2009年以降増え続けた温室効果ガス排出量、減少へ転じる

~「原発を使わず省エネ・再エネで排出削減」という新たなトレンドの加速化が必要~

2015年11月26日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵

本日、日本政府は2014年度の温室効果ガス排出量の速報値を発表した。発表によれば、日本の2014年度の温室効果ガスの総排出量は、13億6500万トンCO2であり、前年度比3%減(1990年比7.5%増)となった。2009年度以降、毎年増加し続けていた日本の排出総量が、原子力発電が停止するなか、減少に転じたことは歓迎すべきことである。また、排出減の要因が、省エネルギー及び再生可能エネルギー普及によるものであることも評価できる。しかし、危険な気候変動を防ぐにはさらなる大幅削減が求められる。政府が閣議決定している「2050年80%削減」を達成するため、排出規制や炭素への価格づけ等の実効性ある政策措置の導入によって、脱原発とCO2削減の両立という新たなトレンドを維持し、さらに加速化させていく必要がある。

今回発表されたデータからは、次のことがいえる。

1.省エネルギーと再生可能エネルギー普及によって原発ゼロと温室効果ガス排出削減が両立した

日本において原発ゼロが初めて実現した2014年度の日本の温室効果ガス排出量は、関西電力大飯原子力発電所が一時期稼働していた2013年度より、3%少なかった。また、過去日本の排出量が最も多かったのは2007年度の14億1200万トンであるが、同年の原発利用率は60.7%だった。原発が温暖化対策に寄与しないこと、省エネと再エネ普及によって脱原発と温室効果ガス排出削減が両立したことが示された。

2.東日本大震災以降、国内の発電電力量は減少し続けており、節電の傾向は定着した

政府は、前年比3%排出減の要因として、電力消費量の減少をあげている。2011年の東日本大震災以降、国レベルで節電が進んでおり、2014年度の国内の発電電力量は、2000年以降で最も少ない9101億kWhとなった。今後もさらに省エネを進めるため、炭素の価格づけ等の実効性ある政策措置が必要不可欠である。また、政府の長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)において、2030年度時点の電力需要は9808億kWhと見積もられているが、この想定は過大であることを改めて裏付けるものといえる。

3.脱石炭を進めなければ再び排出量が増加に転じる恐れがある

政府は前年比3%排出減の要因として電力の排出係数の改善をあげているが、追加対策をとらなければ、今後排出係数が大幅に悪化する恐れがある。気候ネットワークの調査によれば、現在国内において48基(設備容量合計2350.8万kW)の石炭火力発電所新設計画がある。これらがすべて稼働すれば、2014年度総排出量の約10%に相当する推計1億4097万トンものCO2を排出し、排出係数を大幅に悪化させることになる。CO2の大排出源である石炭火力発電所の新設は許されない。電力業界の自主的枠組みに任せるのではなく、排出規制や炭素への価格づけといった実効性ある対策の導入が急務である。

 

ダウンロード版プレスリリース

【プレスリリース】2009年以降増え続けた温室効果ガス排出量、減少へ転じる~「原発を使わず省エネ・再エネで排出削減」という新たなトレンドの加速化が必要~(2015/11/26)