日本政府は、2030年までの日本の温暖化対策の計画案に対する国民の意見を募集中です。原発も化石燃料もない未来に向けて、たくさんの意見を出しましょう!

 

 

新しい地球温暖化対策計画(案)へのパブリックコメント募集中

温暖化防止の歴史的な国際条約「パリ協定」が誕生。
「化石燃料の時代の終わり」へ向かう世界

昨年、温暖化防止の新しい国際条約「パリ協定」が採択されました。

パリ協定は、地球温暖化を1.5~2℃未満に抑えるために、早ければ2050年頃には世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをめざすものです。これによって、化石燃料の時代が終わりつつあることが世界の常識になりました。

日本ではこの20年間、省エネや再生可能エネルギー普及のための効果的な政策を導入してこなかったため、温室効果ガス排出削減は進んできませんでした。今後、パリ協定がめざす「実質ゼロ」に向けて、先進国であり世界第5位の大排出国である日本が貢献することが不可欠です。

日本政府、2030年までの新しい温暖化対策計画案を発表し、意見を募集中

そんな中、政府は、今から2030年までの国の温暖化対策の目標や取組についてまとめた計画「地球温暖化対策計画」の案を発表しました。この新しい温暖化対策の案について、国民の意見を募集中です。募集期間は4月13日まで

参考:環境省ウェブサイト「地球温暖化対策計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)

パリ協定の目的を実現するためには、政府の計画案にある温室効果ガス排出削減目標は不十分です。また、危険な原子力や汚い石炭を減らし、クリーンな再生可能エネルギーや省エネ対策をもっと強化するべきです。省エネに効果的な、キャップ&トレード型排出量取引制度の導入や炭素税といった政策をしっかりとることも必要です(ちなみに、東京都は国より早く排出量取引を導入し、対象事業所のCO2を25%減らすことに成功しています)。

 

パリ協定を実現する温暖化対策に向けて意見を出そう!

今回の意見募集に対して、産業界の一部は、「発電時にCO2を排出しない」として原発再稼働や新増設をすべきと主張する一方、最もCO2排出の多い石炭発電を活用するべきと言っています。また、2050年80%削減という長期目標の設定や、排出量取引などの政策に強く反対しています。

参考:関西経済連合会の意見

気候ネットワークは、安全で安心な地球社会を将来世代につなぐためには、原発も化石燃料もなくし、省エネを進め、再エネに切り替えていくことが必要だと確信しています。パリ協定に合意した世界では、再生可能エネルギー100%に向けた競走がすでに始まっています。日本が世界の流れに逆行するのではなく、前に進むため、あなたの意見が必要です!

 

地球温暖化対策計画(案)で最も大切な6つのポイント

気候ネットワークは、今回の意見募集に対して、約30個の意見を出そうと考えています(意見の全文PDFはこちら)。その中でも特に重要なポイントを6つ紹介したいと思います。みなさんが意見を考えるときの参考になれば嬉しいです。

 

  1. 長期的な排出削減目標「1990年比で2050年までに”少なくとも”80%削減」を掲げるべき
  2. 中期目標は、1990年比で2030年までに少なくとも40~50%削減という水準に変更した上で国連に再提出すべき
  3. 原発・石炭重視ではなく、省エネ・再エネ重視のエネルギーミックスを基礎とした温暖化対策にすべき
  4. 原発を温暖化対策に位置づけることはやめるべき
  5. 排出削減を促すため、地球温暖化対策税の抜本強化を進める方向で検討すべき
  6. キャップ・アンド・トレード型排出量取引制度の早期導入に向けて検討を速やかに進めるべき

 

1.長期的な排出削減目標「1990年比で2050年までに”少なくとも”80%削減」を掲げるべき。

意見の該当箇所:第1章 第1節 2.長期的な目標を見据えた戦略的取組

先進国であり経済力や技術力のある日本は、パリ協定の「実質ゼロ」という目標をいち早く自国において達成することが求められます。さらに、日本では、原発を使わず、実用化済みの技術だけで2050年80%削減は可能という研究結果もあります。政府案では「2050年までに80%削減」となっていますが、技術革新の可能性を考慮し、また、政府案にあるように、日本が温暖化対策の分野で国際的にリーダーシップを発揮するため、「1990年比で2050年までに”少なくとも”80%削減」とすべきです。

 

