2008年1月26日

福田首相、ダボス会議で国別総量目標の設定を発表
しかし目標設定のあり方に大きな課題。大幅削減の方向性見えず

 

気候ネットワーク

スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で、福田首相は26日、特別演説を行い、気候変動問題についての今年のG8での責任を述べ、日本の取り組みとして、日本としての国別総量目標を掲げて取り組むことを発表した。また、日本を低炭素社会に転換し、low carbon planetにする先導役となっていくとして、近く、生産の仕組み などあらゆる制度を根本的に見直すための検討に着手することも明らかにした。

日本のNGOと国際的なNGOはそれぞれに、ダボス会議への出席に先立って、福田首相に対し、昨年12月のバリでの合意を受けた日本の2020 年の総量目標の設定方針を示し、国内政策の強化を求めていたところであり、ようやくその方向へ向かう決意を明らかにしたことは歓迎したい。

しかし、目標設定のあり方については大きな疑問がある。先のバリ会議における京都議定書の特別作業部会(AWG)で日本も合意した文書には、先進国は2020年に1990年比で25~40%の削減が必要とのIPCCの指摘が明記されている。しかし、今回の提案では、セクター別アプローチによるボトムアップの積み上げで総量目標を設定するとし、その基準年を、京都議定書で合意された1990年ではなく、これは(その後の、日本の排出が増加した時点に)見直されるべきとしている。これでは、セクター別の積み上げによる削減目標がどのような総量になるのか今の時点では全く不明であり、基準年を移すことで実質的には京都議定書の目標からさほど変わらないものとなる可能性さえある。総量で目標が示されることになっても、その中身は、先進国が2020年に 1990年比で25~40%の削減が必要とのバリ合意を受け止め、これと整合する総量での削減数値目標を設定するものとはいいがたい。しかも、先進国の削減基準年の移動は、排出量をこれまでに大幅に増やしてきた日本に都合よく京都議定書の基礎を変えようとするものであって、世界の新たな不信を招くだろう。

福田首相は、G8でのリーダーシップを発揮するために、これまでの経団連や経済産業省の主張に引きずられたこのような提案ではなく、バリ合意と整合する日本の総量削減目標を法的拘束力のある目標として設定することを明確に示すべきである。また、今、見直し中の京都議定書目標達成計画案は、当面の目標達成の担保にも欠け、かつ、長期的展望に欠けるものである。直ちに、国内排出量取引や環境税の導入などに向けた検討など、国内政策の抜本的強化の検討を開始すべきである。

以上

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