えてきていることがあるのではと感じています。

(出典:日本経済新聞2018年1月15日朝刊)

NPOってそもそも何?

NPOは営利活動を行う?

そもそもNPOというのは、Non Profit Organizationの略称であり、非営利団体を意味します。川口清史(2000年)はNPOについてこう言及しています、「正確にこの組織をいえば、Not for-Profit Organizationと理解したほうがいいと思います。forは目的ですから、利益のためではない組織という意味です」。

つまり、利潤をあげることもあるけれども、その利潤を再度その組織のミッションに基づき、活動のために使用する、ということです。

学校法人や福祉法人などと同様に、公共の利益のために活動しているNPOですが、それらとの違いは一体どこにあるのでしょうか?

まず、何と言っても、ミッションの実現のため、人々が自分の意志で、自発的に参画しているということです。また、行政や政府から強く独立しているといった特徴が挙げられます。比較的小規模で構成され、活動している点も一つ言えます。

NPOにはどんな種類があるの?

全てのNPOは、各々が確固としたミッション、目的を持って活動しています。それらの分野は多岐にわたり、福祉・環境・教育・医療・難民支援など、またそれらに対して分野横断的に取り組むNPOもしばしば見られます。

NPO活動を行う各個人の目的を見てみると、その根底にあるものは、世の中に求められていること/世の中が大切だと思っていることを実践するという意識に違いありません。

広義でのNPOが抱える課題

そんな中で、NPOを取り巻く問題が、過去から現在に至るまで数多くあることも確かです。戦後、四大公害から阪神淡路大震災に至るまで、様々な市民活動が展開されてきました。市民活動が大きく盛り上がってきた神戸での震災後、市民団体にとって念願の法律である「特定非営利活動推進法」が制定されました。NPOはそれ以降、法人格を得たことによって賃貸契約を結んだり、銀行口座を作ることが可能になったことで、活動の幅が大きく広がりました。

しかし、同時に多くの課題が同法に内包されていることも事実です。現在と違い当時は、寄付による相互的な税の減免措置がないことに加え、訴訟にかかる団体訴権が認められていないなど、法的問題は山積していました。

財政的に大丈夫?

賃金の面においても、多くの課題を抱えているといった状況です。自発的な活動であり、利益を顧みず社会貢献を果たすという側面がある一方で、一般的に大量生産大量消費型社会にある意味即した形で活動する企業は、利潤を究極的に追求します。たとえば、環境保全の側面で見たときに、社会に求められている活動をしているのはNPOであり、他方で大企業の活動は持続可能性の概念に逆向したものであると言わざるを得ません。

しかしながら、活動を続けていく上で、職員に賃金を払い、事務所の賃料を支払い、その他にも多くの経費がかかる中、職員を長期に渡って育成し養っていくという持続可能性面では、NPO活動が抱えている課題の一つであると言えます。

欧州はNPOのための資金制度が充実!

他方で、欧州の市民団体に広く見られる特徴として、それらが抱えている人数と資金力の強さです。資金面では、寄付金を集めやすい仕組みとして税金の優遇制度が整っています。また、比較的潤沢な資金に支えられていることもあり、100人を超える有給スタッフが在籍している団体もあります。そういった団体には、気候変動交渉の専門家が10人もいるなどといった状況があり、日本の状況からは大きく先を行っていると言わざるを得ません。

そのような状況を打破せんが如く、環境市民団体への資金援助が年々増えてきている事もまた事実です。環境意識の高い企業や財団、また個人寄付が、市民団体の運営において大きな力となっています。しかしながら、未だにそれらの額は十分とは言えません。

財政面のみならず、市民団体が社会の合意形成の過程に、民主主義的に組み込まれていくことが、民主主義の観点から強く求められていると同時に市民団体は積極的に行政に対するアプローチを継続的に行っています。

気候フォーラムと京都議定書

気候フォーラムって?

気候変動の文脈では、環境市民団体の台頭が顕著になり始めたのは、1992年の国連気候変動枠組条約が採択された時期であると言えます。特に、COP3京都会議に向けた気候フォーラムの結成並びにロビー活動は、気候変動業界における市民社会の目覚ましい活動の一つです。

気候フォーラムは、「市民の立場から二酸化炭素などの温室効果ガスの削減に取り組むとともに、気候変動枠組み条約第3回締約国会議において実効性のある削減議定書が採択されるよう活動する」(日本弁護士連合会、2001)ことを目的に設立された、温暖化防止を目的とした環境NPOが集うプラットフォームです。主な活動としては資料の作成・情報発信・地球温暖化問題に係る啓発活動・政府及び産業界への提言活動など多岐に渡ります。

COP3で京都議定書が採択されたあと、気候フォーラムは大きな役目を終えました。しかし、当然ながら温暖化防止活動は議定書採択で終わったわけではありません。京都議定書のルール作りを監視し、各国による批准、発効まで持っていくことが求められていました。

京都議定書採択後の気候変動NPOの役割

気候変動問題は極めて長期に渡り、市民の役割が大きい問題です。COP3での京都議定書採択を以て、気候フォーラムが解散するか、その役割を引き継ぐかどうか、議論がありました。結果として、1998年、気候フォーラムの後継組織として気候ネットワークが設立されました(今年で設立20周年です!)。

他にも、地球環境市民会議(CASA)グリーンピース・ジャパンWWFジャパンFoE Japanなどの環境NPOは、京都議定書採択以前からこの分野で活動を行ってきており、現在もCOPをフォローし、また国内でも気候変動・エネルギー政策への提言活動など幅広い活動を展開しています。

また、2009年のCOP15コペンハーゲン会議に参加したユースが中心となって、Climate Youth Japanというユースの気候変動NPOも設立され、活動を続けています(私もCYJのメンバーとしても活動しています!)。

気候変動NPOの今後に注目!

広い意味でのNPOが抱える諸課題から、気候変動NPOが辿ってきた軌跡をここに記しました。

今年2018年は、ポーランドはカトヴィツェにて開催されるCOP24、2019年はG20大阪開催など、重要なイベントが盛りだくさんです。気候ネットワークは気候変動NPOとして、これらの会議を監視し、提言活動及び情報発信を行う大きな役割があると思います。

また、気候ネットワークだけでなく他の気候変動NPOの活動についても知っていただき、ぜひ様々な形で支援していただければなと思います。

(文責:塚本悠平)

参考文献

  • 「NPO(非営利団体)とボランティア」、立命館大学人文科学研究所、2000年10月15日、(株)田中プリント
  • 「NPOも人手不足」日本経済新聞、2018年1月15日朝刊
  • 「21世紀をひらくNGO・NPO」、日本弁護士連合会・公害対策環境保全委員会編、2001年4月20日、(株)明石書店