気候ネットワークでは、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則 の一部を改正する省令案等」に対する意見募集に対して、以下の意見を提出しました。

 

意見内容

【NO.1】P1 5行目 再エネの接続申込みに対する電力会社の回答保留が生じている状況をふまえた、新エネルギー小委員会及び系統ワーキンググループでの検討について(本政省令改正の前提)

★接続可能量の計算とそれによる出力抑制、無制限の停止契約の制度化をやめるべき

 新エネ小委や系統WGで示された「再生可能エネルギーの接続可能量」の算定において、原発については「震災前過去30年間の設備利用率平均×設備容量」をベースロード電源とし、原発を全て再稼働することを前提にしており、福島第一原子力発電所の事故の反省をふまえて原発の安全性を見直すという位置づけすら何もない。本来は、福島原発事故の教訓をふまえ原発や火力から脱却して、再エネを最大限増やすという前提に立つべきであるが、原発を最大限動かすことを固定化した上で、再エネの「接続可能量」を見積もっている時点で、原発依存度を可能な限り低減するという基本方針、再エネの最大限導入という方針とは矛盾するものである。

★電力の系統拡大と地域間広域運用システムを最大限活用するために必要な抜本的改革についての検討を行なうべき

 電力会社間の連系線を利用した取引の活用については「現時点で約定できる保証がないため接続可能量に算定することは困難」として、電力会社ごとに需給バランスをとるという従来の電力構造の前提に立っていて、2015年度から導入が決まっている「広域運用」が全く考慮されていない。

★再生可能エネルギーの野心的な目標を定め、再生可能エネルギーの拡大に取り組むべき

 今後の日本のエネルギー政策にとって、再生可能エネルギーの導入を増やすことが不可欠だが、上記のような前提にたっているために、再エネの接続拒否の事案を増やし、不必要な再エネ出力抑制を助長しかねず、結果的に再エネの導入拡大の可能性を閉ざす方向に向かうことになりかねない。また、個別の制度案についても、再エネ事業者に無理難題を押しつけるものとなっており、これも再エネ導入を阻む要素になりかねない。

★根拠のない接続凍結措置は全面禁止し、優先接続ルールを確立・制度化すべき

・太陽光だけでなく、現在一部電力が独自理由で凍結している風力について接続させる必要がある。
・接続を断る場合にはこの電源を接続した場合にどういう問題が生じるのか具体的に証明するべきである。挙証責任は電力会社側にある。
・公正に議論できるようにするために、15分ごとの過去10年の電源別発受電データを公開すること。
・瑕疵があれば遺失利益(電力会社が断ったために発電できなかった分の遺失売電収入全額など)を賠償すべきである。

・再生可能エネルギー電力の優先接続ルールを明確に制度化する。

★優先給電ルールを確立・制度化すべき

・送電網に接続されている電源の中で再生可能エネルギーを最優先にする優先給電ルールを明確に制度化する必要がある。
・原子力、火力を先に接続すべきでない。
・さらに原子力は、規制委員会も認めていないものの「カラ枠」を確保して最優先にすることは受け入れがたい。
・火力の「最低出力」はゼロとすること。たちあがりの遅い石炭を「ゼロ」で申告した電力もあるが、石油火力すらしかも需要の少ない時期にすら完全には止められないとする電力会社もある。後者のようなものを自己申告でそのまま認めることは受け入れられない。
・送電網を再エネ優先で使うべきであり、現行ルールはこの早急に改正すべきである。
・揚水の施設を再エネ優先で使うべきである。
・費用負担は、電線や出力抑制システムの所有権者が負担することとする。

★発送電分離を早期に実施する

・火力、原子力をもつ発電会社が送電網を所有すると、再エネ普及の阻害になることが明らかになった。発送電分離の電気事業法改正施行を2018-2020年目処より前倒しで実施すべき。
・発電会社の子会社の送電会社は中立でないので法的分離でなく所有権分離にすべき。

 

【NO.2】P1「1.太陽光発電・風力発電に係る接続ルール見直し(施行規則第6条第1項第3号イ関係)」について

★接続ルールについては透明性を確保すべき

 現時点で、一基も動いていない原発を、事故前の過去30年の稼動実績から稼働率を求めて算出することは、現実的ではない。こうした前提にたち、「接続可能量」を示すことには意味がない。接続拒否や接続回答拒否が行なわれる場合の電力会社の情報を開示すべきである。
 また、出力制御を行なうことがある場合の全面的な情報開示も必要である。とりわけ、風力や太陽光については、「30日ルール」を時間制に移行することだけが示されたが、情報開示について全く触れられていない。さらに、出力抑制の対象規模を500kW以上から未満への変更によって、住宅用太陽光発電までを対象となってしまう。優先順位があるとはいえ、小規模な設備ほど、運用面や費用面での負担は大きくなってしまうため、普及の妨げになってしまいかねない。
 今回の回答保留についても、電力会社の一方的な不透明な意志決定プロセスや公開された十分な理由説明がなかったために、再生可能エネルギー事業者をはじめとする国民全体への不信感を増幅することとなった。制度的に情報開示を担保することが不可欠である。

 

【NO.3】P3「3.遠隔出力制御システムの導入義務づけ」について

?★費用負担は系統運用システム費用であり再エネ事業者に求めるべきではない

 遠隔出力制御システムの導入を義務づけることが新設で提案されており、遠隔操作は今後必要であるとしても、それは系統連系システム改革に付随して必要なコストであり、買取制度の中に組み込むべきものである。事業者側の追加的な負担にすることによって、再生可能エネルギーの導入にブレーキをかけることに繋がりかねない。

 

【NO.4】P3「4.接続枠の空押さえの防止」について

★「空押さえの防止」に厳しすぎる条件をつけるべきではない

? 空押さえを防止するために一定の条件を設けることは必要だが、その条件として「工事負担金の1ヶ月以内支払い」や「運転開始予定日までに運転開始に至らない場合」には、電力会社が当該契約を解除できることとし、同意しないときは電力会社が接続拒否を行なうことができる、というのは厳しすぎる。
 こうした条件は、市民共同発電事業者など本来推進すべき事業者の介入を阻み、再生可能エネルギーの拡大を阻むことになりかねない。

 

【NO.5】P5「2.平成27年4月1日以降における調達価格の適用等」について

★調達価格の決定の基準日は「接続契約の締結日」ではなく「設備認定時」とすべき

 調達価格の基準となる日を、電力会社の接続申込日としていたところを契約締結日としているが、契約が長期にわたる可能性もあり事業採算性を危うくする。
 そもそも、今回の回答保留にも見られるように、契約に関するイニシアティブも電力会社が持っており、契約までの日数に何も担保がなく、電力会社側が意図的に契約を遅らせる可能性も排除できず、再エネ事業者にとってのリスクが大きい。

 

【NO.6】P6「Ⅴ.施行期日について」

?★意見募集の時間と反映させる時間を十分にとるべき

 今回のパブコメは、12月19日に公示され、年末年始にまたいだ上に、締切りが1月9日までと短期間に行っているが、極めて重要な内容であるにも関わらず、十分な周知がなされていないのは問題である。公布日施行も1月中旬とされ、パブコメの意見を反映するための時間もとっておらず、形式的なものでしかないのではないか。

 

気候ネットワークから提出した意見

・「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則の一部を改正する政省令案等」に対する気候ネットワークの意見(PDF)

 

政府の意見募集サイト及び資料

・募集サイト
・意見募集の概要(PDF)