【緊急声明】

環境大臣に対する経団連の要請に抗議する
~「火力発電所のCO2排出を環境影響評価法の対象から外す」など論外 ~

2015年10月22日
認定特定非営利活動法人気候ネットワーク
浅岡 美惠

 本日22日の毎日新聞で、「経団連の木村康副会長(JXホールディングス会長)が、丸川珠代環境相と面会し、火力発電所の環境影響評価法の対象から二酸化炭素を外すよう求める経団連の提言書を手渡した」ことが報じられました。その理由は、「アセス手続きが石炭火力発電所建設の足かせとなっているため」とされています。この主張は、危険な気候変動を防ぐために脱石炭を進める世界の流れに逆行する、極めて非常識な論理であり、これに強く抗議するとともに、環境大臣にはこの主張を即座に却下することを求めます。

 そもそも環境影響評価法の目的は、「土地の形状の変更、工作物の新設等の事業を行う事業者がその事業の実施に当たりあらかじめ環境影響評価を行うことが環境の保全上極めて重要であることにかんがみ、環境影響評価について国等の責務を明らかにするとともに、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について環境影響評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた環境影響評価の結果をその事業に係る環境の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る環境の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に資すること」とされています(第一条)。審議会などにおいて、一部の産業界の立場を代弁し、「環境影響評価法は近隣の環境汚染に限定されているもの」などと主張する委員もいますが、その根拠はありません。

 人類が直面する最も大規模で危機的な気候変動という問題に立ち向かい、現在及び将来世代にわたって健康で文化的な生活を確保するためには、気候変動の原因である温室効果ガスの環境影響評価は不可欠です。とりわけ、CO2排出量が極めて大きく、日本で最大の排出源でもある石炭火力発電所は、最も厳しく規制しなければならないものです。

 折しも、ドイツのボンでは現在、温暖化対策の新しい国際枠組みに合意するための国連気候変動交渉が行われています。その場では、CO2の大量排出につながる事業への投資をとりやめることが提案されています。先進国だけでなく、中国などの新興国も脱石炭を進めようとしている中、石炭利用を国内外で推進している日本に対する批判は高まる一方です。経団連の主張に沿ってこのまま石炭利用を推進すれば、パリ合意を成功させようという国際社会の努力に冷水を浴びせることになります。火力発電所のCO2排出のアセスメントは強化することはあっても緩めることはありえません。むしろ排出規制を導入し、将来的な大幅削減につなげるべきです。

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【緊急声明】環境大臣に対する経団連の要請に抗議する~「火力発電所のCO2排出を環境影響評価法の対象からなど論外など論外 ~

 

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