「エネルギー基本計画」政府案
原発事故の教訓も踏まえず地球環境の危機にも
向き合わない内容は受け入れられない

 

2014年3月4日
認定NPO法人気候ネットワーク

2月25日、資源エネルギー庁は「エネルギー基本計画」の政府原案(「計画案」)をとりまとめ、WEBで公開した。気候ネットワークでは、パブコメで(1)「原発ゼロ」を前提とすること、(2)温室効果ガスの大幅削減を目指すこと、(3)石炭依存からの脱却をめざすこと、(4)省エネの可能性を深掘りすること、(5)再エネ導入目標をかかげ大幅な導入を目指すこと、(6)国民的議論をふまえること、の大きく6点で意見を述べていた※1。しかしこれらの意見は反映されることはなく、基本政策分科会でのとりまとめの方針がほぼそのまま焼き直されただけであり、福島第一原発事故の教訓も踏まえず、地球環境の危機にも向き合っていない時代錯誤な内容であると指摘せざるを得ない。

 

1.わたしたちが直面している問題のとらえ方

【原発問題】

 東日本大震災から3年が経過するが、東京電力福島第一原子力発電所事故の原因究明、放射能汚染水垂れ流しの現状、被災者の救済など一切が、解決も収束もしていなければ、一体これからその対応にどれくらいの費用がかかるのかも未知数である。さらに、これまで動かしてきた原発の使用済み核燃料の処理問題や核燃料サイクルの事実上の破綻など、どれをとっても現時点で原発再稼働や核燃料サイクルを推進するような判断ができる状況ではない。また、世界一の地震大国で、これから巨大地震も想定されることを大前提にすべきだが、こうした震災対応についても言及がない。

【気候変動問題】

 気候変動問題については、昨2013年IPCC第五次評価報告書第一作業部会の報告書がまとめられたところであり、今後の気温の上昇は免れず、人類にとって危険な状態を回避するためには、地球の平均気温の上昇を工業化以前に比べて2℃の上昇にとどめることが必要であるとされる。今、世界が2℃目標を達成するために、大幅削減が求められているが、その中でいかに各国が削減目標を深掘りするかが模索されているところだ。先進国は2020年までに1990年比で25~40%削減との水準が示された。日本は世界全体の削減に向けた牽引役となるべく、こうした科学的知見を踏まえた上で、国内での野心的な削減目標を掲げることを計画の中で示すべきである。

【両者を同時に解決する方向性の欠如】

 今回の計画案第一章では、現状の課題として、化石燃料への依存の増大、国富流出、供給不安の拡大、温室効果ガス排出量の急増などをあげ、その原因が原発事故後、原子力発電所の全停止に起因するかのようにとらえられている。そもそもトラブルが多く、過酷事故があれば全電源停止させなければならないような原発をあてにして、地球温暖化対策や化石燃料・資源問題などの解決の糸口を見いだそうとし、安全神話の上に立った原発推進計画そのものが間違いであったのであり、その反省にたって、過去の計画を大胆に見直し、再生可能エネルギーや省エネルギー重視の計画に改めていくべきである。その視点がなければ、原発問題と気候変動問題を天秤にかけるような愚を繰り返し、原発と化石燃料に依存する構造から抜けることはできない。

 

2.エネルギーミックスの問題

【原発と石炭をベースロード電源に位置づける問題】

 政府計画案は、上述のように、わたしたちが直面する問題に向き合っていないため、計画案の第2章では、「3E+S」としてエネルギーの安定供給、最小の経済負担、環境への適合を図ることを基本的視点とし、基本スタンスがこれまでの「エネルギー基本計画」から変わっていない。そして、原発については、「運転コストが低廉で変動が少なく、運転時に温室効果ガスの排出がない」として、「エネルギー需要構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」とし、また、石炭を「地政学的リスクが最も低く」「単価も化石燃料の中で最も安い」として「優れた重要なベースロード電源」と位置づけ、旧来のエネルギー基本計画の構造がそのまま残った。欧米では、柔軟性のない原発と石炭をベースロード電源に位置づける古い発想を脱し、再生可能エネルギーを優先的に接続し、柔軟性の高い発電システムを構築する時代に入っている。

【原子力を国産エネルギーとする問題】

 原子力については、燃料となるウランが海外からの輸入にすべて依存しているものであり、国産エネルギーとの位置づけはおかしい。第一章第一節に「原子力を含むエネルギー自給率は19.9%に改善された」とし、第二章第一節のP17で「我が国が国産エネルギーとして活用していくことができる再生可能エネルギー、原子力」として再エネと原子力を同じように国産エネルギーと位置づけた上で、「自給率の改善を実現する政策体系を整備していくことが重要」などと示している。原発をエネルギー自給率に位置づける不自然さとともに、原子力依存度を上げてきたことを「改善」とし、今後も「改善することが重要」などとするのは、福島第一原発事故の反省の上に全く立っていない表現である。

2010年のエネルギー基本計画では「自主エネルギー比率」を2030年までに約70%とすることを目標に掲げ、その大部分を原発で見込んでいたが、これについても当時からの見直しにたっていない。国産エネルギーやエネルギー自給率の向上は、再生可能エネルギーにこそ当てはまるものである。

