IPCC第五次評価報告書第二作業部会横浜会議閉幕

気候変動の甚大な影響を再確認
日本は大幅削減に向け、リーダーシップを

 

2014年3月31日
認定NPO法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

 

日本の横浜において、今月25日に開幕したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第38回総会が5日間にわたる会議を終え29日に閉幕し、第五次評価報告書第二作業部会の最新報告書が本日3月31日に発表されました。この報告書では、気候変動の影響が現在、陸域、海域のあらゆる場所で表れていることが明らかにされ、これまでに予測されていた気候変動の影響が現実に起きていることが再認識されました。気候変動の適応策がフォーカスされると同時に、気候変動の影響が私たちの適応の限界を超えうることも示されました。世界が温室効果ガスの排出を抑制するための積極的な対策をとらなければ、人類社会の基本的な機能に対する大きな混乱が起こることを、改めて私たちに突きつけるものといえます。

 

石原伸晃環境大臣は、総会開会式にあたって、「2020年の東京オリンピック開催に向けて、低炭素社会を目指すこと」や「COP21での2020年以降の枠組みの合意に向けて日本がリーダーシップをとること」を宣言されました。また、「政策立案者は、現状の温暖化対策では限界があることを認識し、政策転換が必要であることも理解しなければならない(As policy makers, we must recognize that there are limits to the current climate change policies and we have to understand that policy transformation is necessary.)」と述べられました。まさに、今現状の政策の延長ではなく、政策転換に向けて行動を起こすべき時です。

 

しかしながら、昨年秋にポーランドのワルシャワで行なわれたCOP19では、日本はこれまでの温室効果ガス目標「90年比25%削減」を撤回し、2020年までの削減目標を「2005年比3.8%削減(1990年比3.1%増加)」と、実質的に増加を意味する暫定的な数値目標を掲げて世界から非難を受けました。さらに、今回のIPCC総会の開催中、日本の電力会社各社は2014年度の電力供給計画を発表し、石炭火力を想定しているとみられる火力発電所の増設計画を新たに打ち出し、2020年前後からの稼働見通しとしています。これらの火力発電所は2020年稼働を予定しているというのですから、現下の原発再稼働問題とも次元を異にするものです。このように、日本のエネルギー・気候変動政策は、過去の政策の延長というより、温暖化防止に逆行するものというほかありません。

日本政府は、IPCC第五次評価報告書を真摯に受け止め、これまでの温暖化政策を根本から見直し、再生可能エネルギーの大幅な導入と大胆な省エネの推進政策に転換して実行することで、2020年以降の国際枠組合意に向けたリーダーシップをとるよう期待します。

以上

*国際NGO・気候行動ネットワーク(CAN)による声明も合わせてご覧ください。

※昨年東京電力が2019年稼働の電力260万kWの石炭火力発電所を見込んだ入札をしたのに続き、今回の需給計画では、東北電力(60万kW)、九州電力(100万kW)、中部電力(100万kW)、関西電力(150万kW)、東京電力(200万kW)の火力発電所の増設計画を打ち出し、いずれも2020年前後の稼働を見込んでいる。

 

プレスリリース本文

プレスリリース「IPCC第五次評価報告書第二作業部会横浜会議閉幕 気候変動の甚大な影響を再確認 日本は大幅削減に向け、リーダーシップを」(2014年3月31日、PDF)

 

参考ウェブページ

●環境NGO共同記者会見における気候ネットワークのステートメント
2014年3月30日、IPCC第2作業部会報告書のとりまとめを受けて環境NGOが共同で開催した記者会見にて発表したステートメントです。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ウェブサイト
IPCCについてはこちらをご覧ください。英語です。

●IPCCによるプレスリリース(原文"IPCC Report: A changing climate creates pervasive risks but opportunities exist for effective responses" 31 March 2014)
IPCC第五次評価報告書第二作業部会について、IPCCが2014年3月31日に発表したプレスリリース(英語)です。クリックをすると原文のPDFファイルがそのまま開きます。

●気候行動ネットワークによるプレスリリース(原文"World leaders must respond to IPCC's harrowing portrait of a future under extreme climate change " 31 March 2014)
IPCC第5次評価報告書について、気候行動ネットワークが3月31日に発表したプレスリリースです。「気候行動ネットワーク(Climate Action Network;CAN)は、気候変動問題に取り組む、世界の850のNGOの国際的なネットワークです。

※過去の資料はリンク切れとなっています。詳しく知りたい方は事務局までご連絡ください。


第1作業部会報告書関連

●気候ネットワークによるプレスリリース「IPCC第五次評価報告書 危機を回避するために日本でも叡智ある選択と行動を」
2013年9月27日、IPCC第1作業部会報告書の発表に際して気候ネットワークが発表したプレスリリースです。

気象庁 IPCC第5次評価報告書
気象庁によるウェブページ。2013年9月に発表されたIPCC第1作業部会報告書の日本語訳が掲載されています。日本語です。

※過去の資料はリンク切れとなっています。詳しく知りたい方は事務局までご連絡ください。

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