気候ネットワーク 15周年に寄せて、各界でご活躍のみなさまからいただいたメッセージを紹介します。

15th-anniversary

2013年、私たちの地球温暖化防止活動は、15周年を迎えました。

寄せられた特別メッセージ

次のメッセージはニュースレター「気候ネットワーク通信」90号に掲載されたものです(所属名・役職名などは当時のものです)。

和田 武さん(元立命館大学教授 / 自然エネルギー市民の会代表)

wada 15 周年、おめでとうございます。前身の気候フォーラムも含め、気候ネットワークが日本の地球温暖化対策を推進する上で重要な役割を果たされてきたことに敬意を表します。私は 1980 年に地球環境保全研究を開始し、90 年『地球環境論』出版、92 年リオでの国連環境開発会議に参加し、96 年に立命館大学に赴任しました。

COP3 成功に向けた気候フォーラムの発足がその年末で、98 年に気候ネットワークが設立されました。大学で環境保全論や資源エネルギー論を担当した私は、ゼミ生・受講生諸君に気候ネットワークでボランティアをやって生きた学びをするよう勧めました。定年退職するまでいつも何人かがお世話になり、彼らは卒業後も気候ネットワーク等、各地で活躍してくれています。私自身、いまも気候ネットのみなさんと研究や活動ができていることは大きな喜びです。今後、地球温暖化防止と脱原発を実現するためには、再生可能エネルギーの普及促進が鍵です。普及主体としての市民の取り組みを活性化するために、気候ネットと協力していければと願っています。

 

クリスティアナ・フィゲレスさん(国連気候変動枠組条約事務局長)

Figueres 気候保護の分野で 15 年間にわたって活動を成功させてきた気候ネットワークに、お祝いと称賛の言葉を贈ります。気候ネットワークの前身である気候フォーラムは、各国が歴史的な京都議定書に合意した古都「京都」で設立されました。

気候ネットワークと国際コミュニティは、そこから長い道のりを歩んできました。この間、各国政府は、気候変動に立ち向かうための唯一の法的拘束力ある条約として京都議定書を延長させ、2020 年から発効する合意を 2015 年に成立させるために交渉を続けています。気候ネットワークは日本政府と地方自治体が環境政策を立案する過程で重要な役割を果たし、温室効果ガスの削減努力を強く求めてきました。皆さんの努力が実を結んだこととして 1 つ強調したいのは、日本では再生可能エネルギー固定価格買取制度が導入されたことでしょう。太陽光発電が飛躍的に普及していることはよく知られています。

しかし、気候変動の悪影響を免れるには更なる努力が必要です。世界は低炭素社会に向けて急速な変化をまさに必要としているのです。日本の優れた技術力、技術革新の力は世界に名高く、先駆的な役割を担っています。気候ネットワークなら、日本の今後のエネルギー安全保障に「グリーンな考え」を組み込んでいけますし、そうしなければなりません。また、日本の全ての人たち(主婦、店主、学生、会社員、公務員も)は、より低炭素で持続可能な社会に向けて努力する必要があります。国による取り組み、国際的な取り組みと市民の行動がうまく組み合わさってこそ、私たちは気候変動の課題に立ち向かっていけるのです。気候ネットワークがこの 15 年間、持続可能な未来に向かう道を共に歩む良き仲間であることに感謝します。そして、これからもその道を共に進んでいけることを楽しみにしています。

(抄訳:伊与田昌慶)

大木 浩さん(元環境大臣 / 元 COP3 議長)

ohki NGO「気候ネットワーク」は、本年十五周年を迎えます。この団体は、1997 年京都で開かれた国連気候変動枠組み条約第三回会議(COP3)を、民間レベルで支援する為に設立された「気候フォーラム」の趣旨を受け継いで翌年発足し、産業・経済、エネルギー、市民生活など、多方面の分野で、市民の立場から「社会全体を変える」ことを目指して活動を続けてきており、数多くの NGO の中でも目立った成果をあげています。頻繁な政権交代の影響もあり、日本では地球温暖化防止政策は必ずしも十分な成果をあげておりませんが、最近世界各地で見られた大型風水害や異常気象の多くが地球温暖化の着実な進行の影響を受けていることが分かっており、温暖化防止が人類全体の平和と安全にかかわる、もっとも重大な課題であることは世界の常識です。このような情勢の中、「気候ネットワーク」へのわたしたちの期待は一段と高まります。十五周年記念を契機として、更なる飛躍を心から祈念いたします。

 

末吉 竹二郎さん(地球環境問題アナリスト)

sueyoshi いま、手許に「気候変動に関する欧米の法制度」(2008 年 5 月)がある。気候ネットが英国の「気候変動法案」などを日本語訳したもので大著だ。世に数多ある NGO の中で、こんな硬派の知的作業ができるのは気候ネットワークを含め極く僅か。それを眺めながらこんなことを考えた。

世の中を変えるには、2 つのアプローチがある。一つは、既成事実の積み上げ(de facto)。もう一つは、法的枠組み(de jure)だ。その視点から、地球問題への対応を見ると、日本は既存の仕組みを温存したまま何をやるかの議論ばかり。つまり、日本は de facto の国だ。一方、欧米は本質論を戦わせ、大きな変革が必要となればなるほど、法的担保の下で永続的な仕組みを作る。正に、de jure で世の中を変えていく。温暖化対応は社会を大転換させる息の長い戦いだ。とすれば、真に地球を守るのは de jure なのだ。その de jure を日本に根付かせ、欧米と肩を並べる国にするには、気候ネットワークの力はますます必要になるのだ、と。

 

西岡 秀三さん(地球環境戦略研究機関 / 元国立環境研究所)

Nishioka 東日本大震災は大変悲しい出来事でしたが、あらためて、人が自然の中で生きているのだということを思い出させてくれました。東北の豊かな自然がわれわれの食卓を支えてくれている。その一方で、おだやかな生活と隣り合わせのリスクを負って、東京のエネルギー供給を担っている。全国の人が、自然と生活とエネルギーがつながっていることを知り、節電に動きました。そしてまた、安定した気候のめぐみとそれを損なう人間の驕りにも思いをはせることになりました。

国際・国内政治の動きの遅さを他人ごとのように言っているだけでは、この自然を子孫に残せない。身の回りの自然と自分の生活を見なおし、何か自分でも動いてみたい。悲しみをこえて、そんな気持ちを多くの人が分かち合うようになってきたのではないでしょうか。これこそ、市民の力を結集するNGOの原点でしょう。気候ネットワークが 15 年の積み重ねに加えて、より市民生活に密着した活動で、世界と人々をつなぎ、一層の発展をすべきときにきましたね。

 

高村 ゆかりさん(名古屋大学)

takamura 気候ネットワーク設立15周年おめでとうございます。

気候変動問題のために活動するNGOのナショナルセンターとして、国内外で日本を代表するNGOとしての確固たる地歩を築いてこられた、これまでのスタッフをはじめ関係者のご尽力に心より敬意を表します。

私は、1999年から特に国際交渉の場面でご一緒し、マラケシュの合意やコペンハーゲン会議、カンクン合意など、国際交渉のダイナミズムを現場で一緒に見て参りました。気候ネットワークのみなさんが、国内外のNGOを協力して、情報を収集し、情勢を分析し、そしてそれをふまえて日本や他国の政府への働きかけをすることにより、こうした国際交渉の大きな動きを作りだす一端を担ってこられたのだと思います。

国際交渉は、2015年合意に向けてこれからあらためて本格化していくと思います。低炭素社会に向けて、震災後の日本の温暖化対策をいかに着実に進めていくかも日本の課題です。時代の新しい要請の中での気候ネットワークの一層のご活躍を期待しています。

 

三浦 雄一郎さん(プロスキーヤー / 冒険家 /NPO 法人グローバル・スポーツ・アライアンス理事長)

miura 気候ネットワーク設立 15 周年おめでとうございます。2008 年に、気候ネットワークの皆さんを始め全国の市民が取り組んだ「MAKE the RULE キャンペーン」のよびかけ人を務めました。地球と自然、いきものの未来のために、地球温暖化を止めるための社会のルールはやはり必要であるとの思いを強くしています。
さて、70 歳、75 歳に続き、80 歳で 3 度目の世界最高峰・エベレスト登頂に、この春チャレンジします。地球温暖化の影響で山の氷も溶けています。自然環境が確実に変化しているのです。大自然に対する畏敬の念をもち、諦めずに、限界に挑戦したいと思います。気候ネットワークの皆さんも、引き続き、地球を守るため、希望を持って、ますます活動を発展させてほしいと思います。

 

長谷川 公一さん(公益財団法人・みやぎ環境とくらし・ネットワーク(MELON)理事長)

hasegawa 気候ネットワーク発足 15 周年おめでとうございます。温暖化防止京都会議(COP3)の1997 年から今日まで、この 15 年の栄光と苦難の日々に、心から拍手をお贈りいたします。この 15 年間、COP の進捗状況、日本の温暖化対策の問題点などについて、いつも切れ味よく解説いただいております。
しかしながらこの 15 年で温暖化対策がどう前進したのかというと、国内外を見渡しても忸怩たるものがあります。地球温暖化対策税が 2012 年度から導入されたことと、福島第一原発事故を契機に、再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度がスタートしたこと以外、近年残念ながらめぼしい進展がありません。温暖化問題については、気候ネットワークとそこに集う仲間達こそ、「日本の良心」と言えるでしょう。温暖化問題に試合終了のゴールはありません。ゴールのないマラソンをともに走り続けましょう。