2.中期目標は、1990年比で2030年までに少なくとも40~50%削減という水準に変更した上で国連に再提出すべき。

意見の該当箇所:第1章 第1節 1.中期目標(2030年度削減目標)の達成に向けた取組及び 第1章 第2節 2.「日本の約束草案」に掲げられた対策の着実な実行 及び 第2章 第1節 我が国の温室効果ガス削減目標

世界の研究者は、政府案の「2013年比26%削減」はパリ協定がめざす「1.5~2℃未満」の達成には不十分であると分析しています。また、2013年度比では「26%削減」ですが、気候変動枠組条約や京都議定書の基準年である1990年と比べると18%程度の削減にすぎず、他国の目標と比べて高い目標とは言えません。さらに、この目標は、CO2排出量の多い石炭を使い続けることを前提とし、省エネや再エネの可能性を過小評価した上で出されたものです。世界の温暖化対策をリードするためには、日本の目標を引き上げ、COP21合意に沿って国連に再提出する必要があります。

 

3.原発・石炭重視ではなく、省エネ・再エネ重視のエネルギーミックスを基礎とした温暖化対策にすべき。

意見の該当箇所:第1章 第2節 2.「日本の約束案」に掲げられた対策の着実な実行 及び 第3章 第2節 1.(1)①エネルギー起源二酸化炭素

日本の温室効果ガス排出量の9割はエネルギー由来のCO2であるため、日本の温暖化対策とエネルギー政策は表裏一体です。ところが、2030年に向けたエネルギーミックス(再エネ22~24%、原子力22~20%、LNG27%、石炭26%、石油3%で総発電電力量10,650億kWh)では、原子力や石炭のような危険で汚染が著しいエネルギーを重視する一方、省エネや再エネの可能性が低く見積もられています。見直すべきです。

 

4.原発を温暖化対策に位置づけることはやめるべき。

第3章 第2節 1.(1)① E. (c)電力分野の二酸化炭素排出原単位の低減 (安全性が確認された原子力発電の活用)

環境省の最新のデータによれば、原発の稼働がなかった2014年度の日本の温室効果ガス総排出量は前年比減少を達成しています。このことは、原発がなくても、省エネ・再エネ等によって経済成長と排出削減を両立することが可能であるということを示しています。原発は計画・建設から廃炉・核廃棄物処理までのライフサイクル全体で見れば一定のCO2を排出します。また、地震、事故や電力会社の不祥事などによって原発が停止した時には、主にCO2排出の多い石炭火力発電で代替されています。政府が原発を推進してきた数十年もの間、排出削減は進んでいません。省エネ・再エネ等の対策により、原発がなくても2050年80%削減は可能という研究もあります。脱原発とCO2削減を両立させるビジョンをもつべきです。

 

5.排出削減を促すため、地球温暖化対策税の抜本強化を進める方向で検討すべき。

第3章 第5節 2.分野横断的な施策<その他の関連する分野横断的な施策>(f) 税制のグリーン化に向けた対応及び地球温暖化対策税の有効活用

政府案では、税収の活用については記述されていますが、税率引き上げや免除の是非については言及がありません。しかし、地球温暖化対策税の本質は、化石燃料への課税によってCO2排出を減らす経済的な動機付けをすることです。現在の税率は、CO2排出量1トンあたり289円と、化石燃料の需要を抑制するインセンティブを与えるほど十分な税率となっていません。例えば、CO2排出量1トンあたり3000円程度の水準にまで引き上げる必要があります(消費税はあらゆる需要を一律に抑制しますが、温暖化対策税は環境に悪い需要を抑え、逆に環境に良い需要を創出します)。また、温暖化対策税が免除されている鉄鋼産業の石炭・コークス等についても、省エネ対策を促すため、免除をなくす方向での検討が必要です。

 

6.キャップ・アンド・トレード型排出量取引制度の早期導入に向けて検討を速やかに進めるべき。

第3章 第5節 2.分野横断的な施策<その他の関連する分野横断的な施策>(h)国内排出量取引制度

キャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度は、国内ではすでに東京都が導入しており、対象事業所において基準年比でCO2を25%削減する成果をあげています。

