建設的な歩み寄りに、大臣のリーダーシップを
~主要排出国の参加する枠組みの構築のためにこそ~

 

2010年12月8日
気候ネットワーク代表 浅岡美恵

メキシコのカンクンで、気候変動の次期枠組みの交渉(COP16/CMP6)が開催されている。あいにくここで最終合意を成し遂げる流れにはないが、来年のCOP17における合意の重要要素について決定し、合意の形式も明らかにすることが期待されている。

しかしカンクンでは、日本政府の姿勢が際立って問題になっている。いわゆる「京都議定書の第2約束期間の延長反対」論である。

日本の「全ての主要国が参加する実効性ある『1つの枠組み』」提案は一見、環境のために正しい提案のように思える。しかし実際のカンクンでの交渉は、そのような状況では全くない。

交渉は、京都議定書の作業部会と気候変動枠組条約の作業部会の2つが並行して開かれており、長い経緯を経て次期枠組みを検討している。NGOのみならず世界の大勢は「京都議定書の第2約束期間の合意」と「条約の下での法的拘束力ある合意」の2つを来年最終合意するべきだと考えている。なぜならそれが、法的拘束力ある京都議定書の仕組みを維持しながら、もう一つの合意で主要国の行動を確保する、現実的で環境に最も効果的な拘束力ある仕組み生み出すアプローチだからである。

しかし政府は、すぐに成し遂げられないことが明らかな「一つの枠組み」にこだわり、逆に中国などの頑なな姿勢を招いている。このままでは日本は確実に孤立し、交渉決裂を招く。その結果日本は、世界から外交上の失点と大きな批判を浴びることにすらなる。

カンクンが妥協の時ではない、というのも間違いだ。閣僚級の協議で、世界は歩み寄りを始めつつある。日本も、歩み寄りによって実現する大きな合意に向け、今すぐに柔軟な姿勢を示す必要がある。

なぜEUやオーストラリア、ニュージーランドなど先進国を含む大多数の国が、京都議定書の第2約束期間が必要という立場を取るのかも考える必要がある。どの国も、米国や中国を置いていっていいなどと考えていない。むしろ、2トラックで枠組みを作ることが、最も確実に世界の削減を引き出し、米中の行動を引き上げる枠組みになると考えているからに他ならない。

松本環境大臣が、残された2日間でこのまま「一つの議定書」と突き進めば、日本の姿勢が野心的な合意を遠ざけ、米中を遠ざけ、ひいては、気候変動を悪化させることになる。歩み寄りこそが、何よりも米国・中国をひきつけ、環境によい衡平な枠組みへの第一歩となることを知るべきである。

前半で交渉担当者が担ってきた非建設的なムードを変えられるのは、ここにいる松本環境大臣しかない。「反対」とだけ言ってきた交渉から、建設的な妥協の姿勢へと転換させることで、大臣は、交渉全体の空気を変えることが出来る。国内から菅首相が、その柔軟性を後押しすることも必要だ。

私たちは松本大臣が、「カンクン合意」の成立のためにまず日本の舵を切り、交渉が暗礁に乗り上げるのを回避し、逆に助ける役割を果たすよう、望みたい。

 

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