2002年3月29日

京都議定書批准案と改正温暖化対策推進法案の閣議決定に際して

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

政府は今日、地球温暖化防止のための京都議定書批准承認案と地球温暖化対策推進法改正案について閣議決定し、国会に提出した。ようやく批准へ向けて動き出したことは歓迎したい。
 推進法はもともとが骨抜きの法律で、政府は98年の制定時に「二段ロケットの一段目」と説明していた。しかし今回の改正案は、京都議定書の目標達成に向けた担保法として必要な基盤整備すら整えられておらず、「二段目のロケット」と呼ぶには極めて内容が乏しい。

●今後の国会の審議においては、以下の点について十分議論して法律を強化し、ヨハネスブルグ・サミットでの発効に間に合うよう批准を承認することが必要である。今後の政治のイニシアチブに期待する。

1.「京都議定書目標達成計画」策定・評価・見直しのプロセスに市民参加を

改正法案では、「計画」の策定・見直しは政府が行うとし、情報の公開や、市民参加の仕組みが全く盛り込まれていない。市民が温暖化対策の実施主体となっていくためには、現行のパブリックコメントのような形ばかりの市民参加に終わってはならず、「計画」は、市民が策定段階から参画したプロセスにおいて、問題だらけの「新大綱」にとらわれることなく、十分に議論し決定する必要がある。

2.温暖化対策に不可欠な情報公開と評価システムの整備を

地球温暖化対策を適切に行うためには、総排出量だけでなく、地方自治体等において適切な措置を取るために地域の具体的な排出実態や事業所毎の排出量を把握し、公表する仕組みが不可欠である。また事業者の取り組みについての第三者評価も不可欠である。温暖化対策の基盤ともいえるこれらの仕組みが今回の改正で整備されないことは極めて問題である。

3.地域での実効性ある取り組みの充実を

地方自治体は、事務・事業に関する計画の策定だけでなく、総合的な施策を策定・実施しなければならない。「地球温暖化対策地域協議会」では、地域でのあらゆる排出削減の取り組みについて幅広く協議する場とすべきである。

4.対策の実施・見直しの時期は、前倒しを妨げないこと

温暖化対策には、炭素税などの経済的手法や効率規制強化など実効性の高い施策の早期実施が必要である。改正法案では、見直し時期を「平成16年及び平成19年において」としているが、その前段階において追加的な対策を実施することを妨げないようにすべきである。

●保守党へ示した政府回答を公表し、京都議定書の法的拘束力に関する誤解を防ぐこと

報道によれば、政府は、保守党から政府への17項目の質問に対し、「目標を達成できなかった場合の措置に対する法的拘束力導入には反対する」などと回答したとされる。政府方針を示した本回答書は質問書とともに一般に公開すべきである。なお一部に、「遵守制度に法的拘束力を持たせなければ目標を守らなくてもよい」との誤解があるようだ。しかし、遵守措置に対して法的拘束力を導入することは国際司法機関への訴えの提起が可能になるもので、京都議定書の数値目標には法的拘束力があり、守れなかった場合の措置も既に決定されており、目標は「守らねばならない」ものである。

 

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