地球温暖化防止のためには、温室効果ガスの大幅な削減を実現していく必要があります。そのためには、中長期的な視点に立って、社会経済を温暖化防止型に抜本的に転換することを前提に、省エネルギーやエネルギー効率化、自然エネルギーへの転換を進めていくことが必要です。
(1)中長期的な大幅削減を視野にした地球温暖化対策 〜気温上昇2℃未満に〜
危険な気候変動・地球温暖化を防止するためには、地球の気温上昇を産業革命以前のレベルから2℃未満に抑えるべきだと考えられます。これを実現するためには、地球全体の温室効果ガスのピークを遅くとも2020年代までに抑え、2050年代までには世界全体で大幅な排出削減が必要とされています。
なかでも先進国は、2050年代までに1990年比で約60〜80%の範囲の大幅な排出削減が求められます。
以上のようなことから、日本もまた、2050年には60〜80%程度の排出削減を中期目標として据えることが求められます。政府は京都議定書の6%削減に続く目標として、2013年以降にさらなる削減を進め、中長期的には大幅削減することを明示するべきです。
(2)温暖化防止への明確なシグナルの発信
日本においても、少しずつながら温暖化対策が導入されてきていますが、他方で異なる価値観に基づいて逆行する対策が進められているために、その効果は限定され相殺されてしまっている場合が少なくありません。
例えば、温暖化対策としてバスや鉄道などの公共交通機関の利用を促進する政策が進められているかと思えば、自動車利用をますます助長する道路建設が推し進められています。また消費者に対しては、ライフスタイルの転換や省エネ行動を呼びかけているが、他方ではテレビの宣伝や広告を通してエネルギー多消費製品の購入をあおっています。
このような整合性のない対策が並存する状況では市民や事業者は温暖化対策としてどの程度の努力が求められているのか、正しい認識に基づいて判断することは難しいものです。また正しい認識を持っていても何を優先し選択すべきであるのか、行動の基準が決められず、効果的な行動を期待することは容易ではありません。
地球温暖化は一部の関心の高い市民や事業者だけが取り組めばよい問題ではなく、全ての人々・企業の行動が求められる問題です。その行動を引き出すためには、今後の大幅削減に向けて相当レベルの努力が必要であることを誰もが認識でき、進むべき方向性と対策手法を共有することができるような整合性のとれた政策を推し進め、温暖化防止への明確なシグナルを社会全般に対して発信していく必要があります。
(3)温暖化対策の方向性
温暖化対策は、現在の資源・エネルギーの浪費をやめ、社会経済全体を温暖化防止型に抜本的に転換する方向で進めることが大前提となります。
第一に、省エネルギーやエネルギー効率化の徹底を図る必要があります。現在使用されているエネルギーについては、徹底的に無駄を省き、効率を最大限に向上させることによって、同じ効用(サービス)を得るために必要なエネルギー消費量を大幅に低減していくことが必要です。
第二に、使用するエネルギーについては、石炭や石油などの化石燃料から、太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能な自然エネルギーへ大胆に転換を進めることが必要です。また、自然エネルギーへの抜本的転換を進める過渡期にあっては、化石燃料の中でもCO2排出量が少ない天然ガスへの転換を進めることは当面の対策として有効と考えられます。
また温暖化対策に関しては、技術が重要な役割を果たすものであり、省エネルギー技術等の開発は大いに促進されるべきです。また、技術は技術開発後に大幅普及して初めて大きな効果を発揮するものです。既に実用化されている省エネ技術等でも十分に普及していないものも少なくありません。それらの技術にインセンティブを与え、広く普及させることは、エネルギーコストの削減にもつながる費用効果的で有効な温暖化対策です。
しかしながら、一部では、実現の可能性は確約できない将来の革新的技術開発に期待をかける傾向も見られますが、どの程度のコストがかかり温室効果ガス削減の可能性があるのか定かではないような未知の技術に依存することは、今すぐとりうる対策を先延ばしにすることにもつながりかねません。
IPCCの第3次報告書では「大半のモデルでは、既知の広範囲な技術オプションによって、次の100年間かそれ以上にわたって、550ppmや450ppmやそれ以下といった、幅広い範囲の大気中CO2濃度安定化レベルを達成できることが示されている」とし、「実際にはこれに伴う社会経済的、制度体制的変化が求められる」とつけ加えられています。
以上のようなことからも、適切な制度を整え、既存の技術を確実に普及促進することで削減を進めていくことが、これからの温暖化対政策の基本として重要であるといえます。