2002年5月31日

京都議定書の国会承認に際して

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

本日、参議院の本会議で京都議定書の批准承認と、地球温暖化対策推進法の改正案が成立した。21日の衆議院に続く参議院の承認を受けて政府は、6月4日に閣議決定を行い、同日、ニューヨークの国連本部に受諾書を提出する予定である。日本がヨハネスブルグ会議に向けて批准を了することを歓迎する。

日本の批准承認の情報は、国内のみならず、すでに世界を駆け巡り、各国のNGOからも歓迎されている。地球温暖化防止京都会議(COP3)から4年半を経て、京都会議の議長国としての日本の責任の一つをようやく果たしたものである。今後、国際社会と協調して国内外に温暖化防止社会を築いていくための土台となることを期待する。

しかし、正念場はこれからである。京都議定書の日本における実施及び、議定書自身の補完、強化における日本の課題が一層明確になったからである。
第1に、京都議定書の目標達成に本腰を入れて取り組まなければならない。既に90年比で約10%も排出増加の状態にあり、批准後直ちに、吸収源の大幅利用や他の国からのクレジットの移転に多くを依存するのではなく、6%削減目標を確実に遵守できる道筋を作ることが不可欠である。各省庁の対策の寄せ集めである現行の地球温暖化推進大綱による顕著な排出削減効果は期待できないことは明らかになっている。その余の対策を先送りするのではなく、政府全体としての温暖化対策税など実効性の高い施策を、市民を巻き込んで協議し、導入していく必要がある。政府には、温暖化防止のための強い政治的意思を国民に示し、これまでの慣行にとらわれない大胆な政策転換を図ること求めたい。

また、国民生活における取組を進めるには、地域における市民や事業者の温暖化防止の取組を誘導、支援する政策が不可欠である。改正された地球温暖化対策推進法によって、NPO法人による都道府県地球温暖化防止活動推進センターの設置が可能になり、各セクターの協働による地球温暖化対策地域協議会を位置付けている。都道府県センターをNPO法人によって運営することは、その役割の本旨にも合致するものであるが、そのためには、政府、自治体とNGO,NPOとの協力連携の支援、推進を図る必要がある。私たちも足元からのこうした取組を各地で推進したいと考えている。

なお、本日、EU(欧州連合)15ヶ国も全体として国連への批准手続きを完了した。これにより、京都議定書の発効はまさに現実のものとなってきた。ロシアや東欧諸国などの残りの先進国が、日本、EUに続き、速やかに批准手続きを進め、年内にも発効が実現することを強く期待する。

 

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