2011年11月24日

再エネ法の調達価格等算定委員会委員に不適正なメンバー案
再生可能エネルギー推進には適正人事への再考が不可避?

環境エネルギー政策研究所
気候ネットワーク

 

 再生可能エネルギーの導入を大幅に拡大するため、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再生可能エネルギー促進法)」が今年8月に成立しました。

 

 法案の審議では、本制度の柱となる再生可能エネルギー電力の「調達(買取)価格」や「調達(買取)期間」の設定について、当初政府案で「総合資源エネルギー調査会」の意見を聴くこととされていた条文が全面修正され、法律には、新たな第三者機関として「調達価格等算定委員会」を設置し、国会同意人事として委員を決定するものとされています。これは、経済産業省主導で進めてきたかつての再生可能エネルギーの政策が、再生可能エネルギーを増やすのではなく、逆に導入を阻害する方向づけをしてきたという経緯があったことに起因し、今後の再エネ導入にあたっては公正なメンバーシップを国会の同意を得たうえで進める必要があるとの結論に至ったからにほかなりません。

 

 しかし、17日の議院運営委員会両院合同代表者会議で提示された「調達価格等算定委員会委員」は、全5名のうち、直接の利害関係者や、再生可能エネルギーの導入及び固定価格買取制度に消極的な立場をとってきた人が含まれており、本委員会の委員構成が不適正であることを指摘せざるを得ません。

 

 今後、未来に向けたグリーン産業を育て、民間の投資を呼び起こし、新規雇用を生み出すことが可能になるか、そして、化石燃料依存を減らしていくことができるか、は、この法律の制度内容に大きく左右されます。制度の骨格となる買取価格や買取期間が適正に設定されるよう、国会においては、この経済産業省提案の人事案を取消し、適正な委員を選定するよう、強く求めるものです。

<調達価格等算定委員会の委員案の不適正要因>

・進藤孝生(日本経団連地球環境部会長、新日鐵代表取締役副社長)氏は、日本経団連かつ特定企業の代表取締役副社長であり、特定の利害を反映することになりかねません。7月29日の衆議院経済産業委員会の参考人質疑では、参考人として電力多消費型産業(とりわけ電炉)の立場を強調しており、法案修正の結果盛り込まれた17条の減免対象の企業になる可能性もある直接的利害関係者です。また、日本経団連は、再生可能エネルギーの普及に反対をしてきた団体であり、当初三年間は普及(再生可能エネルギー事業者の利益)を重視するという附則第七条に反します。さらに、ご自身が、再生可能エネルギーに関する専門家ではありません。

 

・山内弘隆(一橋大学大学院商学研究科教授)氏は、日本の再生可能エネルギー市場停滞の原因を作った「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(いわゆる「RPS法」)の審議の中で、固定価格買取制度に否定的で、再生可能エネルギーの普及に消極的な姿勢を取ってきています。そして、7月29日の衆議院経済産業委員会の参考人質疑においては、本制度の価格決定に対して「一律の買い取り価格で、逆にエネルギー種間で競争していただく、効率的なものから入れていただく」ことを望ましいと発言しており、国会の意向であえて条文が修正された電源種ごとの価格設定にも否定的な立場を示しています。

 

・山地憲治(地球環境産業技術研究機構(RITE)理事・研究所長、元電力中央研究所 研究員)氏は、そもそも一律価格案を出してきた経産省の新エネルギー部会長であり、個別の価格設定のための会合で、「国会同意人事」でありながら兼務することは大いに疑問視されます。また、「RPS法」の審議のなかで、固定価格買取制度を中心的に批判する立場にあります。

 

 現在の委員案では、公正に再生可能エネルギーの普及にふさわしい制度検討を望むこともできません。国会において、委員の選出を再考し、適正なメンバーにおいて国会同意をすることを、強く要求します。

発表資料

プレスリリース本文(PDF:274KB)

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