2001年6月12日

京都議定書潰しへの道を歩み始めた日本
-あわれな日本外交に決別を、川口大臣を罷免せよ-

気候ネットワーク 代表 浅岡 美恵

 11日、アメリカのブッシュ大統領が京都議定書にかわる提案を提示した。また同日プロンクCOP6議長が新しい調停案を提示した。

アメリカ提案-理解を示す日本は、京都議定書を葬り去っている

11日に出されたアメリカの提案は、温室効果ガス削減を具体化した京都議定書を完全に消し去り、温暖化の科学等に関する調査研究を軸にしただけの、全く論外の提案である。ブッシュ大統領は「京都議定書には致命的な欠陥がある」とも言明した。これは地球温暖化対策を1980年代(ようやく政治レベルで地球温暖化問題が認識され始めた頃)に逆戻りさせてしまうものである。今、温暖化は確実に進んでおり、一刻も早い"行動"が求められている。そのためには、世界全体の唯一の枠組みである京都議定書を各国が批准し発効させることが一番の早道である。これを反故にするアメリカ提案は、どの国にとっても受け入れられるはずがない。日本以外の多くの先進国は既に議定書批准の姿勢を明確にしている。
 にもかかわらず、川口大臣が今朝の記者会見にてこの米国提案へ一定の理解を示したことは、日本がまさに京都議定書の死を宣告しようとしているに等しい、非常に嘆かわしい対応で、怒りをぬぐい得ない。これは「日本は批准すべき」とした国会決議に明らかに反している。川口大臣を直ちに罷免すべきである。
 「京都議定書の2002年の発効」と「米国の京都議定書への参加」はもはや両立しない。従って、小泉首相は直ちに「京都議定書を批准」する姿勢を明確に表明すべきである。

プロンク提案-吸収源での特別扱いは日本が「問題児」の証拠

プロンク議長の新しい調停案では、日本だけを特別扱いし、日本の吸収源の要求を全面的に受け入れるものになった。日本政府の主張する「吸収源3.7%」は、植林などをして吸収分を増やすこととは何ら関係のない数字合わせで得ようとするものであり、全く道理にかなっていないと世界から大きな批判を浴び続け、昨年のハーグ会議決裂の一因ともなった。
 今回プロンク議長の案では、吸収源に大幅な制限を加えることを原則としているにもかかわらず、露骨に日本にだけに特例措置を取るのは、日本が外交上「問題児」扱いされているためである。日本だけが特別扱いされる理由はないにもかかわらず、こうした扱いを受ければ、「日本だけが汚い」との印象を世界に与えてしまう。これを「吸収源で前進があった」と嬉々として評価する日本政府は、世界における「問題児」との自覚が完全に欠如している。日本市民としてこれほど恥ずべきことはなく、断固受け入れられない。

京都会議の議長国としての誇りが幾分でも残っているのなら、この後向きな環境外交に終止符を打ち、国内での温暖化対策を進め、京都議定書を堅持する姿勢を今こそ明示すべきである。

 

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