また、排出量取引は経済・雇用にマイナスだという声もありますが、むしろメリットが大きいと考えられます。日本で排出量取引制度を導入する際に対象にすべき、CO2排出の多い6業種・500事業所だけで日本の温室効果ガス総排出量の6割を排出しています。ところが、これらの業種の雇用数は約11万人であり、日本の全雇用数に占める割合は0.2%です。一方、日本では、太陽光発電関連だけで2013年に21万人の雇用がもたらされたと推計されています(REN21『世界再生可能エネルギー白書2015年版』)。一部の大口排出産業のみを考慮して省エネや再エネ拡大を後押しする排出量取引制度の導入をためらうことは、日本経済全体にとっては、産業・雇用の発展の芽を摘むことにつながります。

 

*気候ネットワークが提出する予定の意見の全文は、こちらから閲覧いただけます。

 

意見の提出方法

意見の提出方法は4つあります。それぞれの方法の詳細は環境省のウェブページにてご確認ください。

政府の意見募集のウェブページにて記入・送信する

一番簡単なのは政府のウェブサイトにて記入・送信することでしょう。5分もあれば、意見の入力欄の文字数の上限が2000文字ですので、「たくさん意見がある」という方は複数回に分けて提出するか、他の方法を選ぶ方がいいかもしれません。

参考:「地球温暖化対策計画(案)」に対する意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)

郵送する

環境省のウェブサイトから様式(A4用紙)をダウンロードし、意見を書いて印刷し、次の住所に郵送します。

〒116-8691 荒川郵便局 私書箱第16号 地球温暖化対策計画(案)に対する意見募集担当

FAXする

環境省のウェブサイトから様式(A4用紙)をダウンロードし、意見を書いて印刷し、次の番号にFAXします。

FAX番号:03-3253-5671 宛先:地球温暖化対策計画(案)に対する意見募集担当

メールする

電子メールアドレス: teitanso-pgwc#env.go.jp(メールを送信するときは、左の#を@に変えて送信してください。)

記載事項

メールの件名:地球温暖化対策計画(案)に対する意見

[1] 氏名(法人・団体の場合は、法人・団体名、意見提出者の氏名)

[2] 連絡先(郵便番号、住所、連絡先電話番号、電子メールアドレス)

[3] 意見の該当箇所

   どの部分についての御意見か分かるよう、該当箇所を明記してください。(例)○ページ○行目、第○章第○節○.(○)など

[4] 御意見の概要

   御意見が100字を超える場合は、御意見の概要(100字以内)も併せて御提出ください。

[5] 御意見及び理由

   地球温暖化対策計画(案)に対する御意見及びその理由を記入してください。

 

意見を書くための参考ページ

温暖化対策をめぐっては様々な議論があります。今回の政府案について、様々な人たちが様々な意見をもっていますので、紹介します(なお、これらはあくまでご参考としてご紹介する情報であり、気候ネットワークの立場とは関係ありません)。

温暖化対策計画に関する様々なメディアの意見

東京新聞 社説「温暖化対策計画 未来を思い描けない」(2016年3月5日)

日経新聞 社説「温暖化対策の実効性高める議論を重ねよ」(2016年3月7日)

毎日新聞 社説「温暖化対策計画 真の省エネ大国目指せ」(2016年3月8日)

京都新聞 社説「温暖化対策計画  脱炭素社会の道見えぬ」(2016年3月8日)

高知新聞 社説「【温暖化対策計画】長期的な視点に欠ける」(2016年3月8日)

徳島新聞 社説「温暖化対策計画? 再生エネの後押し強力に」(2016年3月15日)

南日本新聞 社説「[地球温暖化対策] 「未来」が見えてこない」(2016年3月23日)

神戸新聞 社説「温暖化対策/長期戦略の具体性を欠く」(2016年3月22日)

河北新報 社説「温暖化対策計画/原発の活用 慎重に判断を」(2016年3月28日)

*記事の発表日順。リンク切れの場合はご容赦ください。

 

政府の審議会における議論

地球温暖化対策計画について検討を行ってきた政府の審議会の記録です。どのような立場の人がどのような意見を持っているのかがわかります。

平成28年3月4日 地球環境部会(第130回)・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会合同会合(第45回)

議事次第・資料 議事録

平成27年12月25日 地球環境部会(第129回)

議事次第・配付資料 議事録

平成27年12月22日 地球環境部会(第128回)・産業構造審議会環境部会地球環境小委員会合同会合(第44回)

議事次第・資料 議事録