2006年10月5日

温暖化防止情報開示「名古屋」訴訟、全面勝訴!?
新日本製鐵、東ソー、三菱化学の定期報告書の開示を命じる!

 

本日午前10時5分、名古屋地裁は国に対し、新日本製鐵名古屋製鐵所、東ソー四日市事業所、三菱化学四日市事業所川尻工場、同四日市工場の4事業所についての2003年の電力及び燃料別消費量についての定期報告の開示を命じた。本件数値情報の開示によって当該事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとする国の主張に理由がないことが明らかになった。

情報開示請求と訴訟提起の経緯

(1)エネルギー消費量の情報開示請求

気候ネットワークでは、2004年6月、省エネ法第1種事業所の2003年度エネルギー消費(熱と電気)に関する定期報告の情報の開示請求を行った。その結果、対象事業所の85%(4280事業所)については開示がなされたが、残り15%(753事業所)については開示されなかった。

(2)東京・名古屋・大阪地裁において訴訟を提起

大規模エネルギー消費事業所の上記定期報告情報は実効性ある温暖化対策に不可欠の情報であることから、気候ネットワークでは、これら不開示決定に対して審査請求を行うとともに、モデル訴訟として、2005年7月に近畿経済産業局管内の7の代表的大口排出事業所について大阪地裁へ、また、中部経済産業局管内の9事業所についての名古屋地裁へ、さらに2005年8月にその余の経済産業局管内の12事業所について東京地裁へ、不開示決定処分の取消と開示を求める訴訟を提起した。わが国における最初の地球温暖化防止訴訟である。

名古屋地裁は、7月13日に国の証人尋問請求を採用せず結審し、本日、原告の請求を認容する判決に至ったものである。温暖化問題への取組の重要性を踏まえ、情報公開法を適正に適用して開示を命じた本判決は、温暖化対策を加速させるものとして高く評価される。

非開示理由は認められず

経済産業省は、本件定期報告書を開示することよって生じる競争上の不利益について、(1)製品当たりのエネルギーコストの推計が可能になり、製造原価の推計も可能となること、(2)当該事業所のエネルギー効率化水準を知られること、(3)燃料等の価格交渉等において支障を来すおそれのあること、(4)製造技術が推知されるおそれがあること等を理由として掲げていた。情報公開法第5条第2項にいう「権利利益を害するおそれ」とは、一般的抽象的なおそれでは足りず、具体的にそういった危険性が生じる可能性が強い場合に限られるべきである。およそ、何らかのおそれがあれば足りるとすれば、開示・非開示は全く行政庁の裁量に委ねられてしまうことになるからである。本日の判決では、国の主張する不開示事由には「具体的なおそれが認められない」とするものであって、情報公開法第5条第2項を適切に適用した判決である。

訴訟中に、開示請求対象の9割以上が開示に

なお、本件訴訟の審理中である2006年5月になって、経済産業省は、名古屋地裁での訴訟対象事業所のうちの約半分に当たる5事業所(出光興産愛知精油所、昭和四日市石油四日市精油所、横浜ゴム新城工場、同三重工場、明治乳業愛知工場についての不開示決定を「開示」に変更した。これらの事業所が開示による実質的不利益がないことを認めて開示に同意したことによるものであり、それまでの非開示決定は当該事業所の判断によるものであったことがより明らかになった。?
2006年7月以降、さらに326事業所についても不開示決定が「開示」に変更され、当初不開示としていた753事業所のうち340事業所について「開示」されている。2003年の第1種定期報告対象事業所(5033事業所)のおよそ92%の事業所(4620事業所)について開示がなされたことになる。?
  非開示事業所を含め、約200の事業所からの排出で日本の二酸化炭素の排出量の半分以上を占めることが明らかになっている。定期報告にかかる大規模排出事業所における燃料転換及び省エネルギーによる化石燃料の使用の削減は我が国の温暖化対策として極めて重要である。よって、非開示のまま残っていた事業所は高炉による製鉄所及びソーダ工業など一部の化学工業について訴訟及び審査請求が継続してきたところ、本日は、その代表的事業所について初めて裁判所において開示の判断が示されたものである。

発表資料

プレスリリース「温暖化防止情報開示「名古屋」訴訟、全面勝訴」(36KB)

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