【電源構成と目標についての問題】

 2010年の「エネルギー基本計画」では、2030年の絵姿として次のことが示されていた。

  1. エネルギー自給率(現状 18%)及び化石燃料の自主開発比率(現状約26%)をそれぞれ倍増させる。これらにより、自主エネルギー比率を約 70%(現状約 38%)とする。
  2. 電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約 70%(2020 年には約 50%以上)とする。(現状34%)
  3. 「暮らし」(家庭部門)のエネルギー消費から発生するCO2を半減させる。
  4. 産業部門では、世界最高のエネルギー利用効率の維持・強化を図る。
  5. 我が国に優位性があり、かつ、今後も市場拡大が見込まれるエネルギー関連の製品・システムの国際市場において、我が国企業群が最高水準のシェアを維持・獲得する。

 このように、2010年の「エネルギー基本計画」では、原発や化石燃料をそれぞれ倍増させることを目標にかかげ、CO2削減は産業部門などの大規模排出源には切り込まず、家庭部門に押しつける将来像が描かれていた。

今、原発事故の問題、気候変動問題をふまえた上で、エネルギー基本計画を大きく方向転換すべきであるが、今回、将来像は示されなかった。そして、P25の「政策の時間軸とエネルギーミックスの関係」において、「エネルギーミックスについては、原子力発電所の再稼働、固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギーの導入や国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの地球温暖化問題に関する国際的な議論の状況等を見極めて、速やかに示す」と書かれたとおり、「ベストミックスの目標を決定する」ことが先送りされた。計画案で示された「電源構成」をみてみると、原発や石炭火力をベースロード電源に、LNGやLPガスをミドル電源とし、石油・揚水式水力をピーク電源として示され、再エネには全く期待していないかのごとくの扱いである。

 

3.コストに関する問題

【原発や石炭のコストを低廉とする問題】

 上述したように、計画案では、原発のコストを低廉とし、石炭のコストを化石燃料の中でも最も安いとしている。原発に関しては、政府のコスト等検証委員会で8.9円/kWh以上と算定されているとおり、最低でも8.9円/kWhいうことであり、福島第一原子力発電所事故後の事故処理費用・賠償費用などもきちんと算定されておらず、その上限は天井無しである。

 また、石炭は化石燃料の中で熱量あたりのCO2排出量が最も高いが、十分な税率の炭素税や石炭税を導入することもなく、気候変動負荷が全く内部化されていないのが現状である。気候変動の被害など算定することが困難である。また、化石燃料には資源価格上昇が予測され、急激な価格上昇リスクもある。

 これらの費用を見込まず、コストが低廉なエネルギーと位置づけて「ベースロード電源」にすることは問題である。

【再生可能エネルギーのコスト】

 一方、再生可能エネルギーコストは、「太陽光 30.1~45.8 円/kWh、風力 9.9~17.3 円/kWh」とされ、原発や化石燃料よりも高いことが強調されているが、普及とともにコストは下がっており、将来的にもっと低下することが想定される。

 それぞれの特徴をふまえれば、原発や化石燃料は費用が上がり、再生可能エネルギーは競争や技術の発展によってコストが下がると見られているが、計画案の中でほとんど見込まれていない。

 

4.パブコメのとりまとめや国民的議論に関する問題

【パブコメ意見のとりまとめの問題】

1月6日締切りで集められたパブリックコメントは、2月25日の政府案の発表とともに、WEBでその報告が発表された。提出された意見件数は18,663件で、そのうちの「代表的な意見を抽出し、整理した」として、公表されたペーパーは、128種類にくくられ、賛否両論が記載されている。資源エネルギー庁に都合の良い形でパブコメが使われた印象があり、提出された意見を反映させているとは言えない。

とりわけ原発に関しては、2012年の「エネルギー・環境に関する選択肢」の際に集まったパブコメのうち、9割は原発に反対の立場を示すものであったが、今回のパブコメではどういう結果だったのかも示されず、原発推進の意見が複数にわたってまとめられているのは非常に不自然である。

【国民的議論やタウンミーティングはなし】

 2010年の「エネルギー基本計画」の改定にあたっては、計画改定の閣議決定前に全国11箇所で「環境・エネルギー政策に関する国民対話」が政府主催で開催された。また、2012年夏には、「エネルギー・環境に関する選択肢」が示され、意見聴取会、パブリックコメント、討論型世論調査などの国民的議論が行なわれ、エネルギー計画の策定にあたって民意の反映が多少なりとも試みられた。このように、特に東日本大震災後、エネルギー環境政策に関しては、エネルギーに対する意識が高まっているにもかかわらず、今回たった1ヶ月のパブコメをアリバイ的に行ない、すぐさま計画案をまとめ、閣議決定に持ち込むのは横暴である。

 今回の改定プロセスに問題があることについては、パブコメでも多くの指摘が示されているが、これに対しての事務局のコメントは、「寄せられた意見について、丁寧に精査し、エネルギー基本計画の政府の原案をとりまとめました」と繰り返すばかりであり、何ら反映されていない。

 

 今後、与党のワーキングチームで議論し、閣議決定する見通しが示されているが、上記のような問題をふまえて現状の政府案を全面的に見直すよう求めたい。

以上

 

声明本文データ

「エネルギー基本計画」政府案 原発事故の教訓も踏まえず地球環境の危機にも向き合わない内容は受け入れられない(2014年3月4日 PDF)

 

関連リンク

・「エネルギー基本計画」の政府の原案(2014年2月25日)

・新しい「エネルギー基本計画」策定に向けたパブリックコメントの結果(2014年2月25日)

・「エネルギー基本計画」に対しての意見 気候ネットワーク(2013年12月18日)

・「環境・エネルギー政策に関する国民対話」2010年5月14日~6月11日

・市民版「エネルギー基本計画」 2012年8月29日

 

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