2011年6月3日

気候変動を防ぎ、安全なエネルギー社会を築くための立法の優先を
~FIT法案及び地球温暖化対策基本法案の今国会での成立を~

気候ネットワーク代表 浅岡美恵

昨日の内閣不信任決議案の採択で国会が揺れ、政治への信頼もさらに揺らいだ。今、政治が最優先すべきは、集中して震災復興と福島第一原発の安定化のために必要な仕事を行うことである。さらに、他の原発の安全性の見直しも急務である。これらは、これからの国民の安全・安心な生活の基礎となるものであり、エネルギー・環境政策の重要な柱である。とりわけ、今国会で、提出されながら審議入り出来ていない法案のうち、以下の二つの法案について速やかに審議を進め、成立させる必要がある。

一つは、震災当日の3月11日に閣議決定された「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」である。大震災と原発事故を受けて、被災地の復興政策とも重ね合わせた再生可能エネルギー導入の動きが顕著であり、菅首相もG8サミットで、再生可能エネルギーの飛躍的普及を表明した。FIT法案は、ドイツなどのヨーロッパを始め世界各地で再生可能エネルギーの大幅普及の起爆剤となってきた全量固定価格買取制度を導入するための法案であり、今国会で何としても成立させなければならない。仮にこれが店晒しにされれば、再生可能エネルギー導入への政策的な後押しが欠如し、事業者等の積極的な動きを止めることになるだけでなく、東日本の被災地全体の復興を阻害することになりかねない。民主党環境部門会議再生可能エネルギーワーキングチームは、FIT法案を今国会で成立させるべきとする緊急提言を行った。自民党・公明党が審議に消極的との情報もあるが、その必要性・緊急性に照らせば、国会内でのFIT法案審議の優先順位を繰り上げ、全党一致して、必ずその成立を図るべきである。

もう一つは、昨年来、継続審議となっている「地球温暖化対策基本法案」である。温室効果ガス削減目標(90年比2020年25%削減、2050年80%削減)を掲げ、温室効果ガス削減のための政策手段として、キャップ&トレード方式の国内排出量取引制度、地球温暖化対策税(炭素税)、上述の固定価格買取制度の導入をうたう。「25%削減」は、気候変動に対処するために先進国として取るべきミニマムな削減行動であり、国際的にも、ダーバン会議(COP17)の開催前に日本の方針を固めることが求められている。  原発事故を受け、原発に頼らず25%削減は無理だという声も聞かれる。だが、未曾有の原子力被災を経験した我々のこれからのエネルギー政策の方向性は、原子力に頼らず、同時に、温室効果ガスの大幅削減を実現するシステムへの転換である。 6月1日、菅総理は、参議院本会議で、25%削減目標は維持し、再生可能エネルギーと省エネで達成すると発言している。地球規模問題に対して責任ある国の姿勢としてこれを歓迎する。国会では、その方針をしっかりと法律に位置付けるために、地球温暖化対策基本法案を成立させなければならない。

いずれの法案も、閣議決定に至る過程で、骨抜きや内容の後退がなされ、最善のものとは言い難い。しかし、このような時だからこそ、まず、一歩踏み出すことが必要である。国会が、審議の過程で問題を浮き彫りにし、必要な修正を図り、政省令でも確かな対応をとらせていくべきだ。それこそが、政治の仕事である。

 

発表資料