気候ネットワークでは、2016年3月10日締め切りの「総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会 火力発電に係る判断基準ワーキンググループ 取りまとめ(案)」に対する意見募集に対して、以下の意見を提出しました。

 

意見の内容

経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部省エネルギー対策課
パブリックコメント担当 御中

「総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会
火力発電に係る判断基準ワーキンググループ 取りまとめ(案)」に対する意見

?意見

・該当箇所 全般・火力発電所の規制について

・意見内容 「省エネ法改正」ではなく、エネルギーの効率化だけに限定せず、火力発電所そのものの規制的措置を別法などで規制すべきである。

・理由   気候変動問題が深刻化する中、米国?では2014年夏にクリーンパワープランを発表し、火力発電所の新規建設を実質的に規制する案が示された。また、イギリスでも2025年までに石炭火力発電所を撤退させる方針がとられている。昨年末に、工業化前からの地球平均気温上昇「1.5℃未満」の長期目標や今世紀後半には実質排出ゼロを盛り込んだ「パリ協定」が合意されたことを踏まえ、温室効果ガスの削減目標を見直すとともに、エネルギー政策の抜本的な見直しが必要である。
 温室効果ガス排出量の約4割を火力発電所が占めている日本でも、新たな規制的措置の導入も含め、抜本的な対策強化が求められる。しかし、今回の省エネ法改正案に火力発電所を規制する効果はなく、現状の火力発電所の新規建設計画もほぼすべて追認するような内容になっている。また、温室効果ガス排出総量へのキャップもないため、このまま新規建設が実行されてしまうと、たとえエネルギー効率が一定改善されるとしても、稼働開始後の排出量が大きく増加することが懸念される。このように、省エネ法改正やエネルギー効率化だけでは求められる大幅な排出削減は担保できないため、火力発電所そのものへの規制的措置を別法にて規定する必要がある。

 

?意見

・該当箇所 P8 (2)新設基準の見直しについて

・意見内容 石炭やLNGなど燃料種ごとに基準を設定するのではなく、火力発電所全体でCO2排出量の基準を設定すべきである。

・理由   石炭火力発電所のCO2排出量はLNGの2倍にあたり、国内最高水準と言われる横浜磯子火力発電所(USC)でも約810g-CO2/kWh、排出総量は年間500万トンを超えるなど、非常に大きい。このような石炭火力発電所は新設されるべきではないが、仮に新規建設されてしまった場合、約40年にわたってCO2排出を固定化することになるような火力発電所は今後早期に撤退させる方向が必要である。

 今回の判断基準案では、石炭火力発電について「全体としてUSC相当の水準を目指す」とされているが、USCでも排出量が膨大であることは変わらず、気候に与える影響が大きいため、非常に問題である。本案は、47にも及ぶ現状の石炭火力発電所の建設計画を事実上容認する水準であり、全てが建設されるとエネルギーミックスで示された石炭火力発電26%をも上回る可能性がある。また「小規模火力も一律にUSC相当」として、設計効率として42.0%以上(発電端、HHV)としているが、新設計画にはUSCの基準に満たないものや設計効率42%を下回るものも含まれている。それにも関わらず、コジェネレーションの組み合わせによるものが総合効率として認められるため、全計画が事実上容認される恐れがある。

 

?意見

・該当箇所 P11~12(3)発電効率の算出方法 ①副生物の扱い

・意見内容 発電専用設備に投入する副生物のエネルギー量を差し引くべきではない。

・理由   副生物のエネルギー量を差し引けば、その分発電効率が上がることになり、本告示改正をしても温暖化対策の観点からは「抜け穴」となるため。

 

?意見

・該当箇所 P11~12(3)発電効率の算出方法 ①副生物の扱い

・意見内容 副生物を扱うならば、種類や投入量をはじめ当該発電設備の厳格な報告を求め、すべての情報を開示することとする。

・理由   後からのレビューが可能となるような範囲で情報が開示されなければそもそもの情報開示の趣旨が損なわれ意味のないものになってしまう可能性があるため。

 

意見

・該当箇所 P12 (3)発電効率の算出方法 ②コジェネレーションの扱い

・意見内容 発電専用設備から得られる熱エネルギー量のうち熱として活用されるものを効率の算定で加算するべきではない。

・理由   熱エネルギーとしての利用の詳細な定義がないままに効率の算定上加算することで効率が高くなるが、何らかの熱利用をすれば見かけ上効率を上げることができてしまい、本告示改正をしても温暖化対策の観点からは「抜け穴」となるため。そもそも発電設備での熱需要がそれほどあるのかも不明で、電力エネルギーだけでシンプルに算定するべきである。

 

?意見

・該当箇所 P13 ?バイオマス混焼の扱いで示された(ロ)定期報告での配慮

・意見内容 定期報告に関する配慮事項として、新設後毎年度、バイオマス混焼の状況(バイオマス燃料の投入比率、バイオマス燃料の原料原産国、バイオマス燃料のエネルギー量をエネルギー使用量から削除した時の月別実績効率)について定期報告を求めることとしているが、これらの情報は発電設備ごとに求め、開示されるべきである。また、バイオマスにかぎらず、あらゆる燃料において同様の報告を求めるべきである。

・理由   バイオマス燃料についての詳細を定期報告に盛り込むのであれば、その詳細は、すべて開示することで客観的評価がなされるべきである。また、同様に石炭やLNGについても、発電設備ごとにその種類(瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、泥炭など)や原産国、混合の割合などを報告する義務を課し、開示させる必要がある。また、それがなければ、事業者による報告の内容や環境負荷や事業者の対策について客観的に検証できない。

 

?意見

・該当箇所 P24 電力供給業におけるベンチマーク制度での?共同取組評価について

・意見内容 ベンチマーク指標を達成するために共同実施が可能としているが、報告内容は個別事業所ごとに発電設備単位での詳細がわかるような報告とすべき。

・理由   P24の共同取組の評価では、ベンチマーク指標達成のために、事業者が共同で取組を実施することが可能とされている。しかし、本来共同実施は、報告自体は個別に報告することとし、内容については、発電設備ごとに、燃料種や投入量などの詳細が報告されるべきである。もし共同での取組がすべてまとめられ、事業所単位での報告がなくなれば、対策や責任の所在が不透明になり、第三者による客観的検証もしにくくなる。結果として、事業者への信頼もなくなり、社会的責任(CSR)を果たすことも困難になるだろう。

 

意見本文

「総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会火力発電に係る判断基準ワーキンググループ 取りまとめ(案)」に対する意見

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関連リンク

「総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会 火力発電に係る判断基準ワーキンググループ 取りまとめ(案)」に対する意見募集

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