2009年8月3日

政府の「再生可能エネルギー20%目標」は
ヒートポンプと、発電ロスの二重カウントで水増し
~一次エネルギー比で20%目標に修正を!~

?気候ネットワーク代表 浅岡 美恵

<要旨>

麻生首相は4月9日の講演「新たな成長に向けて」で、「2020年には、エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を今より倍増して、世界最高水準の20%まで引き上げたい」と新目標を打ち出し、4月17日に内閣府・経済産業省がとりまとめた「未来開発戦略」の中でその方針を打ち出し、「経済財政改革の基本方針2009」(6月23日閣議決定)の中で「2020年頃に再生可能エネルギーの対最終エネルギー消費比率を世界最高水準の20%程度へ」と位置付けた。
 しかし、経済産業省の「総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会中間報告」(7月23日)で「20%という高い目標を達成するためには、ヒートポンプ等の導入を拡大し、それが利用する大気中等の熱を再生可能エネルギーに計上する必要がある」と数字合わせの意図が率直に表明され、再生可能エネルギーを大きく増やすのではなく、独自の計算方法で数字を大きくみせようとしている。
 そのからくりは以下のとおりである。

  1. 再生可能エネルギー電力は、おきかえられる火力発電の燃料分として計算された。この結果、実際の再生可能エネルギー導入量の2.5倍としてカウントされた。
  2. 「ヒートポンプ(エアコン・給湯器など)」を再生可能エネルギーに加え、この増加分が再生可能エネルギー全体の増加分の5割以上を占めている。つまり実態はエアコン・エコキュート増加計画となっている。
  3. 分母を最終エネルギー消費(ということは電力ロスは含まない)とすることで、一次エネルギーに対する再生可能エネルギーの割合よりも3割増とさせた上で、分子の再生可能エネルギー量には電力ロス分を入れている。

これらの計算は、数字を大きく見せかけるトリックというほかない。

この結果、2005年の再生可能エネルギー割合の実績は3%程度と整理されるべきところ、10.5%にまで水増しされた。2020年の見通しにおいても、せいぜい5%程度となるはずが、約20%にふくれあがっている。

このように数字の操作によって再生可能エネルギーの導入割合を大きくみせても、実際には再生可能エネルギーも増えず、CO2も減るものでもない。政府は、ヒートポンプや燃料電池で数字をかさ上げせずに、一次エネルギー供給比で「真水」の20%導入目標に切り替え、その担保となる政策(太陽光以外を含む固定価格買取制度による、「余剰電力」でなく全量買取など)を導入すべきである。

以上

詳細については、発表資料PDFをご参照下さい。

発表資料

 

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総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会

